エムエスツデー 2014年7月号

お客様訪問記

省スペースとコストダウンを実現した監視制御システムを構築
南西糖業(株)様の製糖工程の自動監視制御システムに
採用されたSCADALINXpro

(株)エム・システム技研 システム技術グループ

従来に比べて大幅な省スペースになったシステム

 鹿児島県の南部、徳之島にある南西糖業(株)様の徳和瀬工場には、かつて2005年に訪問させていただき、当日は南西糖業(株)様の自家発電監視システムにご採用いただいたエム・システム技研の製品(ハードウェアおよびソフトウェア)に関して種々お話を伺いました(『エムエスツデー』誌2005年11月号「お客様訪問記」参照)。

 今回は、その後2012年に製糖工程中の分離工程*1にご採用いただいたHMI統合パッケージソフトウェアSCADALINXproおよびエンベデッドコントローラを含む新システムに関して、徳之島事業本部 徳和瀬工場の工場長 池崎 左地夫 様、同工場 製造課の課長代理 直 俊字 様および同課主任の川口 誠 様にお話を伺いました。

 今回の新システム導入の経緯についてお教えください。

 [池崎様]既設の製糖設備が経年変化などで古くなり効率が悪くなってきたため、関係者で協議した結果、システムを更新することになり、過去に自家発電監視システムや圧搾工程監視システムで採用した実績のある、使い慣れたエム・システム技研製品を導入することになりました。その決定に大きく影響したのはエム・システム技研の製品はユーザーが自分でシステムを構築することを前提に設計・製作されており、メーカーに依頼せず自分たちでシステムの構築が容易にできることを、過去の経験からよく知っていたことです。

 今回導入された新システムの構成についてお教えください。

図1 制御盤

 [直様]今回は信号の取込みに関して、従来採用していたMsysNetシステム製品のリモート入出力ユニット(形式:SMLではなく、別形式のR3RTU-EM2を初めて使用しました。この製品は、従来使用していたSMLの16台分に相当する演算処理機能をもった製品で、入出力機器としては、リモートI/Oシリーズの一つであるR3シリーズの入出力カードを使用することができ、取り込める点数が大幅に増えました。たとえば、直流電圧入力カード(形式:R3-SV16Nは1~5V DCの信号を16点入力することができ、ディストリビュータ入力カード(形式:R3-DS4測温抵抗体入力カード(形式:R3-RS8では、変換器を使用せずに直接に信号を入力することができました。接点信号は接点入力カード(形式:R3-DA32Aを使用することで、SMLの4台分の点数32点が入力できました。また、R3RTU-EM2にはEthernetをベースにしたL-Bus通信機能を内蔵しているため、今回採用したSCADALINXproのパソコンと直接LANケーブルによる通信ができます。SMLにはNestBusの通信機能しかなくSCADALINXproと通信するためには、NestBusをL-Busに変換する通信ユニット(形式:72LB2-NBが必要でした。SMLを使用した場合と比較して変換器、通信ユニットが不要になり、大幅な省スペース化とコストダウンを図ることができました(図1)。

 さらに、従来からエム・システム技研の監視 操作ソフト(形式:SFDNおよびSCADALINX HMI(形式:SSDLX-V3を使用していますが、これらはエム・システム技研製品だけにしか通信が対応していませんでした。SCADALINXproは各種のPLC通信ドライバを備えており、三菱電機製PLCとも接続ができます。1台のパソコンに2つのLANカードを実装して、一方はR3RTU-EM2、他方はPLCと接続して1台のパソコンから同時に監視ができるようになりました(図3)。

図3 分離工程監視システム構成図

図3 分離工程監視システム構成図[拡大図

 [川口様]インバータのPID制御が必要な場所の設備では、現場で現在値の表示や設定値の変更など、直接監視と操作が必要でした。R3RTU-EM2には表示機能がないため、そこではワンループコントローラ(形式:ABH2を5台使用しました。今まで使用していたABHと比較して、前面がカラー液晶表示になり大変見やすくなりました。ABH2にはNestBusの通信機能があるため、SCADALINXproから監視・操作ができるように、72LB2-NBを介してNestBusをL-Busに変換してSCADALINXproに接続することで、現場と事務所の両方で監視ができるようにしています。

