エムエスツデー 2013年4月号

お客様訪問記

「電力使用の見える化」 デマンド監視と省エネ監視システムの構築
新潟県長岡市 長岡工業高等専門学校に採用された
リモートI/O R3シリーズとSCADALINXpro

(株)エム・システム技研 システム技術グループ

 今回は新潟県の長岡市にある長岡工業高等専門学校を訪問し、デマンド監視と省エネ監視用としてご採用いただいたシステムについて、当該システムを運用されている同校の総務課 専門員 片桐 正幸 様、同課の早川 美登里 様、ならびにシステムの構築を行われた(株)ジェスクホリウチ長岡支店 上越営業所 所長 吉川 和裕 様、同支店の技術グループ 関 真志 様、および本社 システム本部 課長 松井 新八朗 様、同部の渡辺 寛之 様にお話を伺いました。

 従前の設備についてお教えください。

 [片桐様、早川様]従前の設備は、8年前に導入して運用を続けてきました。デマンド抑止と電力日報の出力を目的としたシステムでした。デマンド抑止機能については、年に数回ですが正常に働き、契約電力を超えないように動作していました。しかし古い設備であるため、専用のメディアに保存されたデータを10日に一度バックアップのためパソコンへ移動していました。デマンド日報の保存期間が10日間という短い期間であったため、データのバックアップ作業を忘れることもあり、大変苦労していました。また、月報を作成するためのデータ集計作業はバックアップしたデータからさらに再集計するため、非常に多くの時間を費やしていました。

デマンドのピークは冬季

 デマンド抑止の実態についてお教えください。

 [片桐様、早川様]デマンドは、一般的に空調負荷の高い真夏の時期に電力のピークをむかえますが、当校は地域性もあって冬季の日照時間帯が短いため、照明負荷の集中、消雪パイプ用動力負荷の増加などにより、冬季がデマンドのピークになります。従前のシステムでは、デマンド警報が発生した場合、一時的に停止させても影響が少ない設備である消雪用ポンプを停止させて、デマンド抑止を行っていました。

 今回のシステム更新にあたってポイントとされた点をお聞かせください。

 [片桐様、早川様]デマンド抑止システムから、広く電力監視システムへシステムを拡張させて「電力使用の見える化」を行い、省エネ対策を行うことが本システム更新の目的でした。しかしながら、予算的な面もあり一度に大きなシステム構築を行うことができないため、低予算で導入でき、かつ将来的には柔軟な拡張が可能な省エネ監視システムの構築をポイントとしました。もちろん使用する機器については汎用性の高い製品の使用を希望しました。

図1 電気室の盤内に設置されたリモートI/O R3シリーズ

 結果的に、今回はエム・システム技研のリモートI/O R3シリーズを使用してシステム構築をしてもらいました。通信プロトコルに、オープンプロトコルであるModbusが使用されているため、汎用性の高いシステムとなっています。また、エム・システム技研は、既納製品を廃形にしない点からも、今後のシステム拡張やメンテナンス性に優れていることを聞き、安心してその導入を決めました。

図2 電気室の盤内に設置された電力マルチメータ54U

 ジェスクホリウチ様には、こちらの要望について柔軟に対応いただき、感謝しています。

コンパクトなシステム構築

 システムの概要や構成についてお教えください。

 [吉川様・松井様]今回は、将来のシステム拡張に柔軟に対応できる点を重視してシステムを構築しました。

 当初の導入時は、デマンド監視とデマンド抑止のシステムだけを構築して納入しました。さらに、2期、3期工事の予定も聞いていましたので、システム構築として拡張しやすく工事の工数を減らすことができる構成を考慮して構築しました。機器構成としては、リモートI/O R3シリーズを一組と監視ソフトウェアSCADALINXpro HMI パッケージ(形式:SSPRO5)で構築するシンプルな構成にしました。デマンド計測と出力する端末にリモートI/O R3シリーズを採用しましたが、ベース上に必要なI/Oカードを挿入するビルディングブロックタイプで組合せが自由にできるため、柔軟な構成が可能でした。

拡張しやすく、工事の工数を減らせるシステム構築

 将来的な拡張を考えると、校内の電力設備が広い敷地内に点在するために、機器選定や工事面でメリットが出る構成を検討しました。

 監視用パソコンを設置する1号館の事務室と電気設備が集中する第一電気室の間は距離が比較的近いため、Ethernetによる通信を採用して、高速で汎用性の高い通信ラインにしました。本来なら監視用サーバパソコンと表示用のクライアントパソコンの2台で構成しますが、監視する事務室のスペースが限られていること、また安価に構築したいとの要望もあったため1台のパソコンでシステムを構築しました。

