規格/標準

エムエスツデー 2010年7月号

計装豆知識

ATEX指令 −CEマーキング−印刷用PDFはこちら

今回は、「ATEX指令」の要求事項や適合条件についてご説明します。

前回(『エムエスツデー』誌2010年4月号)のEMC指令および前々回(同誌2010年1月号)の低電圧指令に引き続き、CEマーキングに関する話題です。

今回は、爆発性雰囲気の中で使用される機器(防爆機器)に適用されるATEX指令注1)について解説します。指令の正式名称は、“Directive 94/9/EC of the European Parliament and the Council of 23 March 1994 on the approximation of the laws of the Member States concerning equipment and protective systems intended for use in potentially explosive atmospheres”です。

現在のATEX指令“94/9/EC”は、以前の爆発性雰囲気で使用される電気機器に関する指令“76/117/EEC”、“79/196/EEC”および“82/130/EEC”に代わって2003年7月1日に発効しました。新しい指令の特徴は、電気機器だけでなく、非電気機器も対象に含まれていることです。そのためHarmonized Standards注2)と(整合規格)のリストの中には、CENELEC(Comité Européen de Normalisation Electrotechnique)規格だけでなく、CEN(Comité Européen de Normalisation)の規格も含まれています。

ATEX指令の要求事項 

図1 ATEX指令適合ロゴマーク

指令の要求事項は、Annex II(付属書 II)に記載されています。低電圧指令やEMC指令とは異なり、比較的具体的な内容が含まれていますが、本稿では割愛します。なお、その中で特徴的な要求事項について以下に挙げます。

第1は、ロゴマークの貼付で、CEマーク以外に図1のようなロゴの貼付が義務づけられています。このロゴは、現在のATEX指令に置き換えられる以前から使用されていました。

第2は、EU(欧州連合)公用語の一つで書かれたオリジナルの取扱説明書に加えて、機器が使用される国の公用語で書かれた取扱説明書を同梱しなければならないことです。

ATEX指令の適合条件

指令適合の条件は、防爆機器のGroup(グループ)とCategory(カテゴリ)によって異なります。

グループはIとIIに分類され、グループIは、炭坑の主に地下部分で使用される機器で、グループIIはグループI以外の機器です。

カテゴリはM1、M2、1、2および3に分類されます。カテゴリM1およびM2はグループIの機器に適用されます。M1は、まれにしか発生しないような事態でも爆発を防ぐ機能が働く必要があります。M2は、爆発性雰囲気が生じた場合には電源を遮断する構造です。

カテゴリ1、2および3はグループIIの機器に適用されます。1は、爆発性雰囲気が連続的、長時間または頻繁に存在する場所で使用される機器です。2は、爆発性雰囲気が時々発生するような場所で使用される機器です。3は、爆発性雰囲気がまれにしか発生せず、発生しても短時間しか存在しない場所で使用される機器です。

それぞれのカテゴリに適用される指令適合条件を図2に示します。図に示すように、ATEX指令ではカテゴリにより適用されるModule(モジュール)が異なります。なおモジュールは、製品にCEマークを貼付するための認証手続きの種類を示し、その内容詳細については、『エムエスツデー』誌2005年5月号「計装豆知識」をご参照ください。

 

図2 ATEX指令におけるCEマーク貼付手順

 

注1)指令には「ATEX指令」という言葉は出てきませんが、本指令に対してEU政府が発行しているガイドが“ATEX guidelines”という名称であるため、本稿でも「ATEX指令」と表記します。なお、“ATEX”という言葉は、フランス語の“Atmosphères Explosibles”に由来しています。
注2)指令適合に整合規格は必須ではありません。
注3)認証機関の責任の下で出荷時の検査が行われます。
注4)製造業者が作成した規格適合証明のための技術文書が、認証機関によって認証される必要があります。

〈参考文献〉
http://www.europa.eu/
・Guide to the implementation of directives based on the New Approach and the Global Approach
・ATEX guidelines

【(株)エム・システム技研 設計部】

ページトップへ戻る