エムエスツデー 2012年7月号

お客様訪問記

市の通信ネットワークを利用して水道施設50箇所の集中監視を実現
岡山県真庭市のSCADALINXproによるWebロガーの
集中監視システム

(株)エム・システム技研 システム技術グループ

 今回は、岡山県真庭市建設部を再度訪問し、水道施設の監視システムにご導入いただいたHMI統合パッケージソフトウェアSCADALINXproWebロガーの拡張工事の内容について、水道課の片山 誠 様、杉本 隆弘 様、そして本システムの設計・構築をされたミツワ電設(株)の 坂本 弘行 様、両金 道也 様にお話を伺いました。

低廉なイニシャルコストで、50箇所に増設

 前回訪問(エムエスツデー2010年1月号掲載)させていただいてから、どのくらいWebロガー(形式:TL2W)を増設されたのでしょうか? 

 [杉本様]2010年12月頃にはTL2Wは4箇所(工事中8箇所)だけでしたが、現在は、勝山地区26箇所、落合地区6箇所、美甘地区14箇所、蒜山地区4箇所(将来2箇所増設予定)の計50箇所で稼動しています。この増設は、大手メーカーの製品ではイニシャルコストが高くて実現できなかったと思います。

どこからでもWeb画面監視が可能

 現在のシステムの概要や構成についてお教えください。

図1 Webロガーが設置された盤内

 [両金様]構成については図5を参照してください。監視する機場(浄水場やポンプ所)にTL2Wを設置して(図1)、水位や流量などの数値信号や設備の運転・故障信号を入力し、入力した信号を使ってTL2W内部でログや帳票を作成し保存しています。市役所本庁舎の水道課に、SCADALINXpro HMIパッケージ(形式:SSPRO4)のサーバ(データ収集)/クライアント(監視)を兼用したパソコンを1台設置して、TL2WのWeb画面(グラフィックやトレンドグラフなど)による監視とデータ収集を定期的に行っていましたが、TL2Wの台数が増えたことからパソコンの負担を軽減するため、パソコンを2台にしてサーバとクライアントの機能を分けました。水道課のサーバには50台すべてのTL2Wのデータを取込んでいますが、それとは別に、遠隔地にある美甘支局と蒜山振興局からも管理しやすいように、新しくサーバを設置して各々の地域の監視とデータ収集を行っています。また、TL2Wは真庭市の光ネットワーク網を利用して接続されているため、市の施設であるパソコンならどこからでもWeb画面を監視することが可能になっています。

図5 システム構成図

図5 システム構成図[拡大図

信頼性の高いシステム

 この2年間で何かトラブルなどはありましたか?

 [杉本様]TL2Wを増設していく過程でサーバのアラーム履歴がときどき欠損することがありました。おそらく、サーバとクライアントの機能を同一パソコンで使用していたため、CPUやメモリに大きな負荷がかかったのが原因だと思います。上記の2機能を2台に分けてから、欠損は発生しなくなりました。それ以外に大きなトラブルはなく、信頼性の高いシステムだと実感しています。

期待どおりの使いやすい監視画面  

 SCADALINXproの監視画面も機能追加されたそうですが、いかがですか。

 [両金様]監視対象機場が増えたため、監視したい機場をすぐに探せるように地区別表示と施設別表示の2種類を用意しました(図2)。

図2 一覧表示画面(地区別表示と施設別表示の2種類を表示)

 さらに、地図上のエリアをクリックすれば、その地区の機場が一覧表示されます。また、機場名称のボタンをクリックすれば、グラフィックやトレンドなど詳細の画面に移行します(図3)。

図3 グラフィック画面

 アラーム履歴画面では、今まではすべての機場のアラーム履歴を混在表示していたため過去の履歴が探しにくかったこともありましたが、杉本様のご要望を受けて、プルダウンで表示された機場を選択すると、その機場だけのアラーム履歴を表示できるように変更しました。また、帳票の検索機能でもアラームと同様にプルダウンで機場を選択できるようにして、見たい日付の帳票を指定するカレンダー表示ボタンに名称を入れて大きくしました(図4)。

図4 図4 帳票画面(プルダウンで機場を選択)

 [杉本様]ミツワ電設様が我々の細かい要望に対し柔軟に対応してくれましたので、非常に使いやすい監視画面になりました。地元の業者でなければ、ここまでコミュニケーションがとれず実現できなかったと思います。他メーカーの監視装置は、専用の操作キーボードが英語表記だったりするため操作しにくい場合があります。現状の操作はパソコンであるため通常業務でも使用していますから、今後、異動で水道課に配属される担当者でもすぐに使い方に慣れて操作することができると思います。

監視操作卓や盤に比べ、システムの移設が容易

 この2年間で水道課を引越しされていますが、移設で大変なことはありましたか?

 [片山様]現在は市役所の中に水道課があり他部署とフロアを共用しているため、従来のような監視操作卓や盤だった場合には、設置するスペースがありませんでした。現在のシステムでは、パソコンを設置してLANケーブルを接続するだけだったので容易に移設は完了しました。

帳票の自動作成機能がとても便利

 本システムを導入されてのご感想をお聞かせください。

 [杉本様]以前は手書きで記録していた日々の帳票を、もし今も行っていたとしたら50箇所もの機場の帳票を管理するのは無理でした。このシステムのおかげで1箇所ごとに帳票が自動作成されるため、とても楽になっています。

タブレット端末での監視も検討中

 これで拡張工事はひと段落したようですが、今後のご予定についてお教えください。

 [杉本様]市の通信網を利用してるため、外部からこのネットワークに接続できません。TL2Wが設置されている現場で作業しているときはパソコンをLANに接続すると現在値などが確認できますが、移動中や休み中に携帯電話へEメール警報が入ったとき、トレンドグラフなどが確認できれば緊急対応するべきかどうかの判断ができますので、タブレット端末などで監視ができないか検討しています。

 お忙しいところ、ありがとうございました。

Webロガー TL2W 拡大 仕様書PDF

【岡山県真庭市のご紹介】
岡山県真庭市は、2005年に勝山町、落合町、湯原町、久世町、美甘村(みかもそん)、川上村、八束村、中和村(ちゅうかそん)および北房町の5町4村が合併して発足しました。岡山県北部中国山地のほぼ中央に位置し、北は鳥取県に隣接していて、 東西に約30km、南北に約50kmの広がりを見せています。本地域の北部は大山隠岐(だいせんおき)国立公園の一部であり、中国山地を織りなす「蒜山(ひるぜん)三座」があります。その麓には標高約500~600mの蒜山高原の牧歌的な高原風景が広がり、夏には避暑地として毎年県内外から多くの人々が訪れています。「美作(みまさか)三湯」の一つである湯原温泉郷、「日本の滝百選」にも選ばれた神庭(かんば)の滝、県下一の銘木で全国的にも有名な醍醐桜など観光地も多く、「男はつらいよ」48作目「寅次郎 紅の花」で1シーンの通りが舞台となった勝山・町並み保存地区では、毎年3月の雛祭りに160軒あまりのお店や家に様々な雛人形が並び、町中が華やかな雰囲気に包まれます。

岡山県真庭市

本稿についての照会先:
ミツワ電設(株)
〒701-2155
岡山県岡山市北区中原511-1
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FAX:086-275-5886

SCADALINXproは(株)エム・システム技研の登録商標です。


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