エムエスツデー 2020年4月号

お客様訪問記

920MHz帯マルチホップ無線機器 くにまる®リモートI/Oの導入で、
どこからでも養殖水槽監視ができるようになりました。

陸上養殖システムの遠隔監視に採用された
リモートGP®(形式:RGP30

(株)エム・システム技研 システム技術グループ

今回は、岡山県岡山市にあるジャパンマリンポニックス(株)様を訪問し、陸上養殖システムに採用されたリモートグラフィックパネル「リモートGP(形式:RGP30)」、現場設置形データロガー「Webロガー2(形式:DL30)」、920MHz帯マルチホップ無線機器「くにまる」について、ジャパンマリンポニックス(株) 代表取締役 内尾様、および今回の導入にあたりシステム提案から構築まで行なわれた大陽日酸(株) 開発本部 事業開発統括部 開発企画部長 坂井様、 同本部 デジタルソリューションセンター 中嶋様にお話を伺いました。

誰でも安心して養殖が可能

[エム・システム技研、以下エムと略称]システムの概要や構成についてお教えください。

[内尾様]今回、エム・システム技研製品を使用して導入した閉鎖循環型陸上養殖システムは、次世代型高機能システムであり、養殖水槽の環境(水質・水流・酸素濃度)をコントロールして、完全閉鎖型システムにおける高密度飼育の欠点を克服した先進システムです。完全閉鎖型なので電気と水道水があれば場所を選ばず、漁業権が無くても養殖ができます。また、閉鎖型循環設備であるため天候や外的要因に左右されず誰でも安心して管理できます。養殖可能な魚種も、うなぎ、ハタなどの高級魚をはじめとした11種類と豊富に取揃えています。

[坂井様]大陽日酸は溶存酸素濃度の管理や水質を改善するシステムを技術開発しています。ジャパンマリンポニックス(株)様とは酸素をどのように供給したら魚の成長促進に効果的かを共同研究しています。また、養殖飼料の製造(発酵技術)や鮮度を保って輸送するためにも産業ガスが利用できるため、いくつかの分野においてガス利用技術で陸上養殖事業にかかわることができると考えています。

[中嶋様]今回構築した遠隔監視システムの構成は、各養殖水槽に水温、溶存酸素量などのセンサを設置し、計測信号を「くにまる子機(形式:R3-NW1)」に実装されているリモートI/Oに取込み、920MHz帯無線を介して「くにまる親機(形式:WL40EW2)」まで伝送しています。さらに、「くにまる」で伝送したデータは「Webロガー2」に取込み、監視・記録しています。また、各養殖水槽の天井部にネットワークカメラを設置して水槽の様子を監視しています。「リモートGP」を使用して「Webロガー2」に取込んだアナログデータと、ネットワークカメラで撮っている水槽の映像とを同時に離れた場所から見ることができます。

拡張性の高さが採用の決め手

[エム]エム・システム技研製品をご採用いただいた理由は何でしょうか?

[中嶋様]エム・システム技研製品を利用すれば、場所を選ばずに遠隔監視したいという自分たちの希望するシステムを安価に構築できることが選定の最大の理由でした。しかし、設定したことがない機器のエンジニアリングを行うことには不安もありました。この点については、エム・システム技研のセミナーを受講することで、「Webロガー2」と「くにまる」の設定を容易に効率良く進めることができました。今回、利用させていただいたエム・システム技研製品は、初めて扱う方でもGUI(グラフィカルユーザインタフェース)が充実しているため、直感的に扱うことが可能であり、システム構築が大変やりやすい製品に仕上がっていると感じました。
無線システムを採用したのは、養殖水槽を移設する際に配線工事を省略できて工費削減につながるためです。また、エム・システム技研製品は拡張性が高く、新規に養殖水槽の追加や新たにセンサを追加することが容易である点も採用の決め手になりました。さらに、マルチホップ機能があるため「くにまる」を使用すればある程度距離を離しても、間に子機を置けばバケツリレーの要領でデータを伝送できることも採用を決めた理由の一つです。

省力化で「働き方改革」

[エム]新しいシステムを運用されてみていかがですか?

[内尾様]運用前は飼育員を常時配置して定期的に水槽を確認しに行くなどマンパワーに頼っていました。システムを導入したところ、いつでもどこでも水槽の様子をスマホで確認できるため、その必要がなくなりました。また、台風や災害の際には24時間待機して緊急時の対応に備えていましたが、映像を確認することで不安が解消できるようになります。メール通報機能もあり養殖水槽の異常がすぐわかり、早急な対応ができるので助かります。
そして、養殖事業にとって常に魚の様子やその生育環境を確認できることはきわめて大切なことです。たとえば、魚が食べ残した餌を放置すると水質汚染につながる恐れがあるため、魚に餌を与えた後、食べ残しを見つければ早急に掃除することができます。また、その食べ残した量を見て、今後の餌の量を調節して水質汚染を防止することもできます。魚の状態確認や水槽の水位を見て水漏れ事故の早期発見もできるため、映像で見えることは管理者の安心に直結します。また、近年話題になっている「働き方改革」の点でも休日に飼育員が様子を見に行かなくて済むなど省力化に役立ちます。

[エム]今後はどのような事を検討されていますか?

