エムエスツデー 2000年10月号

計装豆知識

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CTの問題点

交流電流を一次導体から絶縁して計測する方法として、現在、CT(変成器)が一般に使用されています。CTには、一次導体周辺に発生する磁束を集束して感度を高める目的で磁気コアが必要であり、コアに磁性体を使用しているため、次のような問題が存在します。
 • 高周波領域での磁気損失によるCTの発熱。
 • 大電流領域での磁気飽和を防止するため、CTが大型化する。
 • 電流パルスなど非正弦波を扱うと、周波数特性の限界から正確な電流波形が得られず、その結果正確な電流測定ができない。

ロゴスキーコイル

図1 ロゴスキーコイル

交流電流の測定にあたり、磁界の検出にコアを使用することなく電流を検出するセンサがロゴスキーコイルです。図1に示すように、一次導体周辺に空芯のコイルを設置すると、一次電流に対応した電圧がコイルの両端に誘起します。この電圧は一次電流の微分波形になっているため、積分器を通すことで一次側の電流波形を再現できます。このコイルはドイツの電気工学者であるロゴスキー(Rogowski)によって考案されたものです。

 

コアレス電流センサコイルの特長

コアレス電流センサには、以下のような特長があります。
 • 30~3000Aの電流計測に対応。
 • 4Hz~10kHzという広い周波数領域での電流計測が可能。
 • 正弦波はもとより、非正弦波の交流電流も高精度に計測。
 • 磁気損失による発熱、飽和、ヒステリシスがない。
 • 原理的に分割構造化が容易。
 • 大電流計測では、一般のCTと比較して格段に小形、軽量。

コアレス電流センサの応用

図2 広帯域大電流変換器(形式:CTS)

このような特長を有するコアレス電流センサを用いて、エム・システム技研では、新形の変換器(広帯域大電流変換器 形式:CTS図2参照)を開発し、発売しました。

汎用インバータ出力にも対応できるように、4Hzまでの低域周波数特性を保証しています。また、一次導体への脱着も容易な構造になっていますから、太い電線の処理が不要であり、計測器を追加設置する場合にも通電停止の必要はありません。

このセンサの応用として、下記のような目的での使用が可能です。
 • プラズマ電流の計測
 • 各種放電電流の計測
 • 雷電流の計測
 • 溶接機電流の計測
 • 超伝導機器の評価用電流計測
 • パワーパルス発生器の計測

【(株)エム・システム技研 開発部】


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