エムエスツデー 2022年4月号

ごあいさつ

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

 株式会社エム・システム技研は来たる4月1日に「創立50周年」を迎えますが、私にとって「感慨無量」とはこのことかと思います。

 その創業の年1972年(昭和47年)の前年に、私の父がちょうど私の2倍の年齢でこの世を去ったので、自分の人生が後半に入ったと悟り、無一文での船出を決行しました。今思えば、資金なし、商品なし、もちろん実績もなしの、「何にもなしのエム・システム技研」が誕生したわけです。ありがたいことに多くの友人、知人に助けられ、名目とはいえ、創業の年から黒字決算ができました。本当に人脈のありがたさを身に染みて感じました。

 写真1 エム・レスタ®
写真1 エム・レスタ®
エム・システム技研の創業製品は、電子式工業計器用避雷器エム・レスタ®写真1)です。幸運というものがあるとすれば、まだ誰もエム・レスタ®相当品を発売していなかったことではないかと思います。電子式工業計器は、4〜20mA DCが世界の統一信号になり、工業計器各社は競ってこの統一信号を用いた工業計器一式を開発し、受注競争を繰り広げていました。ようやく電子式工業計器が行き渡ったころに、この4〜20mA DCを出力する工業計器が雷に弱いことが認識され始めたのですが、どう弱いのか、なぜ弱いのか、といったところまで認識されていなかったのでしょう。どの避雷器メーカーも、どの工業計器メーカーも、その点に気がついていないようでした。私はそのころすでに4〜20mA DCを出力するトランジスタのベースエミッタ間が、雷が発射する強力な電磁波によって破損することに気がついていたので、エム・レスタ®(形式:MDー24)を中心に据えたエム・レスタ®シリーズを発売しました。エム・レスタ®の避雷効果を実証するテストキットをアタッシュケースの中に組込んだもの(「パチトラ」と呼んでいました)をもって、日本中の水道局を訪問しエム・レスタ®の避雷効果を見てもらいました。その結果、名もない「エム・システム技研」のエム・レスタ®が全国の水道局に採用され、メーカーとしての「エム・システム技研」の収支が一息つくことになりました。
 本来エム・システム技研は、工業計器の中の変換器に目をつけ、「変換器の総合メーカーになろう」と始めたわけですが、このエム・レスタ®の商品化という幸運に恵まれ、変換器の開発と生産体制を築くための収入源が確保された形になりました。
 写真2 エム・ユニット
写真2 エム・ユニット
プラグイン形変換器エム・ユニット写真2)の構想は創業当初からもっていたのですが、それを収納するケースをどうしようかと、大阪の電気専門の商店街日本橋4丁目辺りをうろついていました。阪大柔道部の大先輩のお父さんが創業された「日本電化工業所」を訪問し、企業の経営の基本についてご教授いただきたいと申し入れたところ、快く受け入れてくださったうえ、「あんたの所でこんなものできるか?」といわれたものがありました。それを何とかしようと作ってくれる会社を探し回ってたどり着いた先に、手先の器用な個人企業の社長がいて、気楽に引き受けてくれました。何とその人の机の上にエム・ユニットのイメージピッタリのプラスチックケースが置いてありました。「それはどこで手に入れましたか?」と尋ねると、自分で設計しプラスチック屋に作ってもらった物だということでした。即刻、その人に受けてもらえる最小ロットを注文しました。この箱が手に入ったことでエム・レスタ®避雷器シリーズを始めエム・ユニット変換器シリーズの商品化に漕ぎつけることができました。
 時代はまさに「高度成長期」で、日本中に巨大な工場の建設が進められ、工業計器市場も勢いよく拡大しエム・ユニット変換器シリーズは2年で2倍の成長を遂げ、エム・システム技研は創業3年目から急成長期に突入し、売上が10年で100倍になり、それはバブル経済が崩壊した1990年まで続きました。そしてエム・システム技研は長屋の一角から現在の本社ビルの建設(1991年完成)にまでたどりつきました。

 それから30年、エム・システム技研の足跡をたどれば次のようになります。
 まずエム・システム技研は計装システムを構成する「工業計器の商品化」を果しました。ここでいう商品とは、いつでも、どこでも、誰でも欲しいときにすぐ手に入るものを指します。エム・システム技研が標準化した工業計器は、写真3 タンシマル
写真3 タンシマル
まさにこの商品の条件を満たしています。エム・システム技研が守る「5つのポリシー」がその様子を伝えています。
①廃形しません
②納期を守ります
③特殊仕様による追加費用は不要です
④救済ワイド補償サービス3年
⑤「設定出荷サービス」の設定費用無料

  ADC(アナログデジタルコンバータ)を内蔵したワンチップCPUが限りなく小さくなり、高性能でしかも通常の電子部品と変わらない価格で入手できるようになった今、次の課題は各種の工業計器を手頃な価格の商品としてお買い上げいただけるような世の中にすることです。それにはまず工業計器と呼ばれている機能を、片手に握れるポケットサイズの便利なケースに収納し、それらをオープンネットワークで繋ぐことで、大部分の計装のシステムソリューションが構成できるようにするもので、かつ、すべての機器はここでいう商品の条件を満たしたものにすることだと思います。これに「タンシマル」(写真3)という愛称を付けました。
 PA(プロセスオートメーション)、FA(ファクトリオートメーション)、BA(ビルディングオートメーション)をはじめ、今や注目の「カーボンニュートラル」に貢献する電力信号を1箇所に集めて、「工場全体の使用電力の見える化」までも今すぐ容易にできる世界を築くために、商品開発を進めています。
  写真4 電動アクチュエータ ステップトップ®
写真4 電動アクチュエータ ステップトップ®
もう一つの大きなテーマとして、依然変わらない空気圧式全盛の制御弁の電動化に挑戦してまいりましたが、まだまだ4000台/年程度の出荷台数で目標には届かない実績しか残せていません。しかしここにきてカーボンニュートラルが叫ばれるようになり、電力を大量に消費する空気源装置が不要になる電動調節弁が各方面で採用され始めました。エム・システム技研の電動アクチュエータは、その駆動源に電流パルスで正逆回転させるステッピングモータを使用し、そのパルス数で回転速度を思いのままにコントロールできます。このバルブアクチュエータのことを「ステップトップ®」(写真4)と呼ぶことにしました。
  「ステップトップ®」の特長は以下のようになります。
❶開度センサに耐久性に優れたコンダクティブプラスチックポテンショメータを使用しています。
❷先進のオートセットアップ機能をご用意しました。
❸便利なオープンネットワークにModbusを採用しました。
❹電源断時の手動操作機能付きです。
❺配線に便利な端子箱付きで、その中に電子回路基板も収納し、本体カバーを開けずに
 チューニング設定ができる上、運転状態表示ランプが外から見えるようにしました。

 このようにして世界中の制御弁の電動化の実現に力を入れております。
 『エムエスツデー』の読者の皆様には、ぜひエム・システム技研の活動にご支持とご声援をよろしくお願い申しあげます。

エム・システム技研本社からあべのハルカス、生駒山を望む


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