エムエスツデー 2016年7月号

アプリケーション紹介

ヒラメ養殖場に採用された温調計のアプリケーション

大きなPV値表示、高い防塵・防水性能、Modbus-RTUを標準装備

機 種 パネル埋込形温調計 形 式 TC10EM

96角パネル埋込形温度調節計(Modbus用)形式:TC10EM / 基本価格:50,000円

養殖漁業の現状

養殖漁業の需要が年々増えていること、より高い付加価値をもつ魚種の生産が必要となっていることなどから、養殖の必要性は年々大きくなっています。国内において養殖される主な魚類の上位5品種は、ノリ類 32.9万トン、ホタテガイ 22万トン、カキ類(殻つき) 20万トン、ブリ類 13.9万トン、マダイ 6.8万トン(農林水産省「平成22年海面漁業生産統計調査」より)です。
ここでは、閉鎖循環式陸上養殖のヒラメの養殖施設に採用された温調計(形式:TC10EM)のアプリケーションをご紹介します。

海面養殖と陸上養殖

養殖には、海面養殖と陸上養殖の2つがあります。海面養殖は、自然に近い環境の下で育成でき、初期投資が陸上養殖に比べて安価であるという利点がある一方、台風や赤潮、気候などの自然の変化によって大きい影響を受けること、作業が重労働であるという欠点があります。これに対し陸上養殖は、飼育するための大規模な水槽やろ過システムの設置が必要であることから、大きな初期投資が必要になること、生物ろ過を行うため、大量のろ材の洗浄が非常に大変なこと、魚病に対する対策が大変なことなどの欠点はあるものの、陸上で作業ができるため作業が楽であること、天候や赤潮などの外的要因を排除できることなどといった海面養殖の問題点を解決できるほか、温度調節ができるため短期間で飼育魚を大きくできること(生産性の向上)、全ての飼育条件を管理できることなど大きな長所があります。また、水産養殖業においては、出荷量の増大に伴って単価の下落が起こるため、より付加価値の高い魚種へと移行していく必要に迫られています。これに伴って、新しい魚種の種苗生産の要望が高いが、陸上でなければ種苗生産が困難な魚種もあり、陸上で海水魚を飼育できる技術の開発の向上が必要となっています。

海面養殖イメージ図 / 陸上養殖イメージ図

閉鎖循環式陸上養殖

閉鎖循環式陸上養殖とは、主に海中に生息する魚介類の養殖を陸上で行う養殖方法です。使用される海水は循環ろ過され再利用を行い、蒸発分などの追加補充を行う仕組みになります。利点を以下に示します。

  • 閉鎖した設備の中で環境を管理するため、赤潮、ウイルス、魚病、荒天などの外的要因を受けにくく、歩留りが高い。
  • 高いろ過能力と周辺設備(泡沫分離装置、脱窒槽、殺菌灯など)により、大量の養殖が可能である。
  • 年間を通じて水温を調整できるため、発育が進み養殖期間が短くなり生産性が高い。
  • 出荷時期についても調整が可能である。
  • 陸上養殖のため飼育作業の負担が少ない。
  • 管理体制が確立し履歴を確実に残すことができるため、トレーサビリティ(追跡調査)が可能である。
  • 水流、照度、水中音、水温を制御することによって、養殖魚のストレスを軽減できる。

閉鎖循環式陸上養殖イメージ

システム構成図

ここにご紹介する施設でのシステム構成は温調計のTC10EMが2台1セットの組合せで、温度制御と流量制御を行っています。これが50セット(合計100台の温調計)使用されているシステムになります。TC10EMは、Modbus-RTUの通信機能をもっていて、それぞれネットワークで接続され4ステーションに分けて構築されています。また上位タッチパネルとPLCによって、一括でのSP値変更やA/M切換えができる構成になっています。

システム構成図

TC10EMの主な機能と特長

  • ユニバーサル入力は、熱電対、測温抵抗体、直流電流、直流電圧、ポテンショメータから選択できます。
  • TC10EMは2ループの制御が行え、1ループの場合はリモートSP機能を利用できます。
  • 水温の加熱・冷却制御が行えます。
  • パネル前面の保護等級はIP65です。

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