静岡県掛川市 ホイバッハカラージャパン(株)の
空気式PID調節計の更新に採用されたシングルループコントローラ(形式:SC100

今回は、静岡県掛川市にあるホイバッハカラージャパン株式会社(旧クラリアントケミカルズ株式会社)を訪問し、排水処理システムのpH調整に採用されたシングルループコントローラ(形式:SC100)について、システムの構築・管理を担当されている寺澤様からお話を伺いました。

エムジー、以下エムと略称 今回の更新経緯についてお聞かせください。


寺澤様 私は昭和56年に入社し、今年で勤務42年目になりますが、排水処理システムは私が入社する前年から稼働しているもので、元々はすべて空気式計装でした。空気式計装は経年劣化で壊れることが少ないため、そのまま使い続けることも検討しました。しかし、やはり機器が廃番になっており、少なからずリスクがあることから電気式計装への置換えを進めていました。しかし、防爆の関係からも空気式計装がなくなるということではなく、空気式計装と電気式計装の組合せが重要です。空気式から電気式への置換えにあたっては、エムジーの電空変換器(形式:VP)を使用していました。変換器は40年近く動き続けており、エムジーの高い信頼性を評価していました。
今回、排水処理工程のpH調整において、長年使用してきた北辰電機製作所製の空気式調節計(形式:ALC211A)を更新することにしました。すでに北辰電機製作所はなくなっているため、他社の調節計で更新を検討したところ、エムジーもシングルループコントローラを扱っていることを知りました。手書きで残っていた既存の図面を確認して、エムジーにシングルループコントローラの機種選定やシステム構築について相談したところ、快く対応していただきました。また、SC100を設置する際にはエムジーの設定セミナーを受講することで、無事に更新することができました。2022年5月にスラリー石灰投入工程の空気式調節計を、2023年6月に塩酸、苛性ソーダ投入工程の空気式調節計をSC100に更新しています。


エム 導入していただいたシステムの構成や運用方法についてお聞かせください。


寺澤様 顔料製造過程で排出される水は多様な化合物を含むため、そのまま河川に流すことはできません。排水処理工程の中でも上流側でpH調整を2回行います。pHには0~14の範囲があり、14に近いほど強アルカリ性、0に近いほど強酸性です。排水はどの製造工程から排出されるかによってpHにばらつきがあります。これをpH調整の第1工程でpH5~6の範囲に収まるようにSC100を使用して、塩酸と苛性ソーダの投入量をそれぞれPID制御します。塩酸と苛性ソーダを投入するのは、塩酸を入れるとpHは下がり、苛性ソーダを入れるとpHは上がるからです。
次工程では硫酸第一鉄を一定の濃度になるまで手動で投入しています。その次にpH調整の第2工程があり、ここではpHが9になるまでスラリー石灰を投入します。このスラリー石灰は前工程の硫酸第一鉄と反応してフロック(*1)を作ります。フロックは周囲の汚れを集めて一緒に沈殿するため、浄化された上澄み部分を次工程に流します。
具体的には、pH計からの測定信号(4~20mA DC)をSC100にPV(測定値)として入力し、内部でSP(目標値)と比較してPID演算を行い、MV(制御出力)0~100%を4~20mA DCの制御信号として出力します。その制御信号を電空変換器(形式:VP)で空気圧の計装信号に変換して、スラリー石灰、塩酸、苛性ソーダを投入する空気式調節弁をそれぞれ制御しています。


エム 導入していただいた製品でここが良かったというポイントがあればお聞かせください。


寺澤様 これまでの運用から違和感なく置換えられているところが良かったです。SC100の前面は液晶ディスプレイになっているため、制御状況の確認がしやすく大変満足しています。また、エムジーは廃形をしないと宣言されているため供給が止まる心配がなく、安心して使うことができます。


エム 導入して改善されたポイントがあれば、お聞かせください。


寺澤様 今回更新した工程の元の調節計には1ループ分のPIDブロックしかなかったため、pHが高い場合にのみ塩酸の投入量を調整して、pHを下げるという制御を行っていました。排水がpH4以下の場合はこの工程を素通りしてしまい、次工程のスラリー石灰を大量投入してpHを上げることになっていました。SC100は1台で2ループのPID制御ができるため、1ループは従来の塩酸を投入するPID制御で使用し、もう1ループには苛性ソーダを投入するPID制御を追加しました。これにより前工程でpH5~6の範囲に収められるようになったため、スラリー石灰の使用量が減りました。スラリー石灰を大量に使うと、排水処理汚泥の発生要因になってしまっていたため、結果的に産業廃棄物を減らすことができました。


エム 今後どのようなことをご検討されていますか?


