エムエスツデー 2011年10月号

ごあいさつ

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

 「東日本大震災」から、すでに半年が経過しました。
 当時の、津波被害の地域に雪が降っていた様子が忘れられません。そして、瓦礫の撤去が一向に進まないことに加え、この夏は猛暑で、被害に遭われた方々のご苦労の程は察するに余りあります。それに加えて、福島原発の放射線被害が拡大し、全国の農畜産業者などにまで問題が波及しており、今後の推移が心配されます。
 日本全国の電力会社は、東京電力を始めとして10社あり、それぞれが、所在する地域の電力の供給を担っているわけですが、原子力発電そのものに対する世論は厳しく、供給電力量の減少に対する懸念から全国的に節電志向が高まっています。
 原子力の補間用エネルギー源として、太陽光発電や風力発電のほか、地熱発電までもが検討対象になっていますが、いずれも決め手には程遠いものがあります。日本としては、今こそ産業力に物を言わせて、世界一安全で、どのような事態が発生しても放射線を漏出させない原子炉を開発してもらいたいものです。

時代祭 = 京都市

 エム・システム技研は、来年創業40周年を迎えます。思い起こせば、創業の頃は高度成長が勢いづいて、全国各地に巨大コンビナートが建設され、工業計器業界は異常な活気に沸いていました。そして全電子式の計装システムが開発され、工業計器の有力企業が覇を競っていました。
 それから40年、「第二次石油ショック」「バブル経済の崩壊」、そして記憶に新しい「リーマンショック」で、世の中はすっかり変わりました。
 重化学工業は海外へ移転し、日本が最も得意としていた家電製品も、台湾、韓国、中国へと生産基地が移りました。その結果、日本国内の製造業に栄枯盛衰をもたらしました。その全ての期間を通して、エム・システム技研が発展を続けてこられた要因は一体何だったのかを振り返り、今後も着実に前進してゆくための道しるべにしようと、ドラッカーの提唱する「優良企業の原則」に照らし合わせてみました。「企業には自らの目的、使命がなければならない。」ここでいう目的とは、「存在意義を確立すること」ということだと読み取れます。良い商品やサービスを、適正価格で提供しているか。そしてその商品やサービスを作り続けているか。また、それを守り抜く姿勢はあるか、が大切なのだと主張しています。まさにエム・システム技研のことを言っているようで、私たちのやっていることそのものではないかと思いました。
 エム・システム技研の立ち位置は、広い意味でのオートメーションシステムや自動化された装置を設計するに当たり、必要となる物理的諸量の計測、制御、伝送、通信、管理に係わる各種の機能を、具体的な機能部品の形に製品化して、単体供給をする電子機器メーカーであると考えてきました。信号変換器をはじめ、計測信号をオープンネットワークに接続するリモートI/O表示計器記録計調節計テレメータデータロガー電子機器用避雷器電動アクチュエータまで取り揃えて、装置メーカーやシステムソリューションを事業とするユーザー各位にハードウェアを供給する専門メーカーの道を歩んできました。
 もともと私は、機器の単体メーカーと、システムを構築するシステムメーカーとは、それぞれ専門化すべきだと考えてきました。システムメーカーの専門化は実際に進んでおり、発電、変電、送電、配電など電力だけをとり上げても、秀れた技術と豊富な経験がなければシステム設計など出来るものではありません。製造業を見渡せば、各種の重化学工業、鉄鋼業、紙パルプ工業、セメント工業など、多岐にわたる産業があり、それぞれに専門のシステムエンジニアリングがあって、システム構築が行われています。今では半導体、液晶パネル、太陽電池、大容量蓄電設備などの製造装置が巨大化し、計装の主な対象になりつつあります。

 エム・システム技研は、これら設備、装置のメーカーにも、機能、性能に関して具体的なご注文、ご指摘をいただきながら、必要なシステムコンポーネントの開発を積極的に進め、その体系化を図って参りました。こうして出来上がった「特殊仕様の製品」についても、仕様内容の整理統合をすすめて「標準品」にまとめ上げてゆく努力を続けています。
 エム・システム技研の何よりの自慢は、膨大な機種の中からご用命いただいた製品を、その時点で営業部門が直ちに中央のホストコンピュータにキーインすることにより、あらかじめ用意された製作手順に基づいた要領で即座に製作指示書が生産現場のコンピュータに送られ、ほとんどの製品は3日という短納期で確実に出荷する仕組みが出来ており、かつそれが順調に稼働していることです。
 次に、守ってきたキーワードは、「廃形をしない」ということです。
 これは生産現場を合理化したいメーカーにとって大変勇気の要る宣言ですが、お客様のためにはどうしても実現したいと努めて参りました。ドラッカーは「いかに計画的に廃形をするか」について説いておりますが、エム・システム技研は廃形しないことを創業以来40年続けています。
 その次は、これもメーカーとしては思い切った「特物無料」を打ち出しています。お客様の「特別仕様製品」のご要求は、実質的には市場の要求そのものであり、よく吟味して考えれば、それは「近未来の新製品情報」と言うことができます。
 このようにして打ち出してきた基本方針を、今日まで社員全員が納得して受け止めてきてくれた成果として、リーマンショック後も着実に成長を続けてくることが出来たのだと確信しています。

 工業計器を足場にして、電力計測監視用各種機器、FA用計測制御機器、更にはBA用計測制御機器へとその守備範囲を少しずつ拡げて参りました。そして今、エム・システム技研はプリント基板に直接実装するアイソレーションアンプシリーズを取り揃えて、装置産業の中までアナログ変換器を組み込んでいただこうと力を入れています。

プリント基板に直接実装するアイソレーションアンプ 20シリーズ  

「やるからには、世界一の品揃えと短納期を目指してゆきたい」とエム・システム技研は考えています。
 創業製品の一つである「電動アクチュエータ」も、今ではコントロールバルブの用途以外にも産業機械の制御用機器として需要が拡がり、過去最高の出荷量を毎年更新しています。

 「創り続けること。新しいイノベーションを獲得すること。」これがお客様の安心感と信頼感を自然に釀成してきて、多くのリプレース需要がエム・システム技研に集まってきているのではないかと強く感じとれます。
 ドラッカーの言う『環境に適応した会社が生き残る』は本当にそうだなぁ、という思いを新たにしています。

棚田風景(明日香村稲渕の棚田) = 奈良県高市郡

(2011年9月)


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