エムエスツデー 1996年3月号

計装豆知識

流速計による流量測定方法印刷用PDFはこちら

流量計は、一般に口径が大きくなると、急激に価格が上がります。したがって、大口径管路の流量を測定するとき、流量測定に要する費用は相当多額になります。高精度の測定を行う必要があるときは、これはやむを得ないことですが、さほど測定精度を必要としない場合には、流速計を使用する方法が現実的な選択の1つとなります。また、流速計を使用する方法は、流量測定に伴う圧力損失が少ないので、省エネルギーにもなります。

管路内の1点の流速を測定して、全体の流量を求める場合には、まず管内の流速分布について知らなければなりません。

管路内の流速分布

管路内の流速分布は、流れが十分な直管部分を通ったあとでは、中心対称の流れとなります。また、流速が遅いときは流体の分子が層状となって整然と流れますが、流速が速くなると流体の分子が入り乱れた状態となります。前者を層流、後者を乱流と言い、この分かれ目は式(1)で定義されるレイノルズ数によって決まります。

式

円管内の流速分布

層流から乱流に移るところは、レイノルズ数が2,000~4,000の間にあります(気体、液体、蒸気とも同じ)。

乱流の場合、管路内の流速分布は、下記の指数法則の式に従います。

式(2)

ここで、Vmax は管中心の流速、Vx は管中心からγx の位置にある点の流速、R は管の半径です。

式(2)のn は、前述のレイノルズ数RD の関数であり、実験により求められています。これを表1に示します。このnの値を使用して、式(2)を図化したものを右図に示します。

表1 レイノルズ数RDnとの関係   表2 平均流速点の位置
RD n
4 × 103 6.0
2.3 × 104 6.6
1.1 × 105 7.0
1.1 × 106 8.8
2.0 × 106 10.0
3.2 × 106 10.0
 
n (Rγxm ) / R
6 0.245
7 0.242
8 0.240
9 0.238
10 0.237

平均流速点の位置

上記のデータより、平均流速と中心流速の比や、平均流速が得られる位置(平均流速点)を求めることができます。後者の結果を表2に示します。ただし、γxm は平均流速点の管中心からの距離です。

これを見ると、レイノルズ数すなわち流速が大幅に変わっても、平均流速点の位置はあまり変化しないことがわかります。つまり、管壁から管直径の12%の位置に流速計を挿入すれば、おおむね平均流速を知ることができます。

ただし上記の方法は、流速分布の乱れがないことが前提となっています。したがって、流速計の上流側に弁や曲がりがある場合には適用困難です。そのときは、複数の流速計を使う方法がありますが、これについては別の機会に説明します。

(引用文献)
1)松山 裕:実用流量測定、省エネルギーセンター(1995)


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