エムエスツデー 2012年4月号

お客様訪問記

既設テレメータの更新で構築費用とランニングコストの削減
群馬県県央水質浄化センターの下水道施設集中監視
システム更新にあたり採用されたテレメータD3シリーズ

(株)エム・システム技研 システム技術グループ

図1 盤内に設置された  D3シリーズ

 今回は、群馬県の県央水質浄化センターを訪問して、下水道施設の集中監視システムにご採用いただいたテレメータD3シリーズによる集中監視について、群馬県下水道総合事務所の樺澤様と、システム構築を担当された新生電設(株)の恩田様にお話を伺いました。

構築費用とランニングコストの削減

 本システムを導入された経緯についてお聞かせください。

[樺澤様]既設テレメータの更新にあたり、従来どおりでは多額の費用の発生が予想されました。今回の更新に際しては、構築費用とランニングコストの削減が主要な条件でした。この削減案として、分散形のリモートI/Oやテレメータとチャートレス記録計およびパソコンを利用した監視システムを、エム・システム技研の『エムエスツデー』誌で見たことを思い出して発案しました。

 導入に関しては、監視システムとして管理点数も多く更新時の問題点なども想定されることから、事前に少点数の監視システムを導入しました。導入した監視システムで支障なく運用を行うことができ、ランニングコストも軽減できることが実証できました。

図2 監視盤に設置されたチャートレス記録計

遠隔地の情報を統合して管理し、チャートレス記録計を採用してCFカードにデータ保存

 今回の更新についてポイントとなった点をお聞かせください。

 [樺澤様]システムとして必要な機能は、遠隔地の情報を統合して管理し、トレンドグラフ、帳票(日報、月報)機能で、現在の監視および過去の状況をさかのぼって見ることができることでした。この機能を満たしてコスト的にも低廉に立ち上げることができる点で、今回のシステムを採用することになりました。

 既設のテレメータシステムでは、チャート式の記録計を20台以上使用して監視していました。機械的なチャート式記録計であるため、定期的にチャート紙、記録用のペン、インクなど補用品の購入・取替え作業など、運用面の負担が大きい状態でした。

図3 監視用パソコン

 今回採用となったチャートレス記録計(形式:73VR1100では、データ保存にCFカード(メモリ容量1GB)を使用することで、極めて容易に一定期間のデータを半永久的に保存することができました。

 施設内の制御盤入れ替えにあたっては、従来の盤スペースを1/3程度に縮小することができました。新設の制御盤内もゆったりとしたスペースでスマートに仕上がりました。

 スペース的な面と使用されている機器も減らすことができたため、故障率低減および電力消費量も削減できたと思います。

表1 1GBのCFカードへの保存時間(チャートレス記録計73VR1100の場合)

システム構成は21対向のテレメータ、パソコンとチャートレス記録計による2重の監視

 システムの概要や構成についてお教えください。

 [恩田様]システムとしては、21対向のテレメータと場内監視用のリモートI/Oを混在させ、パソコンによる監視とチャートレス記録計による2重の監視を実現しています(図4)。

図4 システム構成図

図4 システム構成図[拡大図

 システムとしての大きな特長は、テレメータの親局側に子局側から送られた信号の出力ユニットがない点です。ハードウェアとしての受渡しをなくすことで、コストの低減も行うことができました。

 子局からの数値化されたデータを親局ユニット内にメモリして、上位通信となるEthernetでデータを受け渡ししています。本来ならパソコンもしくは、チャートレス記録計へ個別で通信する必要があるのですが、73VR1100のEthernet通信ポートは、同時に2つの相手先と通信できる仕様になっているため、2つの上位監視を行うシステムを構成できました。

チャートレス記録計の積算差分値を表示できる点が、流量を判断するのに便利

 構築する中でとくに便利だった機能はありますか?

 [恩田様]チャートレス記録計で、流量パルスを積算できる点は驚きました。

 流量パルスの積算値をチャートレス記録計で保存し、過去データからパソコンなどで2次加工して流量を求めることはとても面倒です。チャートレス記録計の表示として演算ペン設定を使用すると、入力ペンの積算値を30分、1、2、3、4、6、12、24時間の時間間隔でプリセットして、積算差分値を表示させることができました。

 今回のような規模のシステムは、よく似た名称や設定項目を複数設定します。その際に入力ミスをしてしまうことが多いのですが、各設定において、一括表示で確認できたため、入力ミスの発見も速やかに行えました。

 また実際の更新工事でもテレメータD3シリーズのLED表示ランプで回線接続状況や配線の接続などが素早く確認できた点などが、とくに便利な機能でした。

 エム・システム技研によるサポート

 苦労なさった点はありましたか?

 [恩田様]当初の立ち上げ時には多少苦労しましたが、エム・システム技研のホットラインへの相談やシステム技術グループのメンバーに助けていただき、とくに苦労することなく無事に立ち上げることができました。

監視拠点の追加も予定

 今後のご予定などがありましたらお聞かせください。

 [樺澤様]監視拠点の追加も予定されていますが、今回の立上げをスムーズに行うことができたので、次回もスムーズにできることと思います。

 本日はお忙しい中をありがとうございました。

入出力機器分離形 チャートレス記録計 73VR1100

【群馬県と県央水質浄化センターの処理区域のご紹介】
群馬県は、日本列島のほぼ中央にあって、県西・県北の県境には山々が連なり、南東部には関東平野が開ける内陸県です。県土の約3分の2が丘陵山岳地帯で、面積は6363平方キロメートルあります。 県央水質浄化センターの処理区域は、群馬県の政治・経済・文化の中心をなす前橋市・高崎市を始めとする10市町村を対象として、流域下水道になっています。この地域には、県人口の約半数が集中し、また、多くの事業所も存在していることから、生活様式の近代化や産業経済の発展に伴い、都市内を流れる河川の水質汚濁が進行していました。そこで、生活環境の改善と河川の水質保全を目的に、広域的かつ効率的に下水の収集処理が可能な流域下水道が計画されました。1987年10月に前橋市ほか6市町村が供用を始め、1998年8月渋川市の旧北橘村が供用開始をして、すべての市町村で処理が行われることになりました。現在、処理場は5系処理能力240,000m3/日で運転処理しています。

〈参考・引用文献〉 群馬県ホームページ(http://www.pref.gunma.jp/index.html)

群馬県(県央水質浄化センター処理区域)

本稿についての照会先:
新生電設(株)
部長 恩田 明 様
〒370-0001 群馬県 高崎市中尾町吹屋1141-1
TEL:027-363-3170
FAX:027-363-3091


ページトップへ戻る