[中嶋様]現在はロギング機能やメール通報を主に使用していますが、今後はジャパンマリンポニックス様のご要望に応じて監視対象要素を増やし、制御の自動化にも役立つシステムの構築を目指します。なお現在は、天井設置型のカメラを使用していますが、水槽の底に生息している魚もいますから、水底や水流の確認ができるように水中カメラの導入も検討しています。
また、水槽を増設できるようにするためにコスト面や制御内容なども見直しています。

920MHz帯マルチホップ無線機器 くにまるとリモートI/Oの導入で、どこからでも養殖水槽監視ができるようになりました。
920MHz帯マルチホップ無線機器 くにまる®リモートI/Oの導入で、どこからでも養殖水槽監視ができるようになりました。
拡大図

[エム]本日はお忙しい中ありがとうございました。今後とも、エム・システム技研をよろしくお願いします。

採用された製品のご紹介

  • ワイヤレスゲートウェイ

    WL40EW2

    形式 WL40EW2

    Modbus/TCP(Ethernet)、920MHz帯特定小電力無線機器「くにまる」用ゲートウェイです。

  • リモートI/O R3シリーズ
    通信カード

    R3-NW1

    形式 R3-NW1

    リモートI/O R3シリーズの通信カードで、920MHz帯特定小電力無線局子機を実装しています。

  • 現場設置形データロガー
    Webロガー2

    DL30

    形式 DL30

    Webロガー2は、Web画面による遠隔監視機能、データロギング機能、イベント通報機能に加え帳票の作成機能などを備えた現場設置形のデータロガーです。

  • リモートグラフィックパネル
    リモートGP®

    RGP30

    HDMI出力付タイプ 形式 RGP30

    リモートI/O、監視カメラなどの各種データをネットワーク経由で取込み、専用作画ソフトウェア(形式:RGP-Designer)(*1)で作画します。

(*1) 専用作画ソフトウェア(形式:RGP-Designer)は、エム・システム技研HPから無料でダウンロードできます。

ジャパンマリンポニックス(株)のご紹介

私たちジャパンマリンポニックス(株)は東北大震災の沿岸部の海面養殖などの漁業関係の甚大な被害をきっかけに、温暖化による自然災害の多発、東南海大地震なども予測される状況の中、山の中でも海水魚が飼える完全閉鎖循環型養殖設備の開発に取組みました。循環水の処理は、従来の固定床濾過槽に比べ専有面積が1/3の流動床方式の濾過槽を開発し、2019年5月に特許を取得しました。現在、大陽日酸(株)様や高知工業高等専門学校などと連携して、循環水処理、酸素供給技術、遠隔監視などの技術開発と周辺機器の効率化に取組んでいます。来る世界的な食糧危機への対策に有効な、成長が早く、病気に強い魚種を厳選し国内で種苗生産にも取組んでいます。さらに、給餌効率を上げるために体変換率(*)に優れた昆虫蛋白を製造し、配合飼料に添加することを目指します。現在の日本の漁業は、マイクロプラスチック汚染、大自然災害、後継者不足など多くの課題を抱えています。完全閉鎖循環型養殖設備とシステムを用いた陸上養殖が、最も効果的な解決手段です。ジャパンマリンポニックス(株)はこれからも新しい養殖設備およびシステムを開発し、社会に貢献していきたいと考えています。

(*)餌を食べた魚が、餌に対してどれくらいの比率で魚体が大きく育つかの比率です。

ジャパンマリンポニックス(株)


大陽日酸(株)のご紹介

私たち大陽日酸グループは、企業理念である「進取と共創。ガスで未来を拓く。」を礎として、これまでガステクノロジーを通じて、鉄鋼・化学・エレクトロニクス・自動車・建設・造船・食品・医療など、あらゆる産業の良きパートナーとして、豊かな社会の実現に貢献してまいりました。
大陽日酸(株)は、1910年の発足以来、わが国の産業界の発展と共に成長してまいりました。1980年にシンガポール駐在員事務所と米国現地法人の設立を契機に始まった海外展開では、北米での事業規模の拡大を進めてまいりました。また、アジア地域において、中国、東南アジア諸国、インドなどに事業拠点を広げ、2015年には豪州に進出、2018年12月に米Praxairから欧州事業の一部を取得したことで、日本、米国、欧州、アジア・オセアニアの4極体制を確立するに至りました。
私たちは、ガスのプロ集団「The Gas Professionals」として、世界中のお客様に、安全・安心にガスを供給するという社会的責任を果たすとともに、より豊かな社会の実現を目指し、お客さまの声を敏感に捉え、新たなガステクノロジーを追求してまいります。 世界的な気候変動を主因とするたんぱく質不足の問題を、ガスの利用技術で少しでも解決できればとの思いでジャパンマリンポニックス(株)様の陸上養殖関連事業および技術開発を支援・推進しています。


本システムについての照会先:
(株)エム・システム技研
カスタマセンター システム技術グループ
TEL:06-6659-8200



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