エムエスツデー 2016年10月号

お客様訪問記

IoT用端末「データマル®」と音声通報装置「てれまる®」とを使用して、下水処理システムの遠隔監視を経済的に実現しました。 宮城県登米とめ市の下水処理システムに導入された「データマル®」と「てれまる®」による下水処理監視システム

(株)エム・システム技研 システム技術グループ

 今回は、宮城県登米市にある登米市役所の中田庁舎を訪問し、農業集落排水処理施設*1やマンホールポンプの異常監視・音声通報システムに採用された、IoT用端末データマル(形式:DL8と音声通報装置てれまる(形式:TLOとの組合せについて、システムを提案されるとともに、構成機器を納入された美和電気工業(株)の丹野様、システムを運用されている登米市建設部 下水道課施設管理係の菊地様、および管理受託を行われている県北清掃公社 技術管理課の千葉様にお話を伺いました。

老朽化したシステムを経済的に更新

 [エム・システム技研、以下エムと略称]新しい監視システムをご導入いただいた経緯についてお教えください。

 [菊地様]従来から運用してきたデータロガーと異常通報とを兼ねた監視装置が、老朽化により一部機能の喪失や、時折故障が発生して正常に運用できなくなってきました。監視装置で収集していたデータとしては設備の異常、ポンプの運転状態、流量計の測定信号などを監視していて、異常発生時には一般公衆回線経由で音声通報を行っていました。そのため保守・運用の実績を考慮して、修理を行うか、既設装置のメーカーの後継機に更新する方法もありましたが、もっと経済的に更新できないものかと検討していたところ、美和電気工業(株)が主催する出張展示会が行われ、そこでエム・システム技研のブースで展示されていたIoT用端末データマルを知りました。
 データマルは、監視したい各種入力信号の種類や点数に応じて、アナログ信号や接点信号などのI/Oカードを自由に選択組合せできるため、必要最小限の簡素なシステム構成が実現できるだけでなく、それらの機器は汎用品であるため、価格が大変安いにもかかわらず機能的にも代替機器として十分機能すると考えました。

ランニングコストは月額平均千円以下

 [エム]システムの概要や構成についてお教えください。

 [丹野様]大きく3つのシステム構成で運用しています。更新前は異常通報を全て音声通報によって行っていましたが、異常発生時にメール通報を行い事後確認でも支障がないところは、データマルでメール通報する構成(図1)、異常発生時に音声で確実に通報を行う必要があるところは、てれまるで音声通報する構成(図2)で、主にマンホールポンプに採用、データ監視と音声通報が共に必要な場所については、てれまるデータマルを併用した構成(図3)で、主に農業集落排水処理施設*1に採用しています。
 データマルは、メールアドレスの宛先を32件登録できるため、将来通報先が増えても十分に対応できます。組合せるモバイルルータとしては、コンパクトな工業用モバイルルータで信頼性が高く、NTTドコモのFOMA回線を利用してメール通報ができるユークエスト社製のUMsQuestを使用しています。プロバイダについては、NTTドコモが提供しているmopera Uを利用し、ランニングコストとしては通信した分だけ課金される従量制の通信プランを利用しています。ただし、実際には通報がほとんどないため、ほぼ基本料金だけでプロバイダ利用料と合わせても月額平均1,000円以下で運用しています。てれまるは、接点信号8点を入力して登録した4件の通報先へそれぞれ通報できます。他社の異常通報装置よりてれまるの方が安価なため採用しました。

宮城県登米市の下水処理システムに導入された下水処理監視システム構成図
宮城県登米市の下水処理システムに導入された下水処理監視システム構成図 [拡大図

施設の外からもスマホでデータ監視

 [丹野様]農業集落排水処理施設*1は下水処理を行っている設備で、迅速に対応する必要があり、音声通報の方が良いという要望があったため、てれまるを採用していて、さらにデータマルも設置して、収集した各種のデータをWi-Fi経由で任意の場所で監視しています。従来は監視室の盤面に監視用モニタを用意して特定場所で表示していましたが、データマルを使用することにより、たとえば施設の外にいても手持ちのスマートフォンからWi-Fiアクセスポイントに接続すれば、ブラウザアプリを使ってデータマルに標準で搭載されているWeb画面で現在の状況、トレンドグラフおよびアラームの履歴などが見られるため、利便性が著しく向上しました。また、監視用モニタの故障による修理などのメンテナンスコストも削減できています。
 てれまるデータマルの通報は、県北清掃公社含む管理受託業者へ通報されるようになっていて、通報を受けた管理受託業者の担当者が直ちに現地へ向かい、現地で対応した内容を菊地様へ報告するといった仕組みになっています。

 [エム]新しいシステムを運用された結果はいかがでしょうか。

 [千葉様]以前は音声通報のみの仕組みだったため夜中でも電話が鳴ることがあり、また、どこの異常かなど、詳細を聞き漏らした時には情報不足で困ったこともありましたが、データマルのシステムへの更新後は異常が発生した場合にメールで通報されることにより、メールの履歴を追うことで異常事態の発生状況を正確に確認できるようになりました。なお、今後の増設予定としては、データマルを2箇所に設置し、てれまるを1系統増設する予定です。また、マンホールポンプが複数箇所あり、今までは複数のメーカーのシステムを使用していましたが、近い将来それらの更新に当たっては、データマルてれまるの組合せによるエム・システム技研の方式に統一することで、保守部品の削減とメンテナンス性の向上を図ることを考えています。

 [エム]本日はお忙しい中をありがとうございました。

宮城県登米市のご紹介

登米市は宮城県の北部、岩手県との県境にあり、2005年に登米郡の8町(迫町、登米町、南方町、東和町、中田町、豊里町、米山町、石越町)と本吉郡津山町との合併によって誕生した市です。
旧登米町の周辺には明治時代の建造物が多く、みやぎの明治村とも呼ばれていて、宮城柳津虚空蔵尊および横山不動尊と、その周辺の山林は三陸復興国立公園の飛地にもなっています。登米市の名産は米で、ササニシキ、ひとめぼれ、コシヒカリなど銘柄米の産地になっています。

旧登米高等尋常小学校(現 教育資料館)

旧登米高等尋常小学校(現 教育資料館)

本システムについての照会先:
美和電気工業(株) 仙台支店
〒982-0014 仙台市太白区大野田五丁目3番地の4
公共技術グループ 丹野様
TEL:022-249-8103

*1 農業集落排水処理施設
農業集落排水処理施設とは、集落に設置されている下水道のことであり、トイレのし尿や台所・風呂場などから出る生活排水を集めて一括して処理・浄化します。浄化処理によりきれいになった水を水路や川に流すことで、水環境や衛生管理の保全が行われます。


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