寺澤様 まだ排水処理工程のコントローラで空気式計装を使用しているため、順番に電気式計装への更新を進めていきたいと考えています。次回は、現状人手で行っている硫酸第一鉄の濃度コントロール工程の自動化として、SC100の導入を検討しています。


原田様 当工場ではエネルギーの見える化が進んでおらず、どの工程でどのくらいエネルギーコストがかかっているのかが不明確です。そのため、空気式計装から電気式計装に変わったことによるコスト改善がされてもわからない状態にあります。今回ご紹介いただいた「カーボンニュートラルに不可欠な電力集中監視システム事例集」を参考に電力を見える化する製品について検討しています。

空気式PID調節計の更新に採用されたシングルループコントローラ(形式:SC100)

エム 本日はお忙しい中ありがとうございました。今後とも、エムジーをよろしくお願いいたします。



(*1)フロック
水処理において凝結剤として添加された薬剤が析出して生成した凝結剤粒子の塊のこと。 フロックが水中の懸濁物質や有機物、細菌、着色成分に対して凝集反応を示し、水の浄化効果を得ることができます。

採用された製品のご紹介

  • PID制御コンポーネント シングルループコントローラ

    形式 SC100 icon

    精細なフルドット大型カラー液晶を搭載(4.3型TFT、256色 480×272ドット)し、タッチパネルによる簡便な操作ができます。幅広いユーザアプリケーションに対応する高度な制御・演算機能を装備しました。
    現場で制御状況が確認しやすい液晶ディスプレイを搭載。
    現場で制御状況が確認しやすい液晶ディスプレイを搭載。
  • プラグイン形変換器 M・UNITシリーズ

    電空変換器

    形式 VP

    PID調節計の4~20mA DC出力を空気圧信号に変換します。
    形式 VP

ホイバッハカラージャパン株式会社のご紹介

HEUBACH GROUP THE NEW GLOBAL PIGMENTS POWERHOUSE

HEUBACH GROUP THE NEW GLOBAL PIGMENTS POWERHOUSE

ホイバッハとクラリアント顔料事業が新しいホイバッハグループに


新しいホイバッハグループは、業界をリードするカラーイノベーターであるホイバッハとクラリアントのグローバルカラービジネスの2社を統合したものです。
200年以上にわたって卓越した技術を提供してきた「ホイバッハ」は、イノベーション、顧客ニーズへの配慮、色づくりにおける信頼の代名詞です。
今日のホイバッハは、有機顔料、無機顔料、防錆顔料、染料、特殊材料など世界で最も充実したポートフォリオを持つ業界のグローバルリーダーです。
世界19カ所に製造拠点を持つホイバッハは、お客様の生産環境に対応するため、高品質な素材を安定的に供給することをお約束します。サステナビリティはホイバッハのDNAの一部です。
私たちは、業界をリードする最高クラスの持続可能なカラーソリューションを提供し、皆様の生活を明るくします。

ホイバッハは以下の用途に革新的なカラーソリューションを提供しています。
建材、工業、自動車、木材用塗料および防錆
プラスチックの着色剤
印刷インクおよびデジタル印刷(電子写真用トナー、インクジェットインク)、ホームファブリック&パーソナルケア、アルミニウム染色、農業用着色、文房具、ビスコース、ラテックス、皮革用の特殊用途



ホイバッハカラージャパン株式会社 静岡工場
ホイバッハカラージャパン株式会社 静岡工場

本システムについての照会先:
ホイバッハカラージャパン株式会社 動力・排水チーム
TEL : 0537-72-7479