エムエスツデー 2019年10月号

お客様訪問記

920MHz帯マルチホップ無線機器くにまる®を用いて
警報監視と遠隔監視を実現しました

但馬栽培漁業センターのユーティリティ設備の監視に
採用された「Webロガー2」と「くにまる®

(株)エム・システム技研 システム技術グループ

 今回は、兵庫県美方みかた香美かみ町にある但馬たじま栽培漁業センターを訪問し、海水取水量などの記録とボイラや海水ろ過装置などユーティリティ設備の監視システムにご採用いただいたエム・システム技研の現場設置形データロガー Webロガー2(形式:DL30)と920MHz帯マルチホップ無線機器 くにまるについて、公益財団法人ひょうご豊かな海づくり協会 栽培資源部 但馬栽培漁業センター所長のらく 敦司 様と主査の南浦 達也 様にお話を伺いました。

 [エム・システム技研、以下エムと略称]この度の導入の経緯についてお聞かせください。

 [南浦様]既設設備では、エム・システム技研のリモートI/O R3シリーズを魚類飼育棟検鏡室とろ過・貯水槽機械棟に設置して計測信号を入力し、PCレコーダソフトウェア(形式:MSR128-V6)で記録をしていました。またPCレコーダソフトウェアとは別に、警報信号については事務所に集約してから警報監視装置に取込んで監視をしていました。今回、これらの設備を更新するにあたり、警報監視装置の製造メーカーがすでに廃業していたため、エム・システム技研に相談しました。

有線の通信システムを無線の「くにまる」に変更

 [エム]エム・システム技研製品をお選びいただいた理由は何でしょうか。

 [南浦様]既設設備では、リモートI/O R3シリーズをPCまで有線接続していたため、通信ケーブルのコネクタ部分などに塩害による緑青(錆)の発生が認められ、ケーブルを敷設し直す必要が懸念されていました。対策として、既設のリモートI/Oと記録ソフトウェアはエム・システム技研製であったため、その機器を活用した無線システムを検討したことがきっかけでした。エム・システム技研からは無線の採否を判断する時点で、無線の電波が実際に届くかどうか、くにまるによる「導入前試験」を無償で実施していただき、その結果、電波の受信レベルに問題がなかったことや、どのような機種を選定すれば良いかのアドバイスをいただきました。

 [エム]今回のシステムの構成をお聞かせください。

 [南浦様]海水配管に設置された流量計や貯水槽に設置された水位計などの計測信号や従来監視をしていなかったボイラの燃焼状況などをくにまる子機に入力し、くにまる親機を設置した管理棟事務所まで無線伝送しています。そして、伝送された信号をくにまる親機とEthernetで接続されたWebロガー2に収集し監視しています。監視している主な項目は「海水取水量」、「海水送水量」、「貯水槽水位」、「ブロア圧力」やボイラの「燃料残量」、各装置の故障信号などです。

簡易Web画面でどこからでも監視

 [エム]導入後、運用して以前より改善されたことは何でしょうか。

 [南浦様]従来、ユーティリティ設備の表示値を魚類飼育棟検鏡室にある特定のPCで監視していましたが、現在は、Webロガー2の簡易Web画面を職員5人が各PC、スマートフォン、タブレットなどで見ることができるため、持ち場を離れることなく監視ができるようになりました。さらに、インターネットを利用して固定IPアドレスを取得したことにより、自宅からでも現場の状況を確認できるようになりました。
 たとえば、冬季には海水の温度が低くなり、稚魚の飼育にも影響がでるため、水槽内の水温を一定に保つにはボイラを運転し続ける必要があります。このため、ボイラへの燃料の供給を停止させないよう、給油のタイミングには気を使います。燃料の減り方は海水温、気温、加温する海水量などによって左右されるため、とくに休日には想定したとおりかどうか心配になります。そうしたときに、すぐに自宅からインターネットでWebロガー2の簡易Web画面によって地下タンクの燃料残量を確認して安心できるようになりました。

