2004年3月号

新計装システム「SCADALINX(スキャダリンクス)」(その1)

(株)エム・システム技研 開発部
 
は じ め に
 エム・システム技研が、スーパーDCS「MsysNet」を1993年に発売してから10年が経過しました。MsysNetは、発売以来今日までに、数百システムのご採用をいただいています。お客様でのご使用状況やご評価については、本誌の「お客様訪問記」にてご紹介しています。MsysNetは、ネットワーク計装部品として、各ユニットが個別のコントロール機能をもち、単独で動作しながら他のユニットと融合した制御ループを形成できる設計になっています。安価でありながらデータ更新の早さを追求したネットワーク(NestBus、M-Bus、L-Bus)により、各ユニットは他のユニットのデータを高速に共有することができる構造になっています。その性能と使い良さをお客様にご評価いただき、各方面で多くのアプリケーションにご利用いただいています。
 MsysNetを代表するHMI(Human Machine Interface)ソフトウェアは当初の監視 操作ソフト(形式:SFD)から2番目の監視 操作ソフト(形式:SFDN)へと引き継がれ、その間に使用されたOSはOS2、Windows NT4.0そしてWindows 2000へと変わりました。しかしながら、最近のIT(Internet Technology)の進歩により、HMIを根本的に見直すことが必要になっています。図1はエム・システム技研のHMIソフトウェアの歴史です。
 そこでエム・システム技研では、MsysNetを進化させITを使用した新計装システム「SCADALINX」を開発し、製品化することにしました。エム・システム技研が販売する計装システムは、MsysNetの機能を維持発展させ、新時代に対応したSCADALINXへと進化します。このSCADALINXについて、今号と次号の2回にわたって本誌でご紹介します。
 今号ではシステム全般にわたってSCADALINXを開発するに至った経緯と開発目標についてご紹介し、次号ではWeb対応の「SCADALINX HMIパッケージ(形式:SSDLX)」についてご説明します。

1.SCADALINXの開発目標
 新計装システムを開発するに当たって、次に挙げる8つの課題がクローズアップされました。
 (1)次世代計装システムにふさわしい構成にすること
 (2)HMIのグラフィック画面として高機能な画面が作成できること
 (3)複数のパソコンで遠隔データを監視できること
 (4)現在稼動しているMsysNetの資産を継承できること
 (5)標準化されたオープンバス通信機能をもった機器が接続できること
 (6)システム構築が容易なHMIを低価格でお客様にご提供できること
 (7)強力なリモート制御ユニットによって広範囲な制御システムが構築できること
 (8)現場と中央とでデータを共有できること
 これらの課題の総合的な狙いは、MsysNet関連製品およびエム・システム技研が販売している通信機能付変換器(以下、リモートI/Oと記述)とテレメータ機器を、最も新しいテクノロジーを利用して結びつけることによって、未来に向けて機器と人とを融合し資源の有効活用ができる環境を構築することにあります。
 SCADALINXの開発は、以下に詳しく説明する内容の実現を目指して進めています。

2.新計装システム
 プロセスおよびファクトリ計装を中心にした計装システムについては、各社が競って高性能なCPUを使用して独自のHMI機器を販売した時代から、パソコンとPLCを中心とする計装システムの時代へ推移しています。
 エム・システム技研では、すでに10年前から時代の先を読み、パソコン計装を中心にしたネットワーク計装部品であるMsysNet機器を販売してきました。今日では、パソコンとそれを動作させるOSの高機能化に伴い、あらゆるニーズに対応したシステム構築が可能になりました。しかしながら、多様化するニーズに対応するためには、安価なハードウェアに比べて、必要とする機能を実現するためのソフトウェアの開発が高価なものになっています。
 SCADALINXシステムでは、豊富なハードウェアを利用しつつ、必要とする機能を容易に実現するソフトウェアを用意します。図2によって新計装システムSCADALINXの全容を示します。

3.Webブラウザを利用したHMIソフトウェア
 Windowsに標準で組み込まれているWebブラウザを利用してプロセスデータの監視・操作をします。なお、Webブラウザ画面に表示されるデータについては、通常は画面の再表示ボタンを押して更新しますが、SCADALINXシステムで使用するHMIソフトウェア(以降、SCADALINX HMIと記述します)では、表示データの高速リアルタイムでの更新を実現します。これによって、各画面への展開操作を容易にします。

