エムエスツデー 2022年1月号

ごあいさつ

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

 私が「株式会社エム・システム技研」を創業したのは、今からほぼ50年前のことです。その頃の工業計器の業界では、年商一千億円以上の大企業がそれぞれ自社で設計開発した工業計器群をプラントメーカーにPRして、「計装システム一式を一括受注する形」での受注競争を展開していました。
 私は、ベンチャー企業のエム・システム技研がこの業界で成長して行くには、「工業計器の中から「信号変換器」だけを取り出して、何時でも誰でも簡単に手に入るようにすればよいのではないか」と考え、「エム・ユニット変換器シリーズ」(写真1)の商品化に取り組みました。言うなれば「ランチェスターの弱者の法則」に従い、従来の工業計器メーカーがやらない「工業計器の単品売り」を始めることにしたわけです。
 具体的には「各種の信号変換器を標準化し、すべての商品に形式を与えて仕様を明確にし、かつ単価を公表して受注することにより、最短納期で製作出荷する」というものでした。写真1 エム・ユニット
写真1 エム・ユニット

そして、私よりも上手に回路設計ができる技術者に入社してもらい、オクタルベースのソケットにプラグインするプラスチックケースに電子回路を収納して、「エム・ユニット変換器シリーズ」の設計開発を進めてもらいました。これにより、当初予定していた各種の変換器が一通り揃いましたので、早速カタログの制作に取り掛かり、そしてできたばかりのカタログを、エム・システム技研製品と同種の計測器を取り扱っている商社さんに配ってまわりました。それからしばらくして「Y.MIYASHITA」という会社を経営する宮下社長から電話が入り、「このエム・ユニットを輸出したいがどうだろうか?」ということでした。私は早速、大阪・空心町にある同社の事務所を訪ねて、「日本語のカタログしかないのですが…」と切り出したところ、何と宮下社長は即座に「英文のカタログは私が作ります。いいですか?」それも「カタログはすべてY.MIYASHITAが引き受けます」ということになり、Y.MIYASHITA社製の「エム・ユニット英語版カタログ」が完成しました。「うぇー!文字の色まで同じの英語版やねえ!」と、その行動力に感服しました。それから早速「オーストラリアや南アフリカ連邦、そしてオランダにある取引先である代理店に売り込みに行くからデモトランクを用意してくれないか?」と言われ、即座に快諾しました。
 このようにしてエム・ユニットは海を渡り、オランダの「ISOTRON社」がヨーロッパに販路を拡げてくれましたので、予想以上の成果に繋がりました。ISOTRON社の社長フォルステンボス氏の秘書は「ホイドンク」さん、営業部長は「デコーニング」さん、営業で活躍してくれたSE(システムエンジニア)は「フェルドンク」さんと、今でも名前も顔もしっかり覚えています。また、アムステルダムを夫婦揃って訪問したことがあります。フォルステンボス社長は、ゴッホ美術館やレンブラントの代表作である「夜警」が飾ってあるアムステルダム国立美術館を案内してくださいました。そのときゴッホもレンブラントもオランダ人だということがわかりました。
 ホイドンクさんは私たちを「キューケンホフ」という公園に連れて行ってくれましたが、どちらを見てもチューリップの花畑で、地平線の彼方まで続いていました。日本では想像もつかない光景に息を飲むばかりでした。
 また、フォルステンボス社長夫妻が1990年に、今のエム・システム技研の本社ビルの上棟式に出席してくれました。はるか地球の裏側にあるISOTRON社との友好関係の思い出は一生消えることがありません。
 それから40年ほど経ちますが、エム・システム技研が急成長を続けてこられたのは、エム・システム技研が「工業計器の商品化」を実施したからだということがようやくわかりました。「商品というものは、それを欲しいと思う人が何時でも何処でも公表されている価格で入手できるものを指すのだ」と思います。不思議なことに、いまだにこの業界では「工業計器の商品化をしようとする動き」が見当たりません。
 エム・システム技研では、ご存知の通り以下の「5つのポリシー」
①廃形しません。
②納期を守ります。
③特殊仕様による追加費用は不要です。
④救済ワイド補償サービス3年
⑤「設定出荷サービス」の設定費用無料

 を掲げて、工業計器商品の市場形成に努めています。
写真2 電動アクチュエータステップトップ®
写真2 電動アクチュエータ
ステップトップ®
写真3 VAV/FCUコントローラ
写真3 VAV/FCUコントローラ
  
   次に挑戦したいと考えているものに、「ステップトップ®」(写真2)(ステッピングモータを駆動源とする流体制御弁バルブトップの商品名)を搭載した電動調節弁で、全盛を誇る空気圧式調節弁の市場に電動弁革命を起こそうという遠大な計画です。従来の電動調節弁は動きが遅いとか、停止精度が悪いなどの問題を抱えていましたが、電流パルスの出し方により、正転したり逆転したりするステッピングモータの出現で、小形で強力なトルクと1/1000以下の分解能が容易に得られるステップトップ®が完成し、目下のところ毎月200台以上の出荷実績を重ねています。そこに、さらに高密度化した1チップCPUを用いることで、さらに便利なModbus付の新製品の開発に着手しました。
 メンテナンスに手のかかる「空気源装置を必要としない電動調節弁」が実現し、設備費用も消費電力も大幅に低減し、「カーボンニュートラル」に貢献します。
 その次に挑戦しているのがBA(ビルディングオートメーション)のセントラル空調設備に使用する工業計器の商品化です。DDC(ダイレクトデジタルコントローラ)VAVコントローラ(バリアブルエアボリュームコントローラ)FCUコントローラ(ファンコイルユニットコントローラ)(写真3)など、BA特有の工業計器もエム・システム技研の商品に加えました。その結果BAのSI(システムインテグレータ)の方々に自由に、最適なBAシステムが構築していただけるマルチベンダーの環境が整いました。このようにしてエム・システム技研はBAの世界にも貢献して行きたいと考えています。
写真4 エムシステム技研の動画集
写真4 エムシステム技研の動画集
 お客様にとって「知らないものはないのと同じ…」というセリフはまことにもっともなことで、工夫を凝らしたPR用の動画の作成にも力を入れています。すでに50本以上の各種の動画が完成しましたので「エム・システム技研の動画集」(写真4)を発行しました。
 『エムエスツデー』読者の皆様には、ぜひこの動画集にある2次元コードからこれらの動画をご覧いただきたいと思います。
 どうぞ、引続きよろしくお願い申しあげます。

キューケンホフ公園


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