但馬栽培漁業センターのユーティリティ設備の監視に採用された「Webロガー2」と「くにまる®」 システム構成図
但馬栽培漁業センターのユーティリティ設備の監視に採用された
「Webロガー2」と「くにまる®」 システム構成図
拡大図

装置トラブル発生時はWebロガー2がメール通報

 [南浦様]ユーティリティ設備にトラブルが発生したときは、Webロガー2からメールで警報発生の通報が送られてきます。このメールで異常箇所も知らされますが、さらに詳しい情報が必要な場合は簡易Web画面から異常箇所に関係する設備の表示値の来歴を確認しています。事前にどのようなトラブルが発生したのかを把握できるため、各設備の担当者が必要な準備をしてから現場に行くことができるようになりました。
 また、稚魚が最初に食べる餌である動物プランクトンの培養でも水温を一定に保つ必要があり、制御水温が設定範囲から外れるとメールで通報されます。培養には容量が500〜1,500リットルの水槽を複数使用していて、作業動線の見直しのためにその配置を変えることがありました。これら移動できる水槽については、今後も飼育方法を改良したり、異なる用途で使用したりする場合に、配置を大きく変えることが考えられます。このような場合、子機を移動したり、増設したりできる無線でシステムを構成したので、有線での工事より配置変更に対し柔軟に対応できると考えています。

今後の予定

 [南浦様]Webロガー2については、ユーティリティ設備の表示値の監視とメール通報機能に加えて、データの記録や帳票機能も有効活用していきたいと思っています。たとえば、別のシステムで水温や気温などの情報を収集しているものがあるので、それらの情報についても遠隔監視できる本機に集約できればと考えています。

 [エム]お忙しい中をありがとうございました。

採用された製品のご紹介

  • ワイヤレスゲートウェイ

    ワイヤレスゲートウェイ 920MHz帯マルチホップ無線機器 くにまる® 親機(形式:WL40EW2)

    形式 WL40EW2

    Modbus/TCP(Ethernet)、920MHz帯特定小電力無線機器「くにまる」用ゲートウェイです。

    ワイヤレスゲートウェイ くにまる® 親機 WL40EW2 システム構成図

  • リモートI/O R3シリーズ
    通信カード

    リモートI/O R3シリーズ 通信カード 920MHz帯マルチホップ無線機器 くにまる® 子機(形式:R3-NW1)

    形式 R3-NW1

    リモートI/O R3シリーズの通信カードで、920MHz帯特定小電力無線局子機を実装しています。

    リモートI/O R3シリーズ 通信カード くにまる® 子機 R3-NW1 システム構成図

  • 現場設置形データロガー
    Webロガー2

    現場設置形データロガー Webロガー2(形式:DL30)

    形式 DL30

    Webロガー2は、Web画面による遠隔監視機能、データロギング機能、イベント通報機能に加え帳票の作成機能などを備えた現場設置形のデータロガーです。

但馬栽培漁業センターのご紹介

イケス  但馬栽培漁業センターは香住かすみ漁港の一角にあります。
 栽培漁業とは、減耗が激しい卵から幼稚魚の時期を人の手で育て、その後天然海域に放流して自然の環境で育て、計画的な漁業管理と併せることで水産資源と漁獲量の回復、維持を目的としています。
 但馬栽培漁業センターでは放流用のマダイ、ヒラメ、カサゴ、キジハタ稚魚やアワビ、サザエ稚貝などを生産しています。但馬栽培漁業センターで育てられた稚魚たちは漁業者の方々を中心に放流場所に馴れさせるための中間育成が行われた後、但馬の海へと放流されます。

但馬栽培漁業センター

公益財団法人ひょうご豊かな海づくり協会のご紹介

 水産物の安定供給および漁業者の生産活動の促進を図るため、栽培漁業の推進、生産環境の保全および漁業操業安全などに関する事業を行い、兵庫県の水産業の発展に寄与することを目的としています。
 兵庫県の委託を受けて、但馬栽培漁業センターの管理運営を行なっています。

本システムについての照会先:
(株)エム・システム技研
カスタマセンター システム技術グループ
TEL:06-6659-8200


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