4.MsysNet(L-Bus)の進化
 MsysNetは機器間伝送端子を使用してネットワークデータの共有化を行っていますが、アナログデータが32点、接点データが512点に制限されています。この制限を超えて、ネットワークに接続されている機器間のデータを相互に接続できるネットワークを開発します。

5.オープンネットワーク
 オープン化されている汎用バス(Modbus/TCP)を使用した機器をEthernetによって相互に接続します。エム・システム技研のリモートI/O機器(形式:R1シリーズ、R2シリーズ、R3シリーズ、R5シリーズ)およびModbus/TCPプロトコルをもった他社PLCが主な対象機器です。

6.サーバへのデータ集約
 SCADALINXシステムで使用される各種データは、ネットワークに接続された「SCADALINXサーバ」に集約されます。このデータはシステムデータベースに格納され、SCADALINXクライアントでの監視・操作画面や他のアプリケーションとの共有化ができます。システムデータベースにはシステム設定データと収録データが格納されます。システム設定データはSCADALINXシステムビルダにより設定されます。

7.低価格の実現
 現在販売されているプロセス監視・操作用HMIソフトウェアについては、一般的にシステム開発用ソフトウェアが高価です。ソフトウェアのライセンスは使用するタグ数や接続するパソコンの台数によって価格が高騰するという現実があります。SCADALINXでは、この問題を解決し、システム開発用ソフトウェアを含め、タグ数や接続するパソコンの台数に関係なく、同一の低価格化を実現します。

8.システムの構成
  SCADALINXのシステム構成例を図2に示します。すなわち、システムは次に挙げる諸要素から構成されます。
 (1)SCADALINXXサーバ
 (2)L-Bus Plus
 (3)MsysNet
 (4)Modbus/TCP
 (5)リモートI/O
 (6)エンベデッドコントローラ(形式:R3RTU)(リモート制御ユニット)
 (7)Webロガー(形式:TL2W)
 (8)各社PLC
 システムデータベースとWebブラウザで表示する画面を管理するSCADALINXサーバを中心にしてSCADALINXシステムが構築されます。
 MsysNet機器を従来からのL-Busにて接続し、リモートI/Oおよび各社PLCは、汎用バスのModbus/TCPプロトコルにてSCADALINX HMIに接続します。
 SCADALINXサーバ:Web画面を管理するWebサーバとシステムデータベースから構成されます。 WebサーバはWindows 2000またはWindows XP ProfessionalのIIS(Internet Information Services)を使用しWeb画面を実現します。
 システムデータベースはマイクロソフト社のデータベースエンジンMSDEを使用します。
 L-Bus Plus:拡張したL-Busプロトコルです。接続される機器間でのデータを共有できます。
 MsysNetMsysNet機器が接続できます。
 Modbus/TCP:汎用バスであるModbus/TCPプロトコルにより、エム・システム技研のリモートI/Oおよび他社PLCを接続します。
 エンベデッドコントローラ(形式:R3RTU、図3):リモート制御ユニットです。リモートI/O(R3シリーズ)の入出力ユニットと組み合わせて使用する制御機能をもったユニットです。SCADALINX HMIにて監視・操作を行うことができます。エンベデッドコントローラについては、使用する用途に合わせて次に列挙する各種の機能を実現する予定です。
 (1)PIDループコントローラ
 (2)ブラインド形チャートレス記録計
 (3)現場記録形Eメール通報装置
 (4)高速I/O付き現場形コンピュータ
 エンベデッドコントローラの詳細は、別途本誌にてご紹介して参ります。
 Webロガー(形式:TL2W):エム・システム技研からすでに発売され、お客様にご好評をいただいているWebサーバ形のロガーです。現場でデータの記録を行います。SCADALINX HMIに接続することにより、現場に記録されているデータをSCADALINX HMIのシステムデータベースに取り込み、帳票データなどに使用することができます。■

MsysNetSCADALINXは、エム・システム技研の登録商標です。
 
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