エムエスツデー 2014年1月号

お客様訪問記

従来の1/3の費用でテレメータシステムを更新
静岡県牧之原市の水道施設中央監視システムに採用されたSCADALINXpro

(株)エム・システム技研 システム技術グループ

 今回は静岡県牧之原市役所を訪問し、同市の水道設備中央監視システムにご採用いただいた、エム・システム技研のHMI統合パッケージソフトウェアSCADALINXpro について、牧之原市長の西原 茂樹 様、同市建設部 水道課の西下 富士夫 様、そして本設備を設計、構築された山本電機(株) 様にお話を伺いました。

市民の力で汎用製品によるシステム構築を検討

 本システムをご導入いただいた経緯をお聞かせください。

 [西原様]牧之原市は、2005年10月に榛原(はいばら)郡の榛原町と相良(さがら)町が合併して誕生しました。水道施設においては、旧榛原町と旧相良町がそれぞれ異なる重電メーカーのシステムを採用していたため、今回の更新計画にてシステムの統一を行うことで検討を始めました。既設の重電メーカーのシステムは共にいわゆる「ブラックボックス」が多く、システムに異常が生じた際に我々の力ではどうすることもできないストレスがありました。

 このような事情により、今回のシステム更新では、市の職員がシステムを理解し、市内の企業と行政がタイアップして対処できないかを検討し、システムを構築できる企業を探しました。

 その結果、山本電機(株)からエム・システム技研の中央監視に使えるSCADAソフトとPLCを使用して効率的なシステムアップの提案があり、それを採用することになりました。

廃形をしない実績と信頼

 エム・システム技研のシステムを採用するにあたって、ポイントとなった点をお聞かせください。

 [西下様]エム・システム技研の製品については、市の他の設備でテレメータシステムの採用実績があることを把握していましたが、「廃形をしない」という、ユーザーにとって非常にありがたい企業ポリシーも大きなポイントになりました。

 [大澤様]今回は、テレメータシステムの更新案件ということもあり、MsysNetテレメータD3シリーズ、リモートI/Oなど多くの関連デバイスがあり、かつ中央監視として使用できるSCADALINXproをラインアップしているエム・システム技研に相談しました。結果的には、それぞれの子局側で制御、記録が必要ということが判明したため、現場機器はPLCでシステムアップすることになりましたが、市への提案段階からシステム構成図の作成など柔軟に対応していただき、エム・システム技研とタイアップして提案できたことが大きなポイントになりました。

最新のインフラを使用したシステム構築

 システムの概要や構成についてお聞かせください。

 [大澤様]本設備は、静岡県から受け入れた水を牧之原市内のライフラインに送る重要な役割を担っています。構成としては、 配水池が旧榛原町側に3箇所と旧相良町側に10箇所、受水場が旧相良町側に2箇所、水質監視装置が旧相良町側に6箇所、それぞれ分散設置されており、これらを牧之原市役所に設置したSCADALINXproにて集中監視しています(図3参照)。

図3 システム構成図

図3 システム構成図[拡大図

 既設システムでは、NTTの専用回線を利用して親局と子局、さらに孫局とツリー型配線にて接続していましたが、今回のシステムでは、NTTのVPN(Virtual Private Network)サービスであるArcstar Universal Oneを使用したメッシュ型を導入することにより、システムの信頼性向上、ランニングコストの削減を実現しました。子局側の構成については前に話したとおり、制御、記録が必要であったためPLCを設置しました。山本電機(株)では各種メーカー製品の取扱いが可能ですが、導入のタイミングで新製品を出したメーカーのものを採用しました。

 Arcstar Universal Oneについてお聞かせください。

 [大澤様]Arcstar Universal Oneは、NTTコミュニケーションズが提供するVPNサービスです。VPNとはインターネットを経由して構築される仮想的なプライベートネットワークのことです。本サービスの特徴は、標準で通信が2重化されていて、光およびADSL回線というメイン回線のほかに、NTTドコモの3G回線によるバックアップ回線も全拠点に設置されています。メイン回線が何らかの要因で切れてもバックアップ回線によって通信できるため、システムの信頼性が向上しました。さらに、既設の専用回線に比べて回線速度が速いため、現場機器とのデータ通信のリアルタイム性も向上し、機能アップを実現できました。

充実したサンプルが用意されているSCADA

 SCADALINXproの構築・運用についてお聞かせください。

 [大澤様]牧之原市役所内に設置した中央監視システムSCADALINXproでは、全体のシステムフローなどのグラフィック画面、トレンド画面、アラーム、運転履歴画面、帳票画面を作り込みました。この際、ユーザー固有画面であるグラフィックは一から作り込む必要がありましたが、その他の画面については実運用でそのまま使える充実したサンプルがあったため、思ったより簡単に構築することができました。グラフィック作成についても豊富な部品サンプルがあり、作画も非常にしやすかったです。

