1999年5月号

『エムエスツデー』

6周年記念のごあいさつ

(株)エム・システム技研 代表取締役社長 宮道  繁

 早いもので、『エムエスツデー』は創刊以来6周年を迎えます。
 世界の情勢や経済界の変化の目まぐるしいこのごろですが、ビッグバンを契機に新たな展開が予想されます。
 私達を取り巻く計測・制御の世界における通信との融合、技術開発の方向、業界の動きについて私の展望を述べてみたいと思います。

通信との融合
 計測・制御の中心は、工場内の物理変数や状態を伝送し、処理し、監視し、記録し、制御する情報技術です。1950年代に、デジタルコンピュータが当業界に入り始めた時、先駆者はコンピュータも通信も一体であると言っておりましたが、一般には、それが何を意味するのか想像できませんでした。40年経った今は、コンピュータがインターネットで接続され、工場内でも計測用変換器がバスで接続され、両者が一体である姿を日常よく見かけるようになりました。エム・システム技研でもこの線にそった製品を製作しています(図1参照)。
 そして今や、電話回線を利用したプロセス量や音声情報、画像データの通信までもが、計測・制御の通信の一角を占めるに至っています。
 21世紀に向かって、われわれの情報技術を、工業用計測・通信・制御と考えるべきと存じます。このように、技術視野を広げないと、われわれの業界も鉄道と同じように将来性を失って行くでしょう。鉄道会社あるいは国営事業体が、自己を広く交通・輸送業と考えず、鉄道のみに限定したため、トラック運送へも航空輸送へも発展の機会を逃したことが、時折引き合いに出されます。わが業界が、工業用通信を今積極的に取り入れなければ、鉄道業のように自己の将来を限定してしまうでしょう。

技 術 開 発
 従来、計測・制御の会社ではあまり基礎研究が行われず、その技術開発は、時の先端産業から技術を借りて行う商品開発が中心でした。一、二の例外はありますが、フィードバック理論しかり、また、空気圧計器系は、汽車のブレーキ技術の転用でした。トランジスタができると早速採用し、ICもマイクロプロセッサも逸早く取入れ、消化しました。トランジスタとICは、測定・通信・制御製品を小型化しました。ちなみに、エム・システム技研は、変換器を握りこぶし大にまとめることで創業に成功しました。
 この半導体技術、パソコン、Ethernetが代表するバス通信技術、更にグラフィック表示技術等の当業界への導入が急速に進んでいます。昨秋のINTERMAC'97では、デジタルカメラで撮った写真をマンマシンインタフェース(MMI)に直接入れて、グラフィック表示に使う製品が出展されていました。今後も、工業用計測・通信・制御機器メーカー間では、パソコン産業技術の先取り競争が続くものと思われます。

アナログ技術教育
 電子産業全体におけるマイクロプロセッサとパソコンのハードとソフトの発展は、大学電子工学科の科目と学生の専攻にも影響して、デジタル回路、プログラミング、シミュレーション志向です。これに対して、熱電対、測温抵抗体、ストレンゲージ等のセンサ信号をはじめ、工業計測・制御用物理変数の大部分はアナログであり、これが当業界の基礎です。ところが、このアナログ信号に馴染み、アナログ回路に習熟した新入社員を最近は見出しにくくなっています。ユーザー側もリストラなどで、押し並べてアナログ技術を蓄積した専門家の数が減っています。今後もこの傾向は続きますから、メーカーとしてはアナログ回路技術者の確保と育成に努力しなければなりません。大学でアナログ回路の講義、実習が少なくなるにつれ、自社で組織的に再教育をする必要性が高まっています。

業  界
 計測・制御の業界は成長産業と言われて久しいですが、大小ほとんどのメーカーが成長の停滞と利益率の低さにあえいでいるのが現実です。急成長と高利益率会社の例に挙がるゼネラルエレクトリック社とモトローラ社が、過去25年の一時期に当業界に参入を試み、数年で撤退しました。これを、「業界技術の高度さの前に屈した」とする意見がありましたが、その後他の難しい業界での成功を見ると、両者とも投資感覚の良さから当業界の成長率と投資効果の低さに早く見切りをつけたと見る方が妥当のようです。このような産業でも、適正な利益を上げる経営を達成する必要があります。順当な利益があって初めて、安定してユーザーに製品が提供できるからです。
 25年前には、北辰電機、フォックスボロー社、テーラー社、フィッシャー&ポーター社、ベーレー社、ローズマウント社、ケント社、ハルトマン・ブラウン社、アラン・ブラドレー社などは独立会社でした。これらが合併買収の結果巨大会社の一部になりました。その結果、一般に多くの製品が廃止されるので、ユーザーにとっては迷惑です。合併買収で買い取り側の売上げは直ちに大きくなりますが、買収前の2社の業容に比較して、合併買収後の実質成長率と利益率は産業を問わず一般に低下します。過去4年間に、フィッシャー&ポーター社、ハルトマン・ブラウン社と矢継ぎ早に大きな買い物をして、売上額では世界一になったベーレー社(Elsag Bailey)が、高負債率から自社自身を売りに出した例がこの様子を示しています。当業界の大会社はほとんどが大きな合併買収を実施していますから、同様に未消化の財務問題を抱えています。21世紀に向かって、これらの経営リストラが業界健全化の課題です。
 大きな計測・制御会社は、DCS、大型PLCを主要製品としており、これがパソコン式DCS、パソコン上に構築したソフトPLCの挑戦を受けています。両者の関係は、コンピュータのメインフレームとパソコンシステムの関係に似ています。パソコンの出現によりコンピュータシステムの価額が大幅に低下し、メインフレームの需要を侵食してしまいました。IBMでさえ一時落ち込み、DEC、ユニシスなどパソコンに乗り遅れたコンピュータメーカーは苦戦しています。エム・システム技研の変換器類への引き合いからも、DCS、PLCにおけるコスト削減、製造の軽量化努力が窺えます。新しいマイクロプロセッサ式、あるいはパソコン式DCSとソフトPLCで、まず入力アイソレーションもないDC4~20mA汎用プリント基板を、自社で大量生産し、コスト削減を行っています。熱電対、測温抵抗体、ストレンゲージなどからのセンサ信号は、専門メーカー製の変換器でDC4~20mA信号にして、汎用基板で受ける設計です。このような設計は以前からもありましたが、変換器はセンサ毎の特種基板を設計するよりこの方がシステム設計を簡単にするうえ、コストも安くし、保守も容易にすると再認識されたと考えられます。
 このような業界の動きの中で活動を続けるには、製品を特化するだけでなく、会社の大小を問わず一社一業に専念し、会社自身の特化を推進することが、豊かな業界を育む道に通じるものと考えます。

 エム・システム技研は、こうした時代の流れに乗り、絶えず前進を続けて行く所存ですが、『エムエスツデー』にて私達の行程を逐次お伝えして参りますので、引き続きご愛読いただきますよう、よろしくお願い申しあげます。   ■
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