エムエスツデー 2005年10月号

お客様訪問記

皆野・長瀞水道企業団で上水道・簡易水道の中央監視に
採用されたMsysNetテレメータ/データロガーシステム

(株)エム・システム技研 システム技術部

 皆野(みなの)町と長瀞(ながとろ)町は埼玉県北西部に位置し、首都東京を中心とした半径80km圏域内に属しています。周囲には標高300mから700mの山並みが連なり、町の80%は山間地です。そして両町の中心部には荒川が流れ、これに沿うように秩父鉄道および国道140号線が南北に縦断し、その沿線に町役場をはじめとする官公署や商店が集中しています。主な産業は、古くは養蚕など農林業を中心として発展しましたが、現在では椎茸、ぶどう、栗などにたよる観光農業へと移り変わっています。また、両町には県立長瀞玉淀自然公園があり、豊かな自然と素朴な風土を背景に、史跡、文化財、また荒川の舟下りなど首都圏近郊の観光名所になっています。

 今月は、皆野・長瀞水道企業団を訪ね、上水道・簡易水道施設の中央監視に採用されたMsysNetテレメータ/データロガーシステムについて、施設担当 主幹 関和 博美 様、そして本システムの設計、構築を一貫して担当された(有)丸新産業 代表取締役 新田 亨二 様にお話を伺いました。  

[エム・システム技研、以下エムと略称]まず、本システムを導入された経緯についてお聞かせください。  

[関和]皆野・長瀞の両町には、1上水道および5簡易水道があります。そこに、両町の要望によって上水道に簡易水道を統合する第3次拡張事業が平成14年度から始まりました。この事業の目的は、簡易水道についてより一層の「清浄にして豊富、低廉・安全、安定的な給水」を図るための維持管理の合理化、管理体制の強化にあります。そして、事業の一環として、既設中央監視システム(データロガーシステム)の更新を実施することになりました。更新に際しては、当上水道にとって最適な監視システムの構築を目標に掲げ、次の事項について検討を重ねました。

 (1)上水道と各地に点在する簡易水道施設の状況監視のために効果的な項目の洗い出し
 (2)システムに必要とされる信頼性
 (3)既設システム機器との互換性(既設ネットワークの使用を含む)
 (4)情報処理能力 
 (5)システムの拡張性、柔軟性(自由度の高いシステム)
 (6)経済性

 検討の結果、上記の諸事項に関して要求内容を満足すべき水準で実現できる、エム・システム技研のMsysNetシステムが有力候補に上がり、第3次拡張事業の開始に伴い平成14年度中に導入することが決まりました。

[エム]システムの概要についてお教えください。

[関和]システムの基本的な機能は、各地に点在する施設の情報をNTT専用回線を経由して収集し、皆野・長瀞水道企業団の中央監視・操作室および事務所で集中監視・操作するとともに、管理用の操業帳票を作成することです。中央監視・操作室および事務所にはMsysNet監視 操作ソフト(形式:SFDN)を搭載したPCをそれぞれ1台設置し、PC間は光LANで接続しています。

図1 皆野・長瀞水道企業団集中監視システムの概略構成

 拡張事業については、上水道施設を含めた各簡易水道施設の増補改造工事などを整備計画書のとおり進め、同時に拡張事業の進捗状況に合わせながらシステムを構築しました。当初は、1箇所の浄水場ならびに2箇所の分配池の設備を対象として導入を開始し、その後事業の進捗に伴いシステムを増設しました。ハードおよびソフトの追加、修正ならびに変更を何回か行い、最終的には相当大規模なシステムになりました。

図2 監視 操作ソフト(形式:SFDN)を搭載したPC

[エム]今回のシステムで特徴となる点は何でしょうか。

図3 テレメータ盤内[新田]企業団からのご要望事項の一つとして、配水池から浄水場への送水弁の遠隔操作がありました。これに関しては、各配水池にデータ収集用として設置してあるリモート入出力ユニット(形式: SML)に内蔵されている「ファンクションブロック」を応用して、送水弁の開度制御機能を構築しました。そして、その設定値をテレメータ経由で中央監視・操作室および事務所のSFDN(監視 操作ソフト)から設定する方法を採用しました。さらに一部の送水弁に関しては、タイムスケジュールに従って自動的に弁開度設定値を変更する機能を追加しています。つまり、ある時間帯は送水弁を閉止し、別な時間帯では一定開度を保つような機能です。この機能は、SFDNに標準装備されている「時計出力計器」の機能を利用して実現しました。なお、これらの遠隔操作機能には、安全性を確保するとともに不必要な操作を避けるため、各種インターロック機能も付加してあります。

 今回、これらの機能は設計どおり非常にうまく動作しています。このような、テレメータ経由による送水弁の遠隔操作機能“テレコントロール機能 ”が簡易水道設備に導入されている例は極めて珍しいのではないでしょうか。

[エム]今回、システムを導入されて良かったと思われる点をお聞かせください。

[関和]先ほど新田さんに説明していただいた、送水弁の遠隔操作機能は大変に重宝しています。配水池の巡回作業が軽減され、当初の目的である維持管理業務の合理化に大きく寄与できました。また、SFDNのトレンド画面は現場状態の監視には大変便利です。たとえばグラフの時間軸を変更することによって、液面の長周期での変動だけでなく、短時間内での過渡的な動きも目視で捕らえることができ、操業解析には大変役に立ちます。なお、先ほど述べたように、PCが企業団の事務所にも設置してあるため、現場の状態がデスクに居ながらいつでも監視でき、安心して管理できます。

 最後になりますが、システムの信頼性が高いことも大きな特長です。現在まで、大きなトラブルもなく、順調に稼働しています。今後は、PCのリプレースも検討しています。

[新田]設計・施工の立場から見ると、MsysNetの大きな利点はシステム構築の自由度が高いことにあります。システムの拡張も容易であり、今回のように拡張事業の進捗に合わせてシステムを増設、変更する場合には大変助かりました。PCのリプレースに際しては、HMIソフトウェア SCADALINXの導入も検討しています。

[エム]本日は、お忙しいところありがとうございました。

本稿についての照会先:  
(株)エム・システム技研  システム技術部 
 TEL. 03-5783-0511  FAX. 03-5783-0757

MsysNetSCADALINXは、エム・システム技研の登録商標です。


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