図1 グラフィック画面

図2 帳票画面

全ての現場から監視可能

 [大澤様]SCADALINXproのサーバ、クライアント機能を利用して、全ての現場から牧之原市役所のサーバにアクセスし、監視できるようにシステムアップしました。現場にはPCは設置していませんが、緊急時にはクライアント機能を搭載したノートPCを持参してLANケーブルでシステムに接続すれば、全拠点から全ての現場が監視可能となっています。また、異常を知らせるためのメール通報を行っていますが、監視系のVPNネットワークとメールネットワークとは、山本電機(株)独自のシステムで隔離し、絶対的なセキュリティを実現しています。

自由度の高いSCADA

 [西下様]運用面では、自動印刷される帳票を毎朝確認しています。設備の異常が想定されるデータがあった際には、SCADALINXproにて蓄積しているデータを確認して現場確認を行います。また、緊急時には異常と復帰のメールが担当者に通知されるシステムとなっているため、普段は画面を見ることはありません。

 更新作業時には、市役所内にて山本電機(株)の担当者に画面の作成を要求して作り込みを行ったため、従前システムの複数メーカーの良い所を集約した中央監視システムになりました。また、作り込みの段階から一緒に関わったことで、山本電機(株)から取扱説明を受けなくても使いこなすことができました。従来は完成したシステムに対し、取扱説明書を読みながら慣れていくのが普通でしたが、今回は自分たちで作り込むという過程がありましたので、本当に使いやすいシステムが得られました。

エム・システム技研のサポート

 システムを構築するにあたって苦労されたことはありませんでしたか?

 [大澤様]SCADALINXproサーバとPLCのデータ通信がうまくいかず苦労したことがありました。PLCがそのメーカーの新製品であったため、設定サポートに慣れておらず、なかなかうまくいきませんでした。結果的には、原因はPLC側の設定の問題であり、SCADA側は標準搭載しているドライバで問題なく通信の確立ができました。

 SCADAシステムについては、山本電機(株)では初めての構築でしたが、エム・システム技研のセミナーを2日間受講して、ほぼ理解することができました。単にマニュアル説明するセミナーではなく、実運用に沿って柔軟に対応していただけたので、非常に分かりやすかったです。

 最後に、今後の予定などがありましたらお聞かせください。

 [西原様]今回は、行政と市内の企業がタイアップしてシステム構築を試み、結果的に従来の約1/3の費用で複数メーカーのシステムを統一できたすばらしい成功事例となりました。

 従前の牧之原市のように、複数メーカーのシステムを管理・運用して大変苦労されている自治体は多数あります。今後は、折にふれてこの成功事例を他の自治体にも紹介してあげたいと考えています。

*  *  *

 お忙しいところ、ありがとうございました。

SCADALINXpro SCADALINXpro 拡大

【牧之原市のご紹介】
牧之原市は、静岡県の中西部、駿河湾の西端に位置し、牧之原台地に広がる日本一の大茶園と美しい駿河湾に抱かれた自然豊かな市です。2005年10月11日、相良町と榛原町が合併して誕生し、現在、人口は約5万人、面積は111.68km2となっています。本市は、温暖な気候に恵まれ農業を中心に発展してきました。とくに、明治初期に旧幕臣たちによって開拓が始まったお茶栽培が牧之原台地を中心に盛んで、芳醇な香りで健康に良いといわれる「深蒸し茶」発祥の地としても知られ、荒茶生産量は静岡県内第1位になっています。近年は、国道の整備や東名高速道路相良牧之原インターチェンジの開設、重要港湾御前崎港の発達などにより、市内への企業進出が活発化し、自動車産業を中心とする工業化の進展、地域産業の高度化が著しく、農業と工業が調和した都市へと変貌を遂げています。また、観光の分野では、県内有数の集客を誇る白砂青松の海水浴場や近代化産業遺産に認定された相良(さがら)油田(太平洋岸唯一の石油坑)、勝間田城跡、さがら子生れ温泉、大鐘家などがあり、大勢の観光客で賑わっています。

静岡県牧之原市

本システムについての照会先:
山本電機(株)
〒421-0402
静岡県牧之原市勝間684-3
TEL:0548-25-4300
FAX:0548-25-4301

SCADALINXproは(株)エム・システム技研の登録商標です。


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