エムエスツデー 2009年11月号

Interface & Network News 2
No.38

SCADALINXproが風力発電機の
遠隔監視システムに採用された事例

図1 風力発電機群

 今回は、サーバ・クライアント形のHMIソフトウェアSCADALINXpro HMIパッケージ(形式:SSPRO4)」のアプリケーションについて、風力発電機(図1)の遠隔監視システムに採用/納入された事例をご紹介します。

 風力発電機は、年間を通して強い風が吹く場所であることなど立地条件についての制約があるため、都会から離れた遠隔地に設置されることが多く、風車も複数箇所に分散して設置されるケースが多いようです。これらの設備に対しては無人かつ自動運転という条件が一般的であり、運転保守を行っていくためには、遠隔地から詳細な現地情報を把握し、運転支援を行う必要があります。

 今回ご説明する事例は、ADSL回線を使用してSCADALINXproサーバとリモートI/Oとの間でデータ通信を行い、遠隔での常時監視を実現したシステムです。

図2 システム構成図

 図2に遠隔監視システムの構成を示します。風力発電機の周囲風速、風車の回転数、発電電力、異常事象など、様々な監視項目の遠隔取り込みには、組み合わせ自由形のリモートI/O R3シリーズを使用しています。複数の風力発電機を結ぶ通信線については、落雷の被害を防ぐためにメディアコンバータを介して光ケーブルにて接続し、風力発電機群と変電所や風力発電事務所との間の通信にはADSL回線を用いています。また、変電所にも発電した電力値の監視、異常事象信号の入力、出力などを取り扱うためにリモートI/O R3シリーズを設置しています。

 ADSL回線には、セキュリティを考慮して、VPN(バーチャルプライベートネットワーク)接続を使用しています。VPNとは、インターネット上などの拠点間を認証・暗号・カプセル化の技術を用いて仮想の専用回線として接続する通信方式のことです。変電所のSCADALINXproサーバパソコンと風力発電機にそれぞれ設置されているリモートI/O R3シリーズとの間はModbus/TCP(プロトコル)で通信を行っていますが、ADSL回線を使用しているため、ほぼリアルタイムでデータ通信が行えます。

 上位監視システムであるSCADALINXproでは、グラフィック監視画面、トレンド画面、アラーム画面、帳票などの画面を構築して監視を行っています。本システムでは、監視だけでなく、風力発電事務所に設置しているクライアントPCから、それぞれの風力発電機に発停指令を行い、指令に対して機器が正常に作動したかどうかについてアンサーチェックを行う必要があり、グラフィック画面の構築によって画面上からの視覚的な操作、確認を可能にしています。さらに、スクリプトを組むことにより、インターロックプログラム、発停指令を行う際のパスワード要求機能を組み込んでいます。

 また、風力発電機や変電所で何らかの異常事象が発生した際、担当者がどこにいても短時間にて異常を認識する必要があります。これに対応するため、変電所設置のSCADALINXproサーバにはISP(インターネットサービスプロバイダ)とも契約し、SCADALINXproが標準機能として装備しているアラームメール送信機能を使用できるようにしています。なお、アラームの重要度に応じて、メール送信先をグループ分けして携帯電話、事務所PCへのEメール通報を行うように設定しています。

 以上ご説明したように、SCADALINXproの使用によって、遠隔監視、操作、機器異常管理および携帯電話への異常通報が、極めて経済的に実現されています。

本稿についての照会先:
(株)エム・システム技研
カスタマセンター システム技術グループ TEL:06-6659-8200

SCADALINXproは(株)エム・システム技研の登録商標です。

【(株)エム・システム技研カスタマセンターシステム技術グループ】


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