エムエスツデー 2019年10月号

ごあいさつ

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

 エム・システム技研では、今年も6月14日から3日間、恒例の社員旅行を実施しました。社員旅行担当部門が具体的な行き先7コース(7班)を提案し、社員各人が参加希望コースを自由に選択できるようにしています。毎年私が参加するのは第1班で、今年のそのコースは、熊本空港を起点に、同一の貸切り観光バスで3日間、九州内を広域観光するもので、初日が修復中の熊本城を見学し、それから貸切りバスと共に観光船に乗り込み、島原半島に移動して雲仙普賢岳に発生した火砕流被害の保存された姿を眺めました。そこは私が高校の修学旅行で訪問した所だけにその姿に深刻な気持ちになりました。
 2日目は雲仙から長崎に移動して平和公園を散策し、グラバー園、大浦天主堂を見学した後、小さな木造の亀山社中跡まで足を延ばして長崎に泊まりました。3日目は引続き唐津までベテランの美人ガイド嬢に詳細に案内され、昼食には活きたヤリイカを細く切ったイカソーメンの名物料理に舌鼓を打って、福岡空港から帰途につきました。明治維新を忍ぶ良い思い出となりました。

 ところで、47年前にベンチャー企業としてスタートしたエム・システム技研ですが、今では中堅の優良企業と呼ばれるところまで成長してきたのではないかと思います。創業時から今日まで電子技術の世界は目を見張る大発展をとげ、トランジスタからIC、LSIそして今では超高密度のCPUが開発され、スマートフォンが巨大市場を形成するまでになっています。

 アメリカではGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)と呼ばれる世界企業が現れ、中国ではBATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)と呼ばれる企業群が巨大化して超高速通信5Gの主導権争いが現実のものとなっています。このように激しく変化する電子技術の嵐の中で、エム・システム技研はいつまでも発展し続けねばなりません。そのためにはユーザーの皆様から「エム・システム技研は工業設備の維持管理には必要不可欠な存在だ」と言っていただける計装機器メーカーになることだと考え、その道に邁進することを決意しました。

 お客様の計装設備がいつまでも安全確実に運転を続けていただくために、「エム・システム技研からお買い上げいただいた製品は、いつまでも廃形(はいがた)せずに作り続けます。」と言い切ることだと考えました。でもこれは「言うのは易し」ですが、実際に行うとなると極めて多くの困難が立ちはだかります。同じ形状、同じ形式、同じ性能の製品を作り続けようとしても、電子技術が日進月歩で進化し続け、信号変換器を始め、エム・システム技研が製造している電子式工業計器に使われている電子部品が小形化、高性能化を繰り返し、その結果、現在使用中の電子部品が廃番となって部品メーカーが供給停止します。また東日本大震災やタイ国の大洪水のような天災で、使用中の電子部品の供給が突然止まることもありました。それでもエム・システム技研は、信号変換器を中心とした電子式工業計器を廃形機種を出すことなく継続して製造を続けて参りました。この「廃形をしない」ということがいつもエム・システム技研製品をご使用いただいているお得意様に対する最高のサービスであり、責任でもあると考えています。

最新のプラグイン形変換器(透過写真)

最新のプラグイン形
変換器(透過写真)
図1 37年前のプラグイン形変換器(透過写真)
図1
37年前のプラグイン形
変換器(透過写真)
 エム・システム技研が創業した1970年代には、「オペアンプ」と呼ばれる便利なアナログICが売り出され、容易に入手できるようになっていました。これで一気に電子回路の小形化ができてプラグイン式の信号変換器(図1)ができあがりました。それから数年の後には、入力回路、出力回路、演算回路などをオーダーメードのハイブリッドICにすることで、部品点数を大幅に削減することができましたし、全機種の内部部品構成がすっかり変わったにもかかわらず廃形を出すことはありませんでした。そして、そこに「チップ部品」が登場し電子部品はまた大幅に小さくなり、表面実装の機械を導入する必要に迫られました。その機械のことを「チップマウンタ」と呼び、部品はリールに納められた形で供給を受けることになりました。いよいよ変換器は人の手では作れなくなりました。そしてそこに使っているチップ部品が毎年小形化されて元の形のチップ部品が廃番になり、供給停止が部品の納入業者から言い渡されます。その結果、製品を廃形することなく作り続けるには、部品のサイズに合わせるためにプリントパターンの変更や、部品リストを含むすべての設計変更が必要になります。エム・システム技研ではこのような部品環境の中で全製品の設計変更を順位をつけて行っています。

 2018年に部品メーカーから供給停止を受けた電子部品の件数は、247件にのぼります。その結果、エム・システム技研が設計変更を行った件数は16,734件でした。しかしながらその間全製品の納期遅延は全く起していません。それを可能にしているのは常時設計変更に当っている回路技術者20名の力です。設計変更といっても新規設計に近いモノもあり、CEマーキングなどをクリアするために性能テストや環境テストを実施することになりますが、そのために関連規格を充たした電波暗室やシールドルームなどが必要になります。

 エム・システム技研では、外部機関などの試験設備を借用したのでは製造キックオフがとても間に合わないので、独自に「京都テクノセンター」(図2)を建設しました。そこには規格を充たした電波暗室(図3)やシールドルーム(図4)を始め、複数の恒温槽や自慢の環境温度可変の振動試験機(図5)などを備えています。実際には新製品の試作品をテストするためにも使用しているので、いずれも100%近い稼働率となっています。
 部品メーカーから部品の供給停止の連絡が入ったときには、その部品を使っている機種の設計変更から性能テストのほか、関連規格に定められたテストが終了までの期間に必要となる部品点数を割り出して、新たに購入手配をかけます。そしてその部品を使い尽くすまでに技術検討・技術検討結果レビュー・評価試験・設計図の変更・設計審査会議を経て、変更内容を生産マスターサーバに登録します。それで一連の作業を終了します。

図2 京都テクノセンター
図2 京都テクノセンター
図3 電波暗室
図3 電波暗室

図4 シールドルーム
図4 シールドルーム
図5 温湿度・振動複合環境シミュレーションシステム
図5 温湿度・振動複合環境
シミュレーションシステム

 このような数多くの努力をしてエム・システム技研は「廃形をしない」を実践しています。このプロセスを、お客様に短時間の内にご理解いただくためのビデオの製作に着手しました。多くのユーザー様や今後ユーザーになっていただく方々にご覧いただき、エム・システム技研の製品を積極的にご採用、ご愛顧いただけるお客様を増やして行きたいと考えております。
 『エムエスツデー』の読者の皆様にも、いずれ近いうちにホームページからご覧いただけるようにいたします。よろしくご公評の程、お願い申しあげます。

グラバー園から長崎港を望む

(2019年10月)


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