エムエスツデー 1994年12月号

計装豆知識

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バタフライ弁におけるキャビテーション現象

プラントの水配管中で開度を絞った状態でコントロールバルブを使用すると、内部の流水の音が騒がしく聞こえ、バルブや配管が振動する現象を経験された人は少なくないと思います。そしてこれは、キャビテーション現象によるものだということも、すでにご存知のことでしょう。キャビテーションは、流動している水などの液体の圧力が局部的に低下して、蒸気や含有気体を含む泡が発生する現象を言いますが、この泡の発生・崩壊に伴って管路壁やバルブの接液部に大きい力が加わり、損傷を生ずる原因になるものです。

水の圧力が低下すると、なぜ泡が発生するのでしょうか。まず考えられることは、水には圧縮応力には強いが引張応力には弱くすぐ離れてしまう性質がありますので、流れの中に水圧がゲージ圧で0(またはそれ以下)になる箇所があれば、空洞ができる可能性があります。つぎに、水が沸騰する温度は圧力が下がると低くなります(水柱0.125mの圧力下では10℃で沸騰)ので、常温付近でも沸騰して蒸発することがありえます。また、水の温度を上げるか圧力を下げるかしていって、空気溶存の飽和状態にまで達すると、余分な空気を吐き出してしまうことになり、これによっても泡をつくり出す可能性があります。これらが総合されてキャビテーションの泡になるのだと言われています。

ところで、圧力が下がってできたキャビテーションの泡は、再び圧力の高いところに移動すると収縮し消滅してしまう運命にあります。このときに泡の収縮が急激に行われると一種の衝撃圧力が発生します。この衝撃圧力の瞬間的最高値は、理論的に計算した人によれば数百気圧、あるいは数千気圧にもなるということです。キャビテーション現象を起こした状態で使用するとバルブやパイプなどの内面が損傷を受けるのは、この衝撃圧力のせいだと考えられています。

キャビテーション現象による損傷を免れる方法については、損傷のメカニズムがわかればいろいろとアイデアが湧いてきますし、そのいくつかは実用化もされています。たとえば、キャビテーションの泡が発生しにくい構造にする、泡が発生してもそれが構造物の壁から離れた水中で消滅するような構造にする、キャビテーション浸食に対して強く、損傷を受けにくい材料を使用する、などがありましょう。限られた領域では耐キャビテーション性に優れていると言われる製品も少なくはないようですが、厳しいキャビテーション現象の起きやすい状況を極力つくり出さないようにするのが、一番いい方法なのかも知れません。


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