トップページ >流量のお話 第3回 |
||||||||||
2001年9月号 | ||||||||||
流 量 の お 話
|
||||||||||
(有)計装プラザ 代表取締役 佐 鳥 聡 夫 |
||||||||||
このような成長をもたらした理由は、以下に挙げる特長に求められます。 1)管内に障害物がない 管体内部に機構部品がなく、電極も管壁に配置されているため、流れを妨げるものがまったくありません。これに伴い、次の特長が生じます。 ●圧力損失ゼロ (口径10mm以下は、内部で管路を絞るため圧損あり) ●スラリーも測定可能 ●構造が簡単で、故障し難い ●清掃・保守に手間がかからない 2)耐食性、耐磨耗性がよい 接液部の材質は測定対象に応じ、フッ素樹脂、ゴム、セラミックなど様々なものから選べます。したがって、耐食性や耐磨耗性を高めることができます(計装プラザhttp://www.keisoplaza.co.jp/に材質選定表があります)。 3)密度・粘度の影響を受けない 電磁流量計の流量信号は、体積流量に直線的に比例し、原理上密度や粘度の影響を受けません。 4)測定できる流量範囲が広い 電磁流量計のフルスケール流量は、変換器側での設定により自由に変えられます。流量信号は流量ゼロ付近まで出ますから、1つの流量計で広い流量範囲の測定ができます。 口径も、大は2000mmを超えるものから小は2.5mmまで、広い範囲で作られています。 5)高精度 電磁流量計の精度は、以前はフルスケールの1%程度といわれていましたが、その後の技術の進歩により、現在では指示値の0.5%が普通になりました。 6)必要直管長が短い 上流側に口径の5倍程度の直管部を必要としますが、これはオリフィス流量計に比べるとはるかに短い寸法です。 7)応答が速い 電磁現象を直接利用し、質量や熱容量が介在しないため、流量変化に素早く追従できます。 8)付着性異物に強い 粘着性異物や液体からの析出物が管壁に付きにくく、付着してもその電気伝導度が液と同じであれば誤差を生じません。また、構造上付着物の清掃も簡単です。 9)逆方向の測定が可能 構造が上下流対称なので、逆方向の流れも測定できます。このような流量計は、ほかにはあまりありません。 以上述べたように、良いことづくめの流量計ですが、測定対象が導電性の液体に限られるという大きな制約条件があります。すなわち、気体・蒸気・非導電性液体には使えません。
特殊仕様としては、防爆型、サニタリ構造、2線式、電池駆動(水道メータ用)、非満水用(下水、排水用)などがあります。 5.技術的進歩 今日まで数々の改良がなされてきましたが、そのうちでとくに重要な次の2つについて説明します。 1)低周波励振 かつて電磁流量計の最大の弱点はゼロ点の不安定でした。流れによって生じる起電力、すなわち流量信号は数μVから数mVと微弱なレベルであるため、いろいろな変動要因の影響を受けやすいのです。最大の変動要因は100Vの商用電源につながった励磁コイルであり、そこから誘導ノイズが信号線に入り込みます(永久磁石で磁界を作ると電極表面に分極という現象を生じ、起電力が生じなくなります)。 この問題を抜本的に解決したのが低周波励振方式です。これは図2に示すように、直流で断続的に磁界を作り、磁界があるときの信号からないときの信号を差し引きます。磁界がないときの信号はノイズですから、差し引き後の信号にはノイズ成分が消え、流量成分だけが残る仕組みです。 励振周波数は商用周波数(50または60Hz)の約1/4~1/8とするのが一般的です。励振周波数を遅くするほどゼロ点はより安定になります。その代わり応答速度も低下し、別の種類のノイズも増えるので、バランスのよい点を選びます。 2)容量型電極 もう一つの制約条件である導電性の問題は、容量型電極の開発により改善されました。これは、図3に示すように絶縁性パイプ(通常はセラミック)の外側に電極を配置し、静電容量を介して起電力を取り出す仕組みです。詳細な説明は省きますが、このようにすると従来数μS/cmであった導電率の下限値を、さらに数十分の一まで下げることができます。この結果、アルコールや脱イオン水など導電性の低い液体が測れるようになりました。ただし、油や超純水のように導電性がまったくないものは、現在も測れません。 ■ |
|
|||||||||
|