 ただし、拡張性も考慮して「見える化」にも対応した監視ソフトウェア(SCADALINXpro)を採用したため、複数台のクライアントパソコンを別途用意することによってWeb監視もできる構成です。将来的に省エネを行うために「見える化」を行い、各自の意識向上に基づいて省エネ行動に反映させることを願っています。

 デマンド監視とデマンド抑止だけのために、監視ソフトウェアであるSCADALINXproを採用することはオーバースペックですが、将来的な省エネ監視や電力データの解析を考慮すると、当初の納入時にSCADALINXproを採用する必要がありました。

長期間にわたる省エネ解析が必要

 省エネ監視についてお教えください。

 [吉川様・松井様]勘違いする方が多いのですが、デマンド監視と電力監視や省エネは意味合いが違います。デマンド監視は電力会社との契約に対して、契約範囲内で運用するための機能・装置であり、省エネとは違います。

 一方、省エネとは、各系統の使用電力量を集計して無駄を見つけることや電力の運用改善を図ることです。ですから、電力監視や省エネは、ピーク時の運用パターンを解析することや季節毎のパターンでの解析が必要になり、長期間にわたるデータ解析も必要になります。さらに無駄な電力を見つけるためには、より細分化した計測が必要になることもあり、計測機器を増やしていくことも必要になるため、今回採用したようなシステムの構築は理想的なシステムであったと思います。

計測データをCSVファイルで保存し、デバックや他の運用データとしても利用

 構築する中でご苦労なさった点はありますか?

 [吉川様・松井様]以前、プラント監視用としてSCADALINXproを使用したことがありましたが、今回はデマンド監視とレポート(日報・月報)処理がメイン機能でしたから、前回とは多少エンジニアリング内容が異なり苦労しました。しかし、用意されている多くのサンプルや取扱説明書を活用することによって容易に作業を進めることができました。

 作業中に不明点がでた場合や作成方法で悩んだ場合も、エム・システム技研のフリーダイヤル・ホットラインで相談に乗っていただくことで無事に解決することができ、この結果、各種の計測データをCSVファイルで任意に保存することなどができました。

省エネに対する意識の向上が使用電力量の削減へ

 今後の追加予定や拡張予定はありますか?

 [片桐様、早川様]当初、2012年3月に新システムを導入しましたが、同年7月に2期工事を行い、低圧回路の電力量監視を追加しています。また、2013年夏には、学生寮に221台のエアコンを設置予定ですが、電力量の関係もあり、エアコンは集中管理できるタイプで、デマンド警報時は消雪用ポンプと同様に一括でエアコンを停止させることも検討しています。

 省エネに対する意識を学生および職員に根付かせることで、使用電力量を削減して省エネにつなげることが最終的な目標です。

*  *  *

 お忙しいところ、ありがとうございました。

図3 長岡工業高等専門学校のデマンド・電力監視システム構成図

図3 長岡工業高等専門学校のデマンド・電力監視システム構成図[拡大図

拡大 SCADALINXpro HMI パッケージ(形式:SSPRO5)

電力 中央監視/操作用SCADA

【新潟県長岡市と長岡工業高等専門学校のご紹介】
長岡市は、新潟県のほぼ中央部に位置し、日本一の大河・信濃川が市内中央を流れ、日本海・守門岳など自然環境に恵まれた人口約28万人の都市です。毎年8月に行われる長岡まつり大花火大会は平成時代の「日本三大花火大会」の一つと称されています。
長岡工業高等専門学校は、国立長岡工業短期大学を前身とし、高等専門学校制度が発足した1962年(昭和37年)4月1日に国立高等専門学校第1期校12校のひとつとして設置されました。5年間を通して一貫した教育を行い、優秀な専門技術者を養成しています。本科5学科・専攻科3専攻で構成され、本科は約1,050名、専攻科は約50名、外国人留学生が約20名と、合計1,000名あまりが在学しています(2012年4月現在)。

参考・引用文献: 長岡市ホームページ(http://www.city.nagaoka.niigata.jp/
長岡工業高等専門学校ホームページ(http://www.nagaoka-ct.ac.jp/

新潟県長岡市

本システムについての照会先:
(株)ジェスクホリウチ
長岡支店 電機システム課  金子 裕 様
〒940-1153 
新潟県長岡市要町 1丁目7-21
TEL:0258-35-3627  FAX:0258-37-0659

上越営業所 電機システム課  鴨井 一徳 様
〒942-0004
新潟県上越市西本町 3丁目9-5
TEL:025-545-3703 FAX:025-545-3705

本社 システム本部  課長 松井 新八朗 様
〒931-8305
富山県富山市豊若町 1丁目12-20
TEL:076-438-3551 FAX:076-438-0661

SCADALINXproは(株)エム・システム技研の登録商標です。


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