2006-2007 計装豆知識
- 機能安全とIEC規格61508について(1)/2007.12
- タッチパネル/2007.11
- パネル計器の裏側の感電保護/2007.10
- BACnet(2)/2007.9
- BACnet(1)/2007.8
- 避雷器の寿命/2007.7
- バルブポジショナのパワーアップ/2007.6
- バルブアクチュエータのフェールセーフ/2007.5
- IECExスキーム/2007.4
- CBスキーム/2007.3
- リアルタイムOS/2007.2
- 2線式変換器について(その2)/2007.1
- 2線式変換器について(その1)/2006.12
- 温度センサ:サーミスタ/2006.11
- DNS(Domain Name System)/2006.10
- 落雷と誘導雷/2006.9
- パルス列信号の注意点/2006.8
- バルブアクチュエータ 空気式と電動式の比較/2006.7
- 電力の基礎(2)/2006.6
- 電力の基礎(1)/2006.5
- 直列接続形電源用避雷器の特長/2006.4
- 電気回路/2006.3
- 熱電対用補償導線と現場設置形2線式変換器/2006.2
- 避雷関連のJIS規格について/2006.1
エムエスツデー 2007年6月号
バルブポジショナのパワーアップ
プロセスオートメーションにおいて調節弁を駆動するために使用されるバルブアクチュエータには、調節弁のサイズに対応して大小様々なサイズの製品があります。なお、同じサイズの調節弁でも流体の圧力に対応してバルブアクチュエータに要求される動力性能が異なります。
また、同じサイズ、同じ流体圧力の調節弁であっても、アプリケーションによっては必要な開閉速度が異なり、それに応じてアクチュエータに要求される動力性能が異なってきます。
一方、制御ループの設定値に比例して調節弁の開度を制御するバルブポジショナは、メーカー間の差異や、同一メーカー内では、たとえばインテリジェント形やフィールドネットワーク対応形あるいは防爆形といった付加的な機能による差異があるものの、バルブアクチュエータのサイズに対応して種々の製品をラインナップしている例はあまり見かけられません。
しかし、これはバルブポジショナが万能であることを意味するものではありません。バルブポジショナのバルブアクチュエータを駆動する能力は、バルブポジショナのメーカー(同時にバルブアクチュエータのメーカーである場合も多々あります)が、バルブアクチュエータのサイズ別の市場規模を考慮に入れて決定しています。したがって、大形や高速のバルブアクチュエータをバルブポジショナで直接駆動すると、能力不足に陥ることがあります。
このような場合に、バルブポジショナがもつバルブアクチュエータ駆動能力の不足を補う役割を担っているのが、空気式アクチュエータの場合にはボリュームブースタリレーであり、電動式アクチュエータの場合には外付けのリレーまたはソリッドステートリレー(SSR)です。
空気式、電動式いずれにも「リレー」という言葉が用いられているように、バルブポジショナの出力を、バルブアクチュエータを駆動するのに必要な空気流量または電力として、「リレー」、つまり中継出力します。
ボリュームブースタリレーは、ボリュームブースタまたはブースタリレーとも呼ばれ、その名のとおり、空気流量をブースト(増幅)します。図1にボリュームブースタリレーの例を示します。
バルブポジショナの空気出力流量は、供給圧力が140kPa においては100Nl /min 前後、500kPa 前後においては200~500Nl /min 程度であることが多く、大容量のバルブアクチュエータでは動作速度が遅くなります。
図1に示したボリュームブースタリレーの例では、これを140kPa では500~600Nl /min、500kPa では1000~1200Nl /min に増幅することによって、バルブアクチュエータの動作速度を速くすることが可能になります。
電動バルブアクチュエータを駆動する電電ポジショナの出力仕様をエム・システム技研の製品を例に説明しますと、SSR 内蔵形の場合には、出力は130~280VA です(詳細は、製品仕様書を参照)。
SSR 外付け形の場合は、出力は外付け SSR を駆動するのに必要な出力しか内蔵されていませんが、駆動する電動アクチュエータに応じて外付けの SSR を選択できます。また、駆動電力を増幅する目的だけでなく、電動アクチュエータの電源の種類に応じて、単相用や三相用の SSR を選択することもできます。
図2にエム・システム技研の SSR 外付けタイプの電電ポジショナ(形式:MEX-C)を示します。