トップページ >レベルのお話 第12回(最終回) |
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2003年12月号 | ||||||||||||
レベル の お 話
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松山技術コンサルタント事務所 所長 松 山 裕 |
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浮子の位置を測定する方法は昔から使用されている方法で、JISでは浮子を浮ひょうといっています。浮ひょうの例を図1に示します。 浮ひょうの大部分は液体中に沈みますが、けい部の一部は液面上に出ています。浮ひょうは(液中に沈んだ体積×液体の密度)に相当する浮力を受け、これと浮ひょうの重量(質量×重力の加速度)とがバランスする位置で静止します。そこで、液中に沈んだ体積をけい部につけてある目盛から読み取り、液体の密度または比重を知ります。 浮ひょうによる密度測定方法には、構造が簡単なわりに精密測定ができるという特徴がありますが、自動測定ができないことと、液体が目盛の表面に附着して盛り上がるので目盛の読み取りに注意を要するという短所があります。 工業用では、一般に浮子全体を液中に浸没させて浮力を測定する方法がとられています。ディスプレーサ式レベル計(本連載第3回参照)を密度計として使うことは可能ですが、ここでは密度計専用製品の例を図2に示します。 液体を満たした浮子室に置かれた浮子は、液体より浮力を受けますが、この力は内部レバー - 磁気継手 - 外部レバーを経て力-空気圧変換器に伝えられ、空気圧信号として出力されます。 この密度計の最大の特徴は自動温度補償にあります。液体の濃度と密度の間の関係には、温度が大きく影響します。そのため、この密度計を濃度計として使用するときは、浮子の内に測定対象液と同じ熱膨張特性をもつ液体を封入し、温度変化の影響をほとんど受けないようにしています。
振動式密度計は、高感度で信頼性が高く、連続測定が可能です。そのため、化学製品の密度測定法としてJIS K 0061に採用されています。ラボ用の製品の場合、U字管部分を一定温度にする必要があるので恒温槽内に入れることが一般的です。例を図4に示します。図のペルチェ素子は熱電対の逆の機能をもつ素子で、これに直流電流を流すことにより、恒温槽の温度を制御します。 振動式密度計は食品関係にかなり使用されていますが、応用例の一つにビールアナライザがあります。麦汁を発酵させてビールにする過程で、糖分が分解されてアルコールに変わり比重が減少します。ビールアナライザでは振動式密度計と屈折計(液体の屈折率を測定して液体成分濃度を検出する計器)とを併用して、アルコール濃度、エキス濃度、発酵度などビール製造工程に必要なデータを迅速に得ることができます。なお、質量流量計として各産業分野で使用されているコリオリ式流量計は、振動式密度計としても使用することができます。
今回説明した浮子式および振動式密度計は、いずれも検出器をプロセス配管に直接設置することはできません。メイン管路から液体をサンプリングするか、バイパス管路を作らなければなりません。そのためプロセス配管を加工する必要がありますし、またサンプリングやバイパスをすることは保守の面でもやや面倒です。その点では、放射線式密度計は非常に有利といえます。しかし、従来他の密度計が使用できない高温・高圧流体やスラリー流体以外にはほとんど使用されていませんでした。これは、使用する放射線源がかなり強力であり、法的規制が厳しかったためです。しかし最近微弱な密閉ガンマ線源(従来製品の1/1000程度の強度)を使用した製品が市販されたので、この点が大幅に改善されました4)。そのため、放射線式密度計の使用が今後増加することが予想されます。 なお、この製品の適用配管は25A~350A、密度測定範囲は0~3.0g/cm3(配管径・肉厚により制約あり)とされています。
◆ 参考文献 ◆ 1)JIS Z 8804(1994):液体比重測定方法 2)JIS K 0061(2001):化学製品の密度及び比重測定方法 3)松山 裕:実用 工業分析、省エネルギーセンター(2002) 4)宮下 恭一(アースニクス):ガンマ線利用の密度計とレベル計、オートメーション、Vol. 45、No. 4、p. 43~49(2000) |
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