エムエスツデー 2016年7月号

ごあいさつ

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

 去る3月の中旬に、「5月2日に阪大・吹田キャンパス内のいちょう会館において、『澪電(れいでん)会ホームカミングデー』が開催される」旨の案内メールが届きました。「澪電会」とは、私の母校である大阪大学の電気系工学部の同窓会のことであり、今を遡る58年前の卒業時に、会の名称「澪電」は大阪市の章(みおつくし「澪」マーク)と、電気を発見したときに用いられた「ライデン瓶」の語感をもじったものだとの説明を受け、同時に同会のメンバーに加えられました。
 その澪電会からは毎年案内が来ますが、何やらむずかしそうな講演会が中心で、顔も知らない教授陣の講演会などがあるようで、今までは出席したことがありませんでした。なお、年会費の領収書代りに送られてくる会報もあまり真面目に読んでいないというか、読んでもよくわからない高度なことが書かれているようなので、つい目次を見るだけで積み上げる結果になっていました。会の役員の方々も多分気が付いていて、このままでは良くないということで、今年からは大学の創立記念日の5月1日に合わせて行われている「いちょう祭」(いちょうの葉は阪大のマークに使われています)に相乗りの形で、その翌日の5月2日に澪電会を開催することにしたそうで、今年は卒業後初めて吹田キャンパスを訪問することにしました。

「2016年度 いちょう祭」パンフレット  当日はよく晴れて快適な日和でした。キャンパス内の食堂で学生達に混じってセルフサービスで何とか昼食にありつくことができました。母校がこんなに広大で立派な学舎になっているのに驚きましたが、それは卒業後半世紀以上経ったのだからと納得しました。
 校内の教室では、学生達が現在研究中のテーマの一部を、手作りの解説板を壁に掛けて、見学者に何かを体験させるブースを教室毎に出していました。電子工学の教室では「ヒヨシジャンプ」なるものを展示していました。そこでその「ヒヨシジャンプ」を体験させてもらうことにしたのですが、そのブースに用意されていたのは、頭からスッポリかぶると眼前に立体映像が現れるゴーグルのようなもの(彼らはハコスコと呼んでいました)で、そのハコスコを顔面に装着すると、あたかも陸上競技場に居るような実感を受けました。そしてそのままの形で、その場で数cmジャンプするのが「ヒヨシジャンプ」というものだそうです。まあちょっと飛び上がるだけなのですが、目の前に見える競技場が勢いよく下方に下がってゆき、あたかも自分が数十メートル飛び上がったような体感をするのです。そして間もなく下降に転じて着地しました。一瞬「危ない!」と身を硬くしましたが、元どおりの景色になっただけで別に何も起こりませんでした。学生の解説では、ハコスコの中に加速度センサが埋め込まれていて、ドローンで撮影した360度映像と連動させて空中飛翔の体験をさせてくれたものだったのだそうです。
ダンボール製ビューワー「ハコスコ」(株)ハコスコ様 Webサイト(http://hacosco.com)から引用  この「ヒヨシジャンプ」は利用価値がありそうな技術だと思ったので、関係者と名刺を交換して連絡先を教えてもらいました。その日の夕方帰宅してみると、関連情報のメールがすでに届いていて、2度ビックリしました。改めて自分達がインターネットの時代に棲んでいることを体験させてもらうことができました。

 エム・システム技研は、今から44年前に計装システムに多用される信号変換器のメーカーとしてスタートしましたが、その後計装用変換器や表示計器、PIDコントローラなど、守備範囲を拡げ、DCSとセンサ、操作端を除くほとんど全ての工業計器の商品化を進めることによって発展してきました。いわゆるPA(プロセスオートメーション)を守備範囲として品揃えを進めてきたつもりでしたが、いつの間にかFA(ファクトリーオートメーション)の世界に市場が拡がっていました。今では、意識的にBA(ビルオートメーション)に必要な機器群の品揃えを進めています。
 時代が変わり高度成長は昔話となり、今ではオートメーション設備の分野は既設設備のメンテナンスの省力化が大きなテーマになっています。
 この様子を神様が見ていたのかと思いたくなるようなタイミングで、920MHz帯の無線電波が工業目的に解放・利用され、エム・システム技研では、いち早くこの周波数帯域の電波で交信する無線式リモートI/O「くにまる®」を開発し、発売しました。
 この「くにまる®」の構成は、複数の子局とそれらに対し親局機能をもち、かつ子局に入出力する計測信号を集めてModbusに乗せる機能をもった親局ユニットからなります。信号の伝送距離は見通し1kmとなっていますが、マルチホップ機能を備えていますので、他の子局間との距離が1km以内であれば、その子局を中継局として通信接続ができるようになっています。通常の工場内であれば、屋内屋外を問わず信号伝送が正常に行えます(1kmを超える計測点の場合は、3kmまで届く簡易無線テレメータや、35kmまで届く351MHz帯の電波を使ったデジタル簡易無線テレメータもご用意しています。お問合せください)。
 この「くにまる®」を構成する各ユニットは、単価が5〜8万円に設定されており手軽にご利用いただけます。もちろん、無線ですから信号伝送用ケーブルの配線工事は不要で、センサの近くに子局を取付けるだけでその場ですぐに実働運転に入ることができます。この手軽さは、現在運転中のどこの生産現場でも、今まで巡回、点検、操作を行っていた作業が全て、居ながらにして行えるリモートメンテナンスが実現する環境になるほか、現場の稼動状態の監視作業も大幅に省力化されることになります。中でも現場に分散設置された配電盤の電力値や電流値を集中監視することで、節電作業が容易に行えることになりますので、このところお客様から電力管理目的の「くにまる®」のご注文が顕著に増加しています。
 こうして見てきますと、「くにまる®」の出現は、普段見落としがちな生産現場のユーティリティ設備の集中管理を経済的に手軽に行えるため、期待以上の成果をもたらすのではないかと思われます。
 このようにして集めたリアルタイムの計測情報を、インターネットを通じて別の管理本部で一元管理したり、ビッグデータ処理をすることで、今まで見えなかった多くの問題点をピックアップすることができるとすれば、いわゆるIoTの効果が得られたということになるのではないかと思います。

「くにまる®」を用いたワイヤレスモニタリングシステム

 IoTとかIndustry4.0が次なる生産革命を牽引するのだといわれていますが、エム・システム技研の有線・無線を問わず、オープン化された通信機能で構成された汎用工業計器、汎用通信機器が使用されることで、近い将来「IoT化が進展して工場の作業性が大幅に改善した」というお客様の喜びのお声が聞ける日を楽しみにしております。

ヤンマースタジアム長居(長居陸上競技場) 空撮

(2016年7月)


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