エム・システム技研の
BAよもやま話

第5回 製品レベルのカーボンフットプリントが世界市場で要求される!

(株)エム・システム技研 顧問 富田 俊郎

はじめに

FAやBA業界の方々は「カーボンフットプリント」という言葉はすでによく耳にする用語となっていると思います。そもそもの認識として、すべての商品・サービスは作られてから捨てられるまでの過程を通して、多くのエネルギーを必要とし、それぞれの過程で温室効果ガスを排出します。この合計排出量をライフサイクルのフットプリントといいます。

製品レベルのカーボンフットプリントとは

製品のカーボンフットプリントとしてEVの電池を例にとると、2024年以降、EU域内では電池の「製造・廃棄時のカーボンフットプリントの表示が義務」づけられ、カーボンフットプリントのデータを提出しなければ、その電池が利用できない、つまり搭載したEV自体も販売できなくなります。ガソリンエンジンおよびハイブリッドの時代には世界的にも日本がリードする立場に長くいましたが、だからといって今後も無策でゆったりと構えているわけにはいかないのではないでしょうか。製品レベルのカーボンフットプリントを測定する国産のセンサ、変換器とシステムの導入が必須です。
図1は製品、部品のカーボンフットプリントの構成を示します。図2は海外のカーボンフットプリントの動向を示しています。

図1 製品、部品のカーボンフットプリント(PCF)

図1 製品、部品のカーボンフットプリント(PCF)


図2 海外のカーボンフットプリント最新動向

図2 海外のカーボンフットプリント最新動向

製品カーボンフットプリント測定を可能にするセンサとシステム

欧州や米国では製品の原単位測定を行い、製品のカーボンフットプリントデータをとるのはすでに普及してきていますが、日本国内においては議論は活発に行われているものの、実際の製品やラインレベルで電力を測定するセンサとシステムの普及はまだまだこれからであり、EV関連に限らず、日本製造業に不利な状況が発生する可能性があります。従来も欧州の規制が先行し日本に不利な状況が作られてしまうことがありましたが、製造業の日本回帰の流れの中で完成品のみならず、すべての構成部品のカーボンフットプリントデータを提供できるように準備することが輸出の必須条件となってきており、装置レベルの電力測定は世界的な流れとなっています。
図3は国産でこれらの測定を可能にするシステムの例を示しています。

図3 製品カーボンフットプリントデータの取得を可能にする国産センサとシステムの例

図3 製品カーボンフットプリントデータの取得を可能にする国産センサとシステムの例

【コラム】製品カーボンフットプリント測定のキーポイント

1. 装置あるいはライン単位での電力測定ができる超小形変換器

2. FAの(BA用も含む)すべての電力パラメータが測定可能

3. ネットワークによる現場での分散設置の自由度

4. 現場の分散設置と集中監視を配線工事不要の無線で接続

5. オープンな汎用SCADAを使用可能でシステムインテグレータが自由に構築

6. 小規模から大規模までカバーするスケーラビリティ