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2001年3月号

温度のお話

第11回(最終回) 熱電対と抵抗式測温体

(有)ケイ企画 代表取締役/エム・システム技研 顧問 西尾 壽彦

 本稿をもって「温度のお話」は終了させていただきます。
 プロセスオートメーションにおけるインタフェースのトップメーカー、エム・システム技研のお客様である様々な分野の技術者の皆様を対象に、話しを進めて参りました。しかし、温度の計測・制御に携わっている専門技術者の方々には、ものたりない内容であったことと思われます。また温度以外の専門技術者の方々にとっては、説明の省略が多く、ご理解いただきにくい点が多々あったように思われますが、ご容赦願います。
 今後、具体的な事例に当たって、少しでも皆様にご協力できるところがあれば、質疑、討論、資料請求など何なりとお申しつけいただければ、幸甚の至りです。
 本稿では、お客様である技術者各位ではなく、その販売や購入などの流通に貢献なさっている方々のために、温度センサの代表である熱電対と抵抗式測温体のJISの一部を紹介し、お役に立てればと考えています。

1.関連JIS
 本来は表1に示した関連JIS(約60ページ)を熟読なさることが好ましいわけですが、詳細に亘り繁雑な点も多いので、実用的に抜粋してご紹介します。

2.各種測温体の利用上の比較
 2-1 出力電圧信号の大きさ
 イ)熱電対は、ゼーベック効果により、1℃当たり約40~60μVの出力電圧を発生します。 
 ロ)測温抵抗体(白金測温抵抗体)は1℃の温度変化により約0.4%の抵抗変化を生じ、検出回路であるホイーストンブリッジの出力としては熱電対より10倍以上の電圧を得ることができます。
 ハ)サーミスタ測温体は負の抵抗特性で、約4%の抵抗変化を生じ、抵抗値が大きいため、熱電対より数百倍のブリッジ出力電圧を得られます。
 そして、出力信号が大きいセンサほど外部からの電気的誘導障害や温度ドリフトなどに強く、電子回路設計上の負担は軽くなります。
 2-2 特長についての比較
 熱電対は、感温部を小さく設計でき、設置に際しての自由度が大きく、安価です。比較的高温度の測定に適しており、800~1000℃以上では測温抵抗体に比べて高い安定性をもっています。
 測温抵抗体は、次に列挙する特長をもっています。
 イ)ブリッジ出力が大きいため、関連する記録・制御・信号変換を高精度で行えます。
 ロ)ブリッジ回路の設計により、温度に対応する出力を自由にとることができます。
 ハ)冷接点温度測定とその値を使った補償回路が不要です。
 ニ)微小な温度変化に対する感度が高く、中程度の温度領域で、校正の絶対精度が熱電対より10倍以上良好です。
 ホ)最近は、JISの対象ではありませんが、微小温度差計測用として1kΩ(0℃において)の白金測温抵抗体でかなり信頼性の高い製品も実用化されてきています。
 サーミスタ測温体は、高出力が得られるので0.01~0.001℃の微小な温度差や温度偏位の計測センサとして分析機器、医用電子機器に利用されています。
 一方、出力が大きく電子回路をローコストに設計できるため、事務機、空調機、一般家電製品には早くから活用されており、国内における年間のサーミスタ生産は数億本に達しています。
 経時、経年変化が生じない測定対象温度範囲としては、-50~+250℃程度をお奨めします(JISビード型)。
 最近では、大量生産されているため、±0.5℃(0℃において)の互換性のあるものが使用されています。

3.絶対精度に関する信頼性
 最も需要の多い-100~+650℃の範囲において、環境温度や外部ノイズ、経時変化、校正の容易さなどを加味しておおまかに考えると、最も信頼性の高い温度センサは白金測温抵抗体であり、それに準じるのが熱電対やサーミスタであると考えてください。
 最近の電子産業におけるプロセスでは、白金測温抵抗体の利用が大幅に増加しています。
 JISに規定されている熱電対と測温抵抗体の許容差は大きく異なるので、よく承知しておいてください。

4.電子回路の信頼性
 最近のセンサ入力用演算増幅器はオフセット電圧がゼロに近く温度ドリフトもありません。また、温度係数が小さい金属抵抗も安価に入手できるため、温度変換器の信頼性はJISに規定されている以上に優れたものであり、安心して使用できます。
 ただし、熱電対用の変換器の補償接点(接続端子)の温度と補償素子の温度に時間遅れが生じるような場合、すなわち使用環境温度が急激に変化するときは、精密計測には不適です。
 とくに常温付近の計測では、誤差が大きくなります。
 このような場合には、測温抵抗体が適しています。
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 読者各位には、長期間にわたり拙文にお付き合いいただき、大変光栄に思います。連載を終えるに当たり、厚く御礼申しあげます。■
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