エムエスツデー 2005年4月号

信号変換器、警報設定器

バラエティ豊かな
エム・システム技研の防爆製品

(株)エム・システム技研 開発部

は じ め に

 エム・システム技研は、1982年に電子機器専用避雷器エム・レスタを収納する耐圧防爆容器(形式:BX-E)を発売して以来、数々の防爆製品を世に送り出してきました。今回は、発売予定のものも含め、エム・システム技研の防爆製品を改めて網羅的にご紹介します。

1.防爆について

 防爆製品について、より深くご理解いただくために、製品紹介に先立って「防爆」について簡単にご説明します。なお、詳しくは、本誌2000年3月号および4月号の「計装豆知識」をご参照願います。

 爆発性の危険物を取り扱う工場などで爆発事故が起こるのは、爆発物、酸素(空気)および点火源の3つが同時に存在する場合に限ります注1)。電気機器が爆発の原因になるのは、電気機器が点火源となるからです。電気機器の防爆を実現する手法は、電気機器に爆発物を近づけないようにするか、電気機器が点火源とならないようにするか、のいずれかです。

 防爆機器は、対象となる爆発物の種類、場所(爆発物の存在確率)および点火を防ぐ構造によって細かく分類されます。以下、これらについて簡単にご説明します。

 代表的な爆発性ガスおよび蒸気注2)の分類を表1に示します。温度等級(着火温度)とグループ(点火エネルギー)という2種類の項目で分類しています。

表1 代表的爆発性ガスおよび蒸気の分類

 表の横方向には、点火エネルギーの小さい順に物質を並べています。つまり、左側にある物質は、より小さいエネルギーの火花で爆発するので、危険度が高いといえます。逆に、その物質の存在下で使用可能な防爆製品は、安全度が高いといえます。

 縦方向には、着火温度の順に並べています。火花がなくても、高温にさらされると自然着火してしまう温度です。つまり、表の下側にある物質は、より低い温度で自然着火するため、危険度が高いといえます。逆にその物質の存在下で使用可能な防爆製品は、安全度が高いといえます。

 次に、危険場所の分類を、地下にガソリン貯蔵槽があるガソリンスタンドを例に説明します。貯蔵槽内、貯蔵槽のガソリン注入口付近、注入口から離れたガソリンスタンドの敷地内では、爆発物の存在確率が異なることは容易に想像がつきます。貯蔵槽内は、常にガソリンが存在し(0種場所)、そこに液面計を設置するときは、いかなる場合にも火花が出ないような構造にする必要があります。

 注入口付近では、タンクローリーがガソリンを補充しにきたときだけガソリンが存在しますが、それは日常作業の範囲であり、誤りなく作業を行ったとしても、その間はガソリンが存在します(1種場所注3))。その付近に照明機器を設置する場合には、貯蔵槽内に用いられる機器程でないにしても、点火源にならないよう、機器の構造に配慮しなければなりません。客の車に給油するノズル周辺も同様です。

 蛇足ですが、最近セルフ式のガソリンスタンドが増えてきましたが、くれぐれもくわえタバコで給油しないよう気をつけてください。なかには、携帯電話の電源を切るよう求めているガソリンスタンドもあります。

 注入口から離れた敷地では、ガソリンは通常存在しません。しかし、ホースを注入口に挿入する前に誤ってホースのコックを開いてしまうと、ガソリンが敷地内にまき散らされることになります(2種場所)。ここに設置する電気機器については、万が一の事故に備えている必要があります。

 電気機器自身を点火源にしないようにするための手法に従って、防爆構造は分類されています。

 爆発物を点火源となり得る電気回路から遠ざける方法として、油入防爆や内圧防爆などがあります。これは、油や不燃性ガス(たとえば窒素)などで電気機器(回路)の周りを取り囲み、爆発物の接近を防ぐ方法です。

