1993-1995年計装豆知識
- 湿度の計量単位/1995.12
- 濃度の計量単位/1995.11
- クロスリミット制御/1995.10
- 配管用ねじと空気用継手/1995.9
- 圧着端子/1995.8
- 接点保護の常識と落とし穴/1995.7
- SI単位の話(3)/1995.5
- SI単位の話(2)/1995.4
- SI単位の話(1)/1995.3
- CEマーキング/1995.2
- 高速応答形の変換器はハイグレードか/1995.1
- キャビテーション/1994.12
- 電空変換器には、0.01ミクロンのフィルタを/1994.11
- PID調節計と調節弁の正/逆の組合せ/1994.10
- 警報接点のフェールセーフ(Fail-safe)/1994.8
- ジルコニア式酸素濃度計の話/1994.7
- PTですか、VTですか?(計器用変圧器の略称について)/1994.6
- カルマン渦の話/1994.3
- 変換器の基準精度と許容差/1994.2
- 工業計器の生産・受注規模の動向/1994.1
- データ伝送速度の単位“bps”と“ボー”/1993.11
- 4~20mA DC電流信号/1993.10
- 終端抵抗/1993.9
エムエスツデー 1995年2月号
CEマーキング
CEというと、開発作業を効率化するコンカレント・エンジニアリングのことと思われるかもしれません。しかし、マーキングと付くと、それとは違います。これは簡単にいうと、EU(欧州連合)域内で特定の製品を販売する際、その製品の安全性を保証するマーキングを貼付させる制度なのです。CEという名称も、EUの前身ECのフランス語読みに由来しています。これまで各国ばらばらに制定してきた安全にかかわる規制を、EU内で統一しようという意図です。この制度は、最近話題のPL法とも、また広い意味でISO 9000とも関連しています。
特定の製品と言いましたが、これには産業機械、圧力容器、医療機器から玩具に至るまで、およそ人間の安全に関係しそうな製品はすべて含まれます。製品の安全性を保証するにはEC委員会が定めるEC指令に適合する必要があります。この指令は現在16種類制定されており、まだ増える見込みです。信号変換器は、電磁波を出す製品として、EMCに関するEC指令に適合する必要がある点、注意を要します。EMCとはElectromagnetic Compatibilityの略称で、「外部に有害な電磁波を出さず、また外部の電磁波によって影響を受けない」ことを意味します。
ISO 9000と異なりCEマーキングは強制的な制度ですから、これがない製品はEU域内で販売できません。強制化の時期は製品によって異なり、玩具類は1990年からすでに実施されています。EMCは1996年1月ですが、1995年半ばにヨーロッパに輸出する製品にはCEマーキングがないと、代理店で在庫中に期限が来てしまうかもしれません。
このように、CEマーキングはビジネスに重大な影響をもつ規制であるのに、なぜか最近まで日本の情報メディアの関心を呼びませんでした。CEマーキングの解説記事が、新聞や専門誌に載るようになったのは、つい数ヶ月前のことです。強制化の実施時期が過去に何回か延びた実績があるので、皆が「今度もまた延びるに違いない」と期待したのか、あるいはISO 9000フィーバーに気を取られていたためかもしれません。
昔と違い、今日のビジネスは国際的に関連しています。「うちはヨーロッパに輸出しないから」と放っておくと、ヨーロッパ以外の国から「CEマーキング付き」という注文が舞い込むかもしれません。
CEマーキングを取得するには、EUの認定機関で製品を審査してもらう方法とメーカーが自社で製品を調べ、規格に適合していることを「自己宣言」する方法があります(自己宣言が許されない製品もあります)。自己宣言は簡単そうですが、自社で大丈夫と思っても、EU市場内で競合メーカーに「あれは規格外製品ではないか」と行政当局に訴えられると強制的に検査され、その結果不合格となれば市場から追放されます。国によっては、そのうえ高額の罰金を課されるのです。EU域内の公的機関に製品を審査してもらうのは、日本の企業、ことに中小企業にとっては大変な負担です。見方によっては、EUの実質的な非関税障壁とも言えましょう。
エム・システム技研はこのような困難を乗り越え、オランダの公的機関からCEマーキングを取得すべく、現地代理店と協力して作業を急いでいます。そのうち、CEマーキングの施されたエム・システム技研製品が、国内市場にも登場することでしょう。
図 CEマーキング