エムエスツデー 2020年10月号

お客様訪問記

くにまる®」とデジタル簡易無線「イチゴマル®」で
かんがい施設の遠隔監視ができるようになりました。

みかん畑かんがい施設の
遠隔監視システムに採用されたIoT製品群

(株)エム・システム技研 システム技術グループ

今回は、和歌山県有田市にある水土里(みどり)ネット有田川様を訪問し、みかん畑用かんがい施設の遠隔監視システムにご採用いただいたHMI統合パッケージソフトウェアSCADALINXpro(形式:SSPRO6)、現場設置形データロガーWebロガー2(形式:DL30)、IoT用端末データマル(形式:DL8)、920MHz帯マルチホップ無線機器「くにまる」、150MHz帯デジタル簡易無線「イチゴマル」、テレメータD3シリーズ、多チャネル組合せ自由形リモートI/O R3シリーズ1200bps IPコンバータ(形式:DT8)について、同社事務局 事業課長の井口様からお話を伺いました。複数ある施設ごとに採用いただいた製品構成が異なるため、3システムに分けてご紹介します。

[エム・システム技研、以下エムと略称]導入の経緯についてお聞かせください。

[井口様]水土里(みどり)ネット有田川は、有田川沿岸に開けた平地部と中山間部(*1)にあるみかん畑に対して水門や揚水機を操作することでかんがいを行っています。そのためには設備付近の河川や水路、貯水槽の水位などの監視、そして地震警報が必要になります。それらの監視・警報を遠隔で行いたいという希望から新システム導入計画がはじまりました。

(*1)平野の外縁部から山間地にかけての地域

立ち入り禁止区域の水門遠隔監視・操作(保田井、保田井中継)

[井口様]最初に行ったのは、保田井水管理システム(構成図中に黄色枠で表示)の水門設備の遠隔監視・操作です。水門設備は河川内にあり、上流の二川ダムから放流する際、河川は立入禁止になるため水門の開閉操作ができなくなってしまいます。このため、水門の遠隔監視・操作システムの構築が急務でした。現場にはR3シリーズD3シリーズを設置し水位、水門の開閉状態などの信号を取得、水門設備から水土里(みどり)ネット有田川事務所までの距離1.4kmを「くにまる」で伝送しています。その際、一直線には信号が届かなかったため、中継機を1つ置きました。事務所(構成図中に水色枠で表示)ではSCADALINXproにすべてのデータを集め、監視・操作を行っています。SCADALINXproは画面を自由に作画できて、下位に置く局数の制限もない汎用性の高いソフトであるため、今後のシステム拡張希望にも対応していました。
保田井以外にもかんがい施設がありますが、それぞれの施設用に「データマル」を1台ずつ設置しています。SCADALINXproの画面は事務所内のクライアントPCに共有されていますが、インターネットから直接アクセスするためのセキュリティ対策がまだできていません。現在は各「データマル」のクラウドモードを使用して、「データマル」内の信号情報だけは光回線経由でクラウドサーバにアップし、スマートフォンで見られるようにしています。

ランニングコストの削減(吉備井、糸我井)

[井口様]吉備井、糸我井、(構成図中に桃色枠で表示)と事務所の間はFOMA回線テレメータを用いて遠隔監視を行っていました。回線の通信費用として8,800円/月、2箇所合計で年間約21万円もの費用がかかっていました。当時は無線通信での選択肢をもっていませんでした。エム・システム技研の無線製品をご提案いただき、事務所からの距離が1km未満の糸我井との間は「くにまる」に、4.5km離れている吉備井との間は「イチゴマル」に置きかえました。「くにまる」の電波利用料は無料であるため、「イチゴマル」の電波利用料の年間400円×2台(親・子)だけとなり、通信費用の大幅削減を実現できました。この案件に併せて、それまで手動の操作弁しかなかった宮原井にも「くにまる」での遠隔監視を導入しています。

台風被害後の再建(鳥尾川工区、糸我工区)

[井口様]鳥尾川工区、糸我工区(構成図中に緑色枠で表示)にある揚水機設備では元々監視用に電柱を何本も建て、有線通信のための自営線を近くの監視棟まで引いていましたが、台風で電柱がほぼすべて倒れてしまうという被害がありました。再建の際に無線を検討し、これを機に事務所での遠隔監視を行うことにしました。無線化の副産物として電柱周りの草刈りといったメンテナンスが不要になり、工数削減にも繋がりました。上位をSCADALINXproにしていることで、このような機能追加の際にも制限を受けることなく、自由なシステム構築を実現できています。事務所と糸我工区とは1.2km程離れており、また山間部を通るため電波の減衰を考慮して「イチゴマル」で伝送しました。鳥尾川工区には「くにまる」子機を置き、1km未満の距離にある前述の糸我井の「くにまる」子機を中継ポイントとして事務所の「くにまる」親機と通信し、SCADALINXproにデータを集めています。工区内にある孫設備は山間部を挟んで距離があるため、「イチゴマル」を用いて伝送しています。

