エムエスツデー 2013年1月号

アプリケーション紹介

シングルループコントローラを用いたボイラ制御

業界 発電所、プロセス産業、冷暖房熱源 採用機種 シングルループコントローラSCシリーズ

設備概要

ボイラ

設備名:ボイラ(boiler)

 ボイラは、密閉された容器内の水やその他の熱媒体を、燃料を燃焼させることによって加熱します。水の場合は沸騰させ高圧力の蒸気や温水を供給する装置です。蒸気を発生させるものを蒸気ボイラ、温水を発生させるものを温水ボイラといいます。

 発電所では、ボイラから発生する蒸気の圧力によってタービンを回して発電したり、工場では蒸気や温水を加熱装置の熱媒としたり、また、ビルでは暖房に利用したりと、ボイラは社会インフラとしてなくてはならない装置です。

アプリケーション紹介

 

 シングルループコントローラ(形式:SC210を2台使用した、重油を燃料とする一般的な蒸気発生装置のボイラ燃焼制御の例をご紹介します。

 ボイラには、燃料とそれを燃焼させるための空気を供給し、燃料の燃焼エネルギーによって蒸気を発生させます。シングルループコントローラは、燃料と空気の量を制御し、発生する蒸気の圧力を一定に保ちます。このとき、燃料と空気の流量を適切な比率(空燃比)に保つ必要があり、比率が乱れるとエネルギー効率が低下したり、不完全燃焼によって黒煙などを発生して大気汚染の原因にもなります。

 実際には、蒸気使用量変動時などに燃料か空気のどちらかの流量の追従が遅れ、一時的に空燃比のバランスが崩れます。そこで、このような過渡的な状態においても適正な空燃比を保つため、クロスリミット制御と呼ばれる複雑な制御方法が用いられます。

 SC210にはPID制御ループ以外にも信号選択(ハイ/ローセレクタ)、加減算、乗除算などの演算ブロックを装備していて、これらを組み合わせてクロスリミット制御のような複雑な制御ループを構築することもできます。

 SC210はModbus/TCPによる通信機能を備えていて、(制御室に)HMI統合パッケージソフトウェア SCADALINXpro® HMIパッケージをインストールしたパソコンを用意することによって、ボイラの状態を遠隔監視操作することが可能になります。図1SC210による制御ループ構成図を示します。

各ループの機能概要

① 主蒸気圧力制御ループ

PID制御によって主蒸気圧力(P)を一定に制御する。MVは「ボイラマスタ」信号と呼ばれる。

② 燃料流量制御ループ

基本的には、ボイラマスタをPID制御のSP(設定値)として燃料流量を制御する。クロスリミット制御によって、SPが減少する方向の動きに対しては制限がかからないが、逆に増加する方向の動きは一定の範囲内に制限される。

③ 空気流量制御ループ

基本的には、ボイラマスタに空燃比を乗じた値をPID制御のSPとして空気流量を制御する。SPの変化範囲はクロスリミット制御によって制限され、過渡時においても常に不完全燃焼にならないような値が設定される(負荷が増加する時は燃料流量に対して空気流量が先行して増加し、逆に負荷が減少する時は、空気流量が遅れて減少する)。

図1 ボイラ燃焼制御ループ構成図

採用機種

シングルループコントローラSCシリーズ シングルループコントローラSCシリーズ SCADALINXpro HMI パッケージ SSPRO5

SCADALINXpro は、エム・システム技研の登録商標です。

〈参考文献〉
村上 良明:PID調節計(一般社団法人レーザー学会、レーザー研究 第39巻第9号(2011年9月))
千本 資、花岡 太:計装システムの基礎と応用(オーム社、1987年刊)
(株)エム・システム技研:計装豆知識 クロスリミット制御(『エムエスツデー』誌1995年10月号)

 


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