変換器

エムエスツデー 2004年12月号

計装豆知識

変換器の仕様書の読み方について(12)

ハウジング材質印刷用PDFはこちら

1年間続けて参りました「変換器の仕様書の読み方について」は、今月をもって終了となります。最終回は、変換器の「ハウジング材質」についてご説明します。

1.ハウジング材質

エム・システム技研製変換器のハウジング材質は、その大部分にエンジニアリングプラスチックと呼ばれる高機能樹脂を使用しています。製品の用途に応じて、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)など、各種の樹脂を使用し、仕様書には、「難燃性黒色樹脂」と記載しています。

2.難 燃 性

「難燃性黒色樹脂」という名称の「黒色」の部分は、単純に色を示しているだけです。したがって、ここでは「難燃性」にスポットを当ててお話ししたいと思います。

樹脂の難燃性を評価する規格の一つとして、UL94(機器の部品用プラスチック材料の燃焼性試験)があります。この規格は、米国の民間機関であるUL(Underwriters Laboratories Inc.)が制定し、これに基づいて承認を行っている、電気機器などに関する安全性の規格です。UL94では、成形材料の燃焼試験方法とその結果に基づくランク付けを示しています。燃焼試験方法は、6種類定められていますが、ここでは「水平燃焼試験」と「20mm垂直燃焼試験」をご紹介します。

水平燃焼試験は、短冊状の試験片を水平に置いて燃焼させ、その燃焼が進む速度で合否判定するものです。試験片の厚みに応じて、燃焼速度の合格基準には40mm/分以下と75mm/分以下の2種類があります。この試験に合格した樹脂の難燃性は“HB”クラスに分類されます。HBクラスの樹脂は、燃焼速度を基準に試験を行っているため、炎から離れると燃焼が止まる“自己消火性”を考慮していません。

20mm垂直燃焼試験は、5本の試験片を用いて判定します。図1に示すように垂直に支持した短冊状の試験片の下端にバーナー炎を当てて10秒間保ち、その後バーナー炎を試験片から離します。 炎が消えれば、直ちにさらに10秒間バーナー炎を当て、再度バーナー炎を離します。1回目と2回目の接炎終了後の有炎燃焼持続時間、5本の試験片の有炎燃焼持続時間の合計、2回目の接炎終了後の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼持続時間との合計(すなわち、火種の保持時間)、クランプ位置までの燃焼の有無、ならびに燃焼滴下物(ドリップ)による綿の燃焼の有無で判定します。

ランクは、難燃性の高いものから順に、V-0、V-1、V-2となっています。なお、判定基準は図1を、また規格の詳細につきましては、UL94をご参照ください。

図1 20mm垂直燃焼試験

エム・システム技研の変換器に使用しているハウジングの材質としては、一部を除いて、「20mm垂直燃焼試験」の要求事項に適合している樹脂を採用しています。これらの樹脂は、高い難燃性と、炎から離すと樹脂の燃焼が止まる「自己消火性」をもっています。

またエム・システム技研では、環境保護の観点から、プリント配線板も含めて、臭素系難燃剤を含んだ材料の全廃に取り組んでいます。

【(株)エム・システム技研 開発部】


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