エムエスツデー 2006年2月号

データロガー今昔

第2回 パソコン計装の台頭

 今回は'90年代に目を転じて、当時のデータロガーを中心としたデジタル技術について振り返ってみます。'90年代におけるデジタル技術のトピックとして、工業計測、制御分野へのパソコンの進出が挙げられます。これまで、プロセス・コンピュータやDCS(分散型制御システム)の独壇場であったこの分野にもパソコンが使われるようになり、やがて本格的な実用化が始まりました。その風潮は「パソコン計装ブーム」とも呼ばれ、設備費の高いプロセス・コンピュータやDCSに対するアンチテーゼとして注目を集めたものでした。その背景にはパソコンの著しい進化 −高性能化、高信頼化、低価格化− がありました。

パソコンの進化

図1 パソコン性能の進歩

 世界初のパソコンは、1976年に発売されたApple I だと言われています。1979年には日本でもNECからPC-8001が発売され、一部のマニアを中核としたパソコンブームが到来しました。しかし、この当時のパソコンは、8ビットのCPUで構成されていて、ホビーユースではともかく、業務で使うためには性能的にも信頼性の面でも不足していると考えられていました。パソコンが業務用に使えるレベルに達したのは、16ビットのCPUが搭載されるようになってからと言えます。16ビットのCPUは、1978年に米国のインテル社から初めて発売されました。翌年にはモトローラ社も続き、これらの16ビットCPUを搭載した高性能なパソコンが'80年代初頭から次々と登場しました。さらに、1985年にはインテル社から32ビットのCPUが発売開始され、パソコンの性能を飛躍的に向上させることが可能になりました。'90年代に入るとパソコンのOS(オペレーティング・システム)としてマイクロソフト社が開発したWindows3.1が登場してユーザー・インタフェースに画期的な変革をもたらし、それを契機としてパソコンの爆発的な普及が始まりました。その後もパソコンは、日進月歩の進化をとげて現在にいたるわけですが、その間の様子(パソコン性能の推移)を端的に表したグラフを図1に示します。

パソコン計装におけるデータロガー

 '90年代、パソコンが工業計測、制御に導入され始めた当初の用途は、データロガーが中心でした。その理由として、いかにパソコンが高性能化したとはいえ、重要なプラントの制御に直接的に関わるような使い方をするのには、信頼性の点で不安があったことも事実でしょう。また当時、パソコンの業務用途としてはオフィス(事務)向けが先行していましたから、表計算ソフトなどのパッケージソフトが比較的安価に市場で流通しており、それらを応用してデータロガーのソフトウェアを構築しやすかったことも理由の一つでしょう。

 図2に当時('90年代半ば)のパソコンを使用したデータロガーの代表的な構成を示します。パソコンは当時の最高クラスの性能であり、HMI(Human Machine Interface)を兼ねたデータロガーのパッケージソフトとして、エム・システム技研で開発した監視 操作ソフト(形式:SFD)を搭載しています。SFDのOSとしては、当時、Windows3.1では工業用のOSとして24時間の連続稼働に耐えないという判断により、IBMのOS/2を採用しています。また、データ収集用の入力装置には、当時、パソコン計装用のコンポーネント機器の嚆矢として登場したMsysNet機器を使用しています。本システムのトータル価格は16,000,000円注)です。

図2 データロガー構成例

注)PC本体、モニタ、プリンタを各1台で計35万円として含みます。データロガーの機能としては、日報、月報の作成だけであり、年報作成機能は含まれていません

MsysNet は、エム・システム技研の登録商標です。

【(株)エム・システム技研 システム技術部】

 


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