 [直様]SCADALINXproでは、製糖工程中の分離工程がひと目で分かるように、グラフィック画面を作成しました(図2)。

図2 分離工程監視画面例

システム導入時にセミナーを受講

 今回もエム・システム技研でSCADALINXproのセミナーを受講していただきました。

 [直様]従来のシステムと同様に、我々で保守管理を行っていくという体制は変わっていません。MsysNetのエンジニアリング方法はすでに理解していましたので、R3RTU-EM2ABH2の設定については問題ありませんでした。従いまして、今回は新たに採用したSCADALINXproについてだけ社員2名が受講しました。2012年の改良工事では制御盤の更新工事も行ったため、SCADALINXproのエンジニアリングを外注業者に依頼しましたが、その翌年の2013年には、早速、まだ監視ができていなかった設備のPLCのデータを取込むため、SCADALINXproの改造も含めて我々だけで行うことにしました。最初SCADALINXproとPLCとの間で通信ができないというトラブルがありましたが、エム・システム技研のカスタマセンターに問合せして、通信設定に関するアドバイスをいただき接続することができました。

 MsysNet機器を設定するビルダーソフト(形式:SFEW3を今回初めて使用されましたが、使い勝手はいかがでしたか?

[直様]従来使用していたビルダーソフト(形式:SFEW2)と同様の使い方ができ、計器ブロックリストが内蔵されているなど機能も追加されて使いやすくなりました。今までは機器がバージョンアップされた場合、ビルダーソフトもバージョンアップする必要がありましたが、SFEW3になってからはエム・システム技研のホームページから無料でダウンロードできるようになって、常に最新版が手に入るようになり非常に助かっています。

今後のパソコンOS対応

 今後のご予定についてお聞かせください。

 [直様]今回導入したSCADALINXproのPCは、1台からしか監視・操作をしていませんが、将来はクライアントPCを増設して工場内の複数の場所から監視ができるようにする予定です。

 また、この徳和瀬工場と他の一つの伊仙工場では、現在3つのエム・システム技研製の監視システムが稼働しており、監視ソフトにはSFDNSCADALINX(SSDLX-V3)を使用していますが、パソコンのWindows OSが古いままであり、すでにマイクロソフト社のWindowsXPのサポートも2014年4月で終了しましたので、このままいつまでも使い続けるわけにはいきません。今回と同様にSCADALINXproを採用して、パソコンを最新のWindows OSに更新していく方向で考えています。

*  *  *   

 製糖工場の稼働期間は12月から4月までのおおよそ5か月とのこと、取材を含めて今まで何度か訪問させていただきましたが、メンテナンスしておられる5月から11月までは7か月の非操業期間でした。今回、初めて操業中の工場を見学させていただきましたが、操業中の工場は極めて活況であることを肌で感じました。工場外においても、徳之島の道路には工場へ向かうさとうきびを満載したトラックや、畑へ戻る空のトラックが頻繁に見かけられました。また製品である原料糖を積載したトラックが港のそばの倉庫まで忙しく往復する姿があり、島全体を南西糖業(株)様が活性化しているように思えました。

 今回は24時間3交代で稼働しておられる時期にお伺いし、大変お忙しいところお話を聞かせていただき、本当にありがとうございました。

*1 分離工程では、円筒状バスケットに砂糖混じりの白下と呼ばれる高濃度の糖液を投入し、
  高速回転で遠心力を加えることにより、砂糖と糖蜜に分離します。

SCADALINXpro SCADALINXpro 拡大

【鹿児島県徳之島のご紹介】
徳之島は鹿児島県の県庁所在地鹿児島市から南南西約460km、奄美群島のほぼ中央に位置し、面積は約248km2、周囲約80km、人口約26,000人です。徳之島町、天城町、伊仙町の3町から構成されています。「闘牛の島」や「長寿の島」として有名でしたが、近年では島内3町が全国の出生率1~3位を占めたことから「子宝の島」としても知られるようになり、空の玄関口である徳之島空港は「徳之島子宝空港」という愛称で呼ばれています。

鹿児島県徳之島

本システムについての照会先:
(株)エム・システム技研
カスタマセンター システム技術グループ
TEL:06-6659-8200
FAX:06-6659-8510

SCADALINXSCADALINXproMsysNetピコマルは(株)エム・システム技研の登録商標です。


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