1993-1995年計装豆知識
- 湿度の計量単位/1995.12
- 濃度の計量単位/1995.11
- クロスリミット制御/1995.10
- 配管用ねじと空気用継手/1995.9
- 圧着端子/1995.8
- 接点保護の常識と落とし穴/1995.7
- SI単位の話(3)/1995.5
- SI単位の話(2)/1995.4
- SI単位の話(1)/1995.3
- CEマーキング/1995.2
- 高速応答形の変換器はハイグレードか/1995.1
- キャビテーション/1994.12
- 電空変換器には、0.01ミクロンのフィルタを/1994.11
- PID調節計と調節弁の正/逆の組合せ/1994.10
- 警報接点のフェールセーフ(Fail-safe)/1994.8
- ジルコニア式酸素濃度計の話/1994.7
- PTですか、VTですか?(計器用変圧器の略称について)/1994.6
- カルマン渦の話/1994.3
- 変換器の基準精度と許容差/1994.2
- 工業計器の生産・受注規模の動向/1994.1
- データ伝送速度の単位“bps”と“ボー”/1993.11
- 4~20mA DC電流信号/1993.10
- 終端抵抗/1993.9
エムエスツデー 1993年10月号
0~10,000Vの電圧信号よりもノイズに強い
4~20mA DC 電流信号
計装用統一信号に電流信号が用いられるようになったのは、空気圧信号に比べ応答遅れがないこと、めざましい進歩をとげる電子技術を駆使した受信計器やコンピュータと組み合わせてシステムを構成する必要からであることは間違いありません。しかしそれだけでなく、4~20mA DCのような電流信号を用いれば、電力設備が発する大きなノイズ電圧に対しても、非常に安定した高い精度で伝送できる点も見逃すわけにはいきません。
ノイズの及ぼす影響
簡単な計算で、そのノイズに対する強さの目安が得られるので紹介しましょう。
電圧信号0~10Vの伝送ラインに10Vのノイズが乗ったとすると(図1上)、受信電圧としては信号電圧に匹敵するノイズ電圧が現われる結果になります。電流信号4~20mA DCを伝送するラインに10Vのノイズ電圧が発生した場合を考えてみましょう(図1下)。
電流出力形変換器の出力端子からみた変換器の抵抗値は通常1MΩ以上で、5MΩ程度あるのが普通です。したがって受信抵抗250Ωにノイズ電圧10Vによって流れる電流値は、I(A)=V(V)/R(Ω)より
I=10(V)/10 6(Ω)=10 -5(A)=0.01(mA)
となります。その結果、ノイズは信号20mAの1/2,000以下で、まったく測定上問題にならないことがわかります。10Vのノイズ電圧が1/2,000しか影響しない電圧信号は10Vの2,000倍、すなわち0~20,000Vということになります(ただし、ノイズ電圧が電流出力形変換器の出力回路にあるトランジスタの耐圧限界35V以下であることが必要です)。
動力関係信号との対比
電力計測用の信号を考えた場合、PTの出力0~150V ACでさえ4~20mA DCに比べたら比較にならないほどノイズに弱い信号であるといえます。ましてCTの出力になると、回路抵抗が低いのと許容回路抵抗値が低いので、遠隔指示が難しく、これらの集中管理には正確に4~20mA DCに直接変換できるM・UNIT変換器が有効に活躍します。
信号レベルとリード線
電流信号がノイズに強いことを裏付ける例として信号レベルとリード線との関係があります。0~10mV DCの電圧信号は数mリード線を引くだけでも、シールド線を用いたうえに1点接地する接地点を正しく選ばなければ正確な計測は難しく、0~1V DCでも配線にはシールド線を用いる必要があります。
それに対し、4~20mA DCの電流信号はNTTの専用回線(心線は細く、シールドもしていません)を用いて、はるか彼方の受信地点での計測を正確に行えます。
電流信号の伝送距離
電流信号の場合、許容負荷抵抗が示されています。M・UNITは0~750Ωとなっています。これは信号伝送ケーブルに許される抵抗値のことで、通常のケーブルですと10~30kmにあたります。
0.55φケーブル | 100Ω/km |
1.25φケーブル | 約18Ω/km |
2.05φケーブル | 10Ω/km |
(いずれも往復の抵抗値です) |