エムエスツデー 2020年7月号

ごあいさつ

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

 「遂に後期高齢者の仲間に入ってしまったなあ!」と自覚してから既に10年が経過しました。しかもその上、これから10年先、20年先のエム・システム技研について毎日思いを巡らせて楽しんでいる自分を見出し、「ありがたいことだ」と思っております。

 私は父親と同じ干支の戌年で、私が36歳のとき、父はその倍の72歳でした。自分の人生が後半に入ったことを悟り、準備もそこそこに自立することにして起業し、「株式会社エム・システム技研」という社名で法人登記をしました。最初に手掛けた仕事は、たまたま縁があって新大阪と京都の間にある島本町の水道部の仕事でした。それはエム・システム技研の創業直前まで、「北辰電機」の一社員として水道関係を中心にしたSEの仕事を担当していたことにより、大阪府の村野浄水場や奈良県の御所浄水場、そして奈良市の緑ヶ丘浄水場等に頻繁に出入りをしていたこともあって、浄水場設備についてはそれなりに充分に知得しているつもりでしたので、自信をもってお引受けしました。考えてみればこれがエム・システム技研の最初の仕事となりました。

 今年は、創業以来約半世紀の48年目に当たります。私の楽しみは毎週の如く東京は田町にある当社の関東支店に出かけ、北辰電機のOBや大学の後輩らに声をかけて、昼食を食べながら計装業界を中心にした世間話で盛りあがることです。往復の新幹線から望む富士山は季節や当日の天気で見えたり見えなかったり雲がかかったりで、通過する度ごとに異なり、美しく見えたときには慌ててポケットからカメラを取出して窓越しにシャッターを切るのですが、列車のスピードが速いので殆どが納得のゆく映像になっていません。

 ところで、エム・システム技研はその創業から48年しか経っていないのに、計装の世界はすっかり変わってしまいました。高度成長、バブル経済の崩壊、リーマンショック、東日本大震災、そして今進行中の新型コロナウイルスの大災害です。これらの大きな試練に直面しても、安定した営業成績で通過できる見込みが立てられるのはありがたいことです。

 栄枯盛衰の激しい計装業界にあって、利益幅のある安定した企業体質を維持発展させるのにはそれなりの思考過程と実践が必要になります。その中でも最も大切なのは、エム・システム技研の「社会的信用の獲得」ではないかと思います。そこで次に掲げる7項目を遵守することにしました。

汎用の工業計器メーカーに徹すること。(システム構築や計装工事は全てお客様にお願いして、エム・システム技研は「計装システムを構築するのに必要な計装機器だけを製造するメーカー」に徹すること。)
需要がある限り「廃形」をしないこと(*1)
工業計器の生産は全て日本国内で行うこと。(本社・京都工場をはじめ、100%子会社の「VEMS」社が中心となっています。)
製品は全て標準化し、受注後直ちに生産に着手して最短納期で出荷すること。
全製品の価格を公表し、代理店販売に徹すること。
入出力の信号は全て国際規格に準拠すること。
デジタル通信については、全てオープンネットワークに対応すること。

(*1)ただし、代替の電子パーツを入手できない、あるいはリピートオーダが見込めない場合などは廃形にすることがあります。

 さて、2020年の現在エム・システム技研では新しい試みとして、デモビデオと称する動画の製作に力を入れております。IoT関連の新製品や、高性能な電動式バルブトップの新製品などをお客様に具体的によく知っていただくには、現物に模擬入力を送り込み、その結果現れる動作や現象を具体的に見ていただくデモキットを用意することだと考えました。デモキットは数に限りがありますし、もち運びにも大変な作業がともないます。それではいっそのこと、あらかじめ用意したシナリオにしたがって、デモキットを用いてデモをして、そこに明解な解説を加えた動画を作成した方がより良く解っていただけるのではないかということになり、動画の製作にとりかかりました。初めて取組む作業なのでなかなか思い通りには行きませんでしたが、何とか見ていただけそうなものができ始めました。

 この『エムエスツデー』誌がお手許に届く頃には、5〜6本の動画が完成しているのではないかと思います。ぜひ観ていただいてご感想をお聞かせ願いたいと思います。

廃形をしないエム•システム技研はどこで努力をしているのか!
廃形をしないエム•システム技研はどこで努力をしているのか!
写真1 
廃形をしないエム•システム技研は
どこで努力をしているのか!

 この動画のタイトルの中に廃形をしないエム・システム技研は、どこで努力をしているのか!写真1)と題したものを企画に入れています。そこには全製品の標準化はもちろんのこと、回路の標準化、その回路に使用する部品の標準化の過程についての話が出てきます。電子機器メーカーにとって一番脅威なのは、使用中の部品の廃番と、大きな自然災害などにより標準化して使っている部品が突然入手困難になることです。電子技術の進歩で電子部品はより小さく、より高性能になった新しい部品が発売されると、従来の部品は廃番になります。その対策としてエム・システム技研では、設計部の中に設計変更専門のグループが仕事をしており、最新の部品を使って従来製品と同等の機能、性能をもった製品を設計します。

 設計変更した製品は従来製品と同じ性能試験に合格せねばなりません。その手続きが品質保証に直結するので手を緩めることはできません。そのために必要になるタイプテスト用の設備には、公認の電波暗室やシールドルームなど、多くの設備を社内に設けて設計変更をした製品のタイプテストを遅滞なく行っている姿を動画にまとめました。もちろん部品商社から廃番通知がある度に設計変更が完了するまでの期間を過去の実績を基に割出して、それまでに必要な従来部品を手配して納期を厳守して参りました。

納期を守るエム•システム技研はどこで努力をしているのか!
納期を守るエム•システム技研はどこで努力をしているのか!
写真2 
納期を守るエム•システム技研は
どこで努力をしているのか!

 引続き納期を守るエム・システム技研は、どこで努力をしているのか!写真2)と題した動画も作成中です。納期を守るためには、この標準化された部品をどんなことがあっても確実に調達しなければなりません。標準化して種類を抑え込んだ部品を部品メーカーごとに長い信頼関係のある部品商社から購入しています。各部品の商社に対しては、向こう1年間の需要のフォーキャストを伝えて、しっかりとした納品を獲得しています。近くはタイの大洪水や東日本大震災のときも、部品の調達ルートが頑張ってくれたのと、どうしても入手不可能になった部品に関しては、素早い設計変更で乗切ってきました。この辺りの事情も解りやすい動画にまとめたいと躍起になっています。

 今は新型コロナウイルスによる大災害に見舞われています。今回は手強そうです。しかしエム・システム技研がこれまでに構築してきた生産体制で乗切って行けるものと確信しています。

新幹線から望む富士山


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