エムエスツデー 2010年10月号

お客様訪問記

合併により拡大した給水区域の水道施設管理を一元化
下関市上下水道局に導入されたSCADALINXproによる
水道施設遠隔監視システム

(株)エム・システム技研 システム技術グループ

図1 PC収納ラック 今回は、下関市の上下水道局 北部事務所を訪問し、水道施設の遠隔監視システムに採用されたHMI統合パッケージソフトウェアSCADALINXpro、多目的テレメータD3シリーズおよびリモートI/O R3シリーズについて、北部事務所の下田 幸雄 様、浄水課の吉冨 政博 様および向野 邦彦 様にお話を伺いました。

本システムの導入経緯についてお教えください。

 [向野様]下関市と近隣豊浦郡4町の合併に伴い、給水管理の対象区域面積が拡大し、管理対象の水道施設も増加したことにより、引き続き安心安全な水道水を安定供給するために、下関市と近隣豊浦郡4町の施設を一元管理する効率的な運用監視システムを構築する必要が生じました。

 システムの設計は、下関市の施設係が主導して実施し、従来どおり監視画面の作成は職員が行うことを予定していました。下関市の長府浄水場で実績があるエム・システム技研製品 注) のほか他メーカーの製品も含めて検討した結果、エム・システム技研製品は、技術資料などが公開されているため職員でエンジニアリングでき、機器費と工事費だけを外部発注することで施工費を抑えることができるメリットがあり、エム・システム技研製品の導入を決定しました。

システムの概要や構成についてお教えください。

 [向野様]近隣豊浦郡4町の水道監視施設がある川棚浄水場、豊田分室、豊北分室、菊川分室にそれぞれSCADALINXproサーバPC(図1)を設置しました。それぞれの施設が管理している地域の水道施設からテレメータD3シリーズ図2)でデータ伝送し、また、自所設備分の信号の入出力にはリモートI/O R3シリーズ図3)を使用しEthernetで直接SCADALINXproサーバPCに接続してデータの収集と記録を行っています。

図2 テレメータD3シリーズ

図3 リモートI/O R3シリーズ

 そして、長府浄水場、北部事務所、豊田分室、豊北分室、菊川分室の間をNTT西日本のビジネスアクセスサービス(ビジネスイーサ・タイプ2)でVPN接続しクライアントPC(図4)から各拠点のサーバPCへアクセスして監視を行っています。

図4 クライアントPC

 これにより全ての施設の監視ができるようになりました(図5)。

図5 システム構成図
図5 システム構成図[拡大図

NTT西日本のビジネスアクセスサービスについてお教えください。

 [吉冨様]通信異常が発生すると現場へ急行しなければなりませんが、監視地域が広くなり距離が遠く移動に大変時間がかかるため、通信回線の信頼性と品質が重要です。ビジネスアクセスサービスは上記の条件に加えセキュリティも確保されています。また、従来のNTT専用回線を利用して1箇所に信号を集約する方式よりもランニングコストが減少しました。

 回線速度について10Mbpsの契約をしているためか、SCADALINXpro クライアントPCでトレンドグラフやアラーム履歴など大量のデータを各サーバPCから収集し表示したりするときには1~2秒程度のタイムラグが発生しています。しかし、リアルタイムアラームなどは瞬時に表示するため、運用上にはとくに支障は出ていません。

今回初めてテレメータD3シリーズとリモートI/O R3シリーズをご採用いただきましたが、実際にご使用されてのご感想をお聞かせください。

 [向野様]従来採用していたMsysNet テレメータの場合にはソフトプログラムが必要でしたが、テレメータD3シリーズリモートI/O R3シリーズはともにプログラムが不要で、機能も入出力だけに特化しているため大変扱いやすい製品でした。

 制御はリレーやPLC、信号伝送はテレメータと用途を切り分けて使用している私たちのようなユーザーには、最適な製品です。

今回のシステム更新工事でご苦労された点がありましたらお聞かせください。

 [吉冨様]下関市の水道施設と違い、私たちが今まで維持管理していなかった施設についてはわからないことが多く、かつSCADALINXpro に切替えた時点から即稼動させなければならなかったため、近隣豊浦郡4町の職員の方々から意見や要望を聞きながら所定の機能を実現させる必要がありました。それらをSCADALINXpro でどのようにエンジニアリングするかで苦労しました。

 [向野様]下関市の設備は、回線異常や機器故障などで遠隔監視ができない状態になっても現場で自立運転可能なことを前提として設計されていますが、近隣豊浦郡4町の施設の中には、浄水場と送水先の配水池の条件でポンプを動かしているところもあり、その部分をSCADALINXproでソフト的に処理し制御を行う必要がありました。単に信号を入力し画面のランプを点灯させるだけではないため大変でした。また、SCADALINXpro 独自のスクリプト言語を理解するのが困難でした。最初は画面のボタンスイッチから接点信号出力を行うだけでも悩みました。エンジニアリングが遅れると請負業者に迷惑がかかるため重圧もありましたが、同じ職場の方や請負業者の協力を得て無事工事を完成させることができました。

ご担当者の人事異動などがあると思いますが、引継ぎなどはどのようにされていますか。

 [吉冨様]技術やノウハウを継承させるため、機器の取扱説明書以外にも下関市独自の技術資料などを作成し、エム・システム技研のセミナーの受講や研修、実際の画面作成などのトレーニングを行い、維持管理業務を引継いでいけるような仕組みを作っています。

今後のご予定をお聞かせください。

 [下田様]近隣豊浦郡4町の多くの施設が更新時期にきているため、設備の更新と無監視状態の施設を順次この監視システムに取込むことを予定しています。

 [向野様]合併した近隣豊浦郡4町は下関市の倍以上の面積があり、施設も大小合わせて下関市と同数程度あるため、当面は長府浄水場の浄水課で監視システムの維持管理を行う予定ですが、将来的には北部事務所で監視システムの維持管理ができるような体制を作っていきたいと考えています。

本日はお忙しい中をありがとうございました。

【山口県下関市のご紹介】
下関市は関門海峡に面した本州最西端に位置し、山口県を代表する市の一つであり、2005年2月13日に下関市と近隣の豊浦郡4町(菊川町、豊田町、豊浦町、豊北町)が合併して下関市が誕生し、同年10月には中核市の仲間入りを果たしました。環境的には関門海峡を挟んで九州に臨み、古くから山陽、山陰、九州の結節点として海陸の幹線交通網が集中していて、交通の要衝として栄えました。この関門海峡には世界的にも珍しい歩行者用の海底トンネルがあって歩いて九州へ渡ることができ、夏にはこの海峡の美しい夜景を舞台に花火が打ち上げられ、多くの人々を魅了しています。源平の最終合戦地「壇ノ浦古戦場蹟」や宮本武蔵と佐々木小次郎の決闘が行われた巌流島など多くの歴史遺産が整備されています。また、室町時代に僧が掘り当てたといわれ、下関の奥座敷として知られる川棚温泉などの温泉が多数あります。

山口県下関市

本システムについての照会先:
(株)エム・システム技研
カスタマセンターシステム技術グループ
TEL:06-6659-8200

注)『エムエスツデー』誌2007年8月号の「お客様訪問記」掲載

SCADALINXproMsysNet は(株)エム・システム技研の登録商標です。

【エム・システム技研 システム技術グループ】


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