 電気機器側で火花の発生を防いでいるのが耐圧防爆や本質安全防爆などです。

 耐圧防爆は、電気機器の内部での爆発が原因になって外部の爆発物に点火しないような容器構造を採用する方法です。

 本質安全防爆は、電気回路で発生する火花エネルギーや発熱による温度上昇が、対象となる爆発物の点火限度以下になるような回路構造を採用する方法です。本質安全防爆は、一定条件の範囲内で部品故障が発生してもその防爆性能を維持するため、最も安全です。先の0種場所に設置できるのは、本質安全防爆製品だけです注4)

2.エム・システム技研の防爆製品  

 表2に、現在申請中や開発中のものも含め、エム・システム技研の全防爆製品とその防爆仕様を示します。詳細については、各製品の仕様書をご確認ください。

表2 エム・システム技研の防爆製品とその防爆仕様

表2 エム・システム技研の防爆製品とその防爆仕様 拡大図

 防爆製品を使用する場合、その設置場所の条件に合わせて選定する必要があります。たとえば、爆発物がエチレンの場合、グループ分類がIIBまたはIIC、温度等級がT2~T6の製品を選定する必要があります。二硫化炭素の場合は、IICとT5またはT6の組合せが必要です(表1参照)。

 逆に製品の防爆仕様からは、どのような気体に適用可能かがわかります。

 たとえば、26REX(ヘッドマウント形測温抵抗体変換器)はIIC T4ですから、緑色の実線で囲んだ枠内の気体に対して適用可能です。またVOS-EVOS-ER(耐圧防爆形2線式ポジション発信器)はIIB T5ですから、緑色の破線で囲んだ気体に対して適用できます。B6UB6U-B(2線式ユニバーサル温度変換器)はIIC T6ですから、すべての気体に適用可能です。ただし、国内向け(労検の技術的基準)はIIC T5なので、注意してください。

 どのような危険場所で使用できるかについては、表2または各製品の仕様書を参照願います。

3.M3DYH

 次に、現在開発中のディストリビュータ(絶縁形安全保持器内蔵、形式:M3DYH)についてご紹介します。

 ご存じのとおり、本質安全防爆と呼ばれる機器は、危険場所に設置する本安機器と、安全場所に設置して、本安回路に供給する電気エネルギーを安全なレベルに制限する本安関連機器の2種類があります。本安関連機器の代表として安全保持器があります。本安機器は、携帯形を除き、安全保持器と正しく組み合わせて初めて安全性が保証されます。

 国内では、安全保持器としては、ツェナバリヤが一般的です。2線式変換器の場合、変換器とディストリビュータ間の配線にツェナバリヤを挿入する形になります。

 M3DYHは、2線式伝送器に電源を供給するディストリビュータと安全保持器を兼ねています。しかも、入力と出力の間が絶縁されています。そのため、一般のツェナバリヤでは不可欠な接地が不要です。

 さらに、M3DYHの最大の特長としてHART信号を入力・出力双方向に伝えることができます。この特長により、B6UなどHART通信対応の2線式変換器をB6UCONなどのPCコンフィギュレータソフトで操作するために使用するパソコンを、回路の安全側で、しかも現場から引き込まれた配線とは絶縁された状態で接続できます。

お わ り に

 エム・システム技研では、表2に示した製品以外に、リモートI/O製品の防爆対応も計画しています。ご期待願います。

注1)爆発物が気体の場合、その酸素(空気)に対する濃度比率が一定の範囲内にある場合に限って爆発します。その具体的条件は物質により異なります。
注2)爆発性の粉じんなどの分類もありますが、本稿では割愛します。
注3)北米の場合、0種場所と1種場所に相当する危険場所を併せてDivision 1と呼びます。また、2種場所をDivision 2と呼びます。
注4)北米のDivision 1には、本質安全防爆以外も設置可能です。

エム・レスタみにまるは、エム・システム技研の登録商標です。

 


ページトップへ戻る