[エム]エム・システム技研製品をお選びいただいた理由は何でしょうか。

[井口様]FOMA回線の置きかえのために無線機器を検討していた際、担当営業の方から丁寧にご提案いただいたことが理由です。短距離用の「くにまる」と長距離用の「イチゴマル」を距離に合わせて選択できるところが環境に一致していること、また実際に通信試験をした上で導入できるため、安心して採用しました。また、本件は地元の電機会社にご協力いただいていますが、SCADALINXproはエム・システム技研の技術サポートも受けることができるという点で安心感がありました。購入時、セミナーを通してソフトの構築方法を学ぶことができたため、下位のシステム設計をイメージしやすくなりました。

[エム]今後の予定などをお聞かせください。

[井口様]現在、国のスマート農業推進の一環で気象測定装置(土壌水分・地温・湿度・風向・風速・日射・気圧・結露・雨量など測定)として、「Webロガー2」で測定値の収集、記録を行うと共に結果をWeb公開し、組合員の皆さんに閲覧いただく仕組みの構築を進めています。今後は、このような情報収集装置を増やしてネットワークに接続し、SCADALINXproで農園の気象データを「見える化」するとともに、これらのデータを蓄積し、解析して活用することを考えています。これまでのように人の経験値だけに頼らず、より効率よく高品質なみかんの栽培ができるようになることが目標です。 最後になりますが、組合員の皆さんは手間暇かけて一生懸命みかんを作っています。
どうぞ有田みかんをよろしくお願いします!

「くにまる®」とデジタル簡易無線「イチゴマル®」でかんがい施設の遠隔監視ができるようになりました。
「くにまる®」とデジタル簡易無線「イチゴマル®」でかんがい施設の遠隔監視ができるようになりました。
拡大図

[エム]本日はお忙しい中ありがとうございました。今後とも、エム・システム技研をよろしくお願いします。

採用された製品のご紹介

  • 920MHz帯マルチホップ無線機器

    くにまるワイヤレスゲートウェイIB10W3・IB10W4

    ワイヤレスゲートウェイ(形式:IB10W4IB10W3)は屋外使用を目的とした防塵・防水性IP67に準拠したメタルハウジングのくにまるです。
    ・920MHz帯は回折性が高く障害物に
     強い周波数帯です。
    ・ネットワーク構築は信頼性の高い
     マルチホップ方式です。
    ・長距離 見通し1kmまで届きます。
    ・免許申請は不要です。
    ・通信の配線工事が不要です。

  • 150MHz帯 デジタル簡易無線テレメータ

    イチゴマル

    経済的で機種が豊富なD3テレメータと組合せて使用できます。
    ・通信距離は最大実績 35km(*2)です。
    ・通信費が不要です。
    ・資格者不要です。

    (*2)ミゴイチ(351 MHz帯デジタル簡易無線)の子局を山頂に設置して計測した参考値です。通信可能か否かは、ご発注に先立って、電波試験(有料)でご確認ください。

水土里ネット有田川(有田川土地改良区)のご紹介

和歌山県中央部よりやや北寄りを東西に流れる有田川。その沿岸に広がる最上流の水系、吉備井・宮原井・糸我井・保田井。これらの土地改良区に置かれた施設は主として平坦地を耕地整理して再生した656haの田畑のかんがい排水と、同じく金屋・舩坂・田殿・須谷・鳥尾川・糸我・西川工区の全7工区1583haの樹園地(本県温州みかんの主産地を形成する)の畑地かんがいを行い、農業生産の基盤である農地の整備と開発をはかりながら、その水源をいずれも県下4番目の流域面積を誇る有田川に求め、農業用水路・パイプラインなど、さまざまな水利施設の維持と管理を行っています。また、農村地域における水と農地の管理主体という役割を通して、地域の環境保全にも大いに寄与しています。
また、農地中間管理事業として、和歌山県農業公社と県内全JA等の関係機関が連携し、規模縮小や後継者がなく離農しようとする農家等の農地を借受、規模拡大したい担い手農家や新規就農者等に農地の集積をすすめる事業も実施しています。

(株)別川製作所
(株)別川製作所

本システムについての照会先:
(株)エム·システム技研 カスタマセンター システム技術グループ
TEL:06-6659-8200


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