エムエスツデー 2006年3月号

計装豆知識

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今回は、電気を取り扱う場合の基本的な技術である電流と電圧の測り方について、電気回路を視覚的にイメージしやすい水の流れに対比しながら解説します。

回路について

電流は導体でつながれた通路(回路)を流れます。水は配管でつながれた流路の中を流れます。弁は閉じると水が流れなくなり、弁を開けると水が流れます。スイッチは開くと回路に電流が流れなくなり、閉じると回路に電流が流れます(電気と水では開閉が逆の表現になる点には注意してください)。閉じた回路に電流が流れるので、閉回路と呼ばれることもあります。

電流について

図1(a)に示すように、乾電池の+端子と−端子の間に電線を通じて豆電球をつなぐと、豆電球は点灯します。これは電線を通じて、豆電球に電流が流れたためです。一般に、電流は電荷の移動によって生じると考えられています。

図1

電流の方向

電流は電荷の移動によって生じるため、電荷の移動する方向によって電流の方向を次のように決めています。

正電荷が移動する場合は、移動する方向を電流の方向とします。負電荷が移動する場合は移動する方向と反対の方向を電流の方向とします。

正電荷を水と考えると水の流れる方向が電流の流れる方向と同じになると考えられます。

電流の大きさ

(1)式

電流の大きさは単位時間当たりに移動する電荷の量によって決めています。電流の大きさを表す単位にはアンペア(単位記号A)を用います。1Aは1秒(s)間に1クーロン(C)の割合で電荷が移動する電流の大きさと定義されています。

すなわち、t 秒間にQ クーロンの割合で電荷が移動しているときの電流 I アンペアは(1)式で表されます。

(2)式

移動する電荷の量が時間的に一定でないときは、ある時刻から微少時間 Δt (s)経過する間に移動した電荷 Δq (C)をとり、その時刻の瞬時電流 i (2)式のように表します。

電流計のつなぎ方

豆電球に流れる電流を測定することは、配管に流れる水の流量を測定するのに対比できます。

流量測定に際しては、配管と直列に流量計を取り付ける必要があります。豆電球の電流を測定するときも同様に電流計を豆電球に対して直列に接続してください。

このようにすれば、豆電球と同じ電流が電流計に流れるため、電流計の指示は豆電球に流れる電流を示します。

抵抗について

抵抗は流れを妨げる動作をします。電気の抵抗をとくに電気抵抗と呼んでいます。

配管も細くしたり絞りを設けて断面積を小さくすると水が流れにくくなるので抵抗になります。配管が太いと抵抗が小さく水が流れやすいのと同様に、電線も太いと抵抗が小さくなり電流が流れやすくなります。

(3)式

電線としては一般に銅やアルミニウムのような電気の流れやすい金属が用いられます。電流の流れやすさを示すのが抵抗率と呼ばれる係数で ρ(Ω・m)で表されます。

抵抗率がρ(Ω・m)の導体で長さ L(m)、断面積が S (m 2 )の電線の抵抗 R (Ω)は(3)式で表されます。

電圧について

配管に流れる流量を増やすには、抵抗を減らす方法とは別に水圧を上げる方法があります。この水圧に相当するのが電圧です。

オームの法則

(4)式

ここまでに説明した電流(I )と抵抗(R )と電圧(E )の関係を簡潔にまとめたものが有名なオームの法則です((4)式)。

電圧計のつなぎ方

豆電球に加わっている電圧を測定することは、水圧を測定するのと同じなので、測定対象に対して並列に圧力計を接続する必要があります。電圧を測定するときも同様に電圧計を測定対象に対して並列に接続してください。

このように接続すれば電圧計の両端に豆電球と同じ電圧が加わるので、電圧計は豆電球に加わっている電圧を示します。

なお図1(a)で、電流計の抵抗は豆電球の抵抗に比べて格段に小さく、電池電圧の大部分が豆電球に加わっていると考えられます。

誤配線の注意

直流電流や直流電圧を測定する計器には+と−の端子があり、計器を接続するときは+端子には+側を−端子には−側を接続するようにしてください。

電流計を電圧計のように接続すると電流を測定できないだけでなく、電流計はできるだけ抵抗を小さくして電流が流れやすいように作られているため、電流計自体に大きな電流が流れ焼損させることがあります。

また、電圧計を誤って電流計のように接続すると、目的の電圧を測定できないだけでなく回路に流れる電流を大きく制限してしまいます。

【(株)エム・システム技研 開発部】

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