エムエスツデー 2021年7月号

製品別情報

Products Review
アナログ信号インタフェースの必須アイテム
エム・システム技研のアイソレータ

アナログ信号インタフェースの必須アイテム。エム・システム技研のアイソレータ

アイソレータの役割

図1 アイソレータの動作

DCSやPLCなどの工業計器はもちろんのこと、各種の測定器、PCや通信機器などのIT関連機器、医療用機器などには、アナログ信号を扱う入出力インタフェース回路が組込まれています。もし、この回路に外部から予期せぬ電流が流れ込むと、機器が誤動作したり機器の劣化や破損を招いたりする恐れがあります。また、万一高電圧が回り込んだりすれば感電のリスクも生じてきます。そこで、このような事態を回避するために使用される機器が信号絶縁器、すなわちアイソレータです。図1はアイソレータの動作を簡単に示すブロック図です。入力部に加わる信号は出力部へそのまま伝送されますが、入力部と出力部の間が高インピーダンス(100MΩ以上/500VDC)で絶縁されているため、入力部と出力部に電位差があって(Ei≠Eoで)も相互に電流が流れ込むことがなく、伝送される信号に影響を与えることはありません。アイソレータは、①信号の回り込み防止、②ノイズの影響の除去、③機器の保護、④異なるメーカーの機器間での信号取合い点の分界などの目的で広く用いられています。この中から①と②について簡単な事例を挙げてアイソレータの働きについて説明します。

①信号の回り込み防止

図2.1は、統一信号(4~20mADC)入力をもつ2台の計器を直列接続して使用する例です。1つの信号源からの同じ信号を、2つの計器1、2に入力する場合に、2台ともマイナス端子側が接地されたとすると、図中に示すような等価回路になり、接地を通じて電流の回り込みが起きます。その結果、下流側の計器2の入力がバイパスされた状態になり、計器2に信号が入力されなくなります。この現象は、図2.2に示すように信号源とどちらか一方の計器、もしくは両方の計器の間にアイソレータを挿入することにより回避できます。
図2.1 計器の直列接続

図2.2 アイソレータの挿入
②ノイズの影響の除去

図3.1 ノーマルモードノイズとコモンモードノイズ

ノイズには、ノーマルモードノイズ(Vn)とコモンモードノイズ(Vc)がありますが、多くの場合電子回路の動作に影響をもたらして問題になるのはコモンモードノイズです。コモンモードノイズとは、図3.1に示すように、信号源側と大地間に加わるノイズです。このままの状態であれば、受信機器側の回路の両端にはノイズが同電位(En=Ec)で加わるため影響はありませんが、例えば図3.2に示すように、受信機器側から点線で示すように浮遊容量を通して大地に電流(ic)が流れて電位のバランスが崩れた場合(En≠Ec)、ノイズが侵入して回路に影響を及ぼします。そこで、図3.3に示すようにアイソレータを挿入して、受信機器側へのコモンモードノイズの侵入を遮断することによって影響を除去できます。
図3.2 コモンモードノイズの影響図3.3 アイソレータによるコモンモードノイズの遮断

信号変換器の基本性能を決めるのはアイソレーション回路です。
アイソレーション方式の解説

変復調方式
アイソレータ、直流入力変換器をはじめアイソレーション機能付変換器の多くで採用しています。
入力信号をパルス幅に変調したのち、パルスの立ち上がり、立ち下がりだけトランスで伝送(アイソレーション)し、トランスの2次側でまた元の信号に復調することから、変復調方式といいエム・システム技研の代表的なアイソレーション方式です。
長所
・アナログ信号を使用部品のばらつきなどには
  あまり影響を受けないで精度良くアイソ
  レーションできます。
・入力―出力の絶縁耐圧を大きくできます。
短所・方形波にした信号を積分(平均化)にて復調
  するのに時間がかかります。
・回路が複雑で多数の部品が必要です。
●回路の動作解説
回路の動作解説
アナログ入力信号(Va)は0%から100%まで変化します。
このアナログ信号(Va)を幅が0%から100%まで比例的に変化するパルス列に信号変換します(パルス幅変調)。
パルス幅変調された信号をトランス(T)に通して電気的にアイソレーションし、2次側に信号の立ち上がり、立ち下がり信号として伝送します。
2次側に伝送された立ち上がり、立ち下がり信号からもとの0%から100%に幅が比例したパルス列を復元します。
復元されたパルス列のデコボコの部分を平均化して(面積の部分が同じになるようにして)元のアナログ信号(Va)を取出します。
このようにアナログ信号を変調し、アイソレーション(絶縁)した後、復調する方式です。

同期スイッチング方式
高速応答、超高速応答タイプやモジュール形アイソレータで採用しています。
この方式でも絶縁媒体としてはトランスを使いますが、トランスは原理的に直流を伝達できないため、直流信号伝送の場合には交流への変換が必要です。交流化方式としては、直流信号をスイッチでON/OFFすることによって交流に見せかけるという手段をとっています。この方式ではスイッチをトランスの1次側と2次側の両方に設け、その各スイッチを同期してスイッチングさせるので同期スイッチング方式という訳です。
長所
・部品点数が少なく、回路が簡単です(省スペース)。
・高速応答に適しています。
・正負の両極性信号が扱えるので交流信号にも
  対応できます。
短所
・使用部品(特にトランス)の性能が仕上がり
  性能に影響するので設計、品質管理が
  重要です。
・小形化ができますが、あまり小形化を追求
  するとトランスの高耐電圧実現が
  困難になります。
●回路の動作解説
回路の動作解説
両スイッチ(S1、S2)がONになると信号電圧(V1)がトランスの1次巻線にかかり、同時に2次巻線に巻数比に応じた電圧が現れます。現れた電圧はONになっているスイッチ(S2)を経由してコンデンサ(C)を充電します。
次に両スイッチがOFFになると電圧(V1)は1次巻線にはかからなくなりますが、ON時に流れた励磁電流によって溜まったエネルギーが放出されるためにON時とは逆極性の電圧が発生し、抵抗器(R)に電流が流れます。これによってトランス内の磁気が無くなり、トランス内のエネルギーが無くなるため初期状態にリセットされます。
このときには同時に2次巻線にも逆極性電圧が発生しますが、スイッチ(S2)がOFFなので電流は流れず、コンデンサ(C)の電圧はON時の電圧を維持します。
また両スイッチがONになって①からの動作を繰返すことになりますが、このときに電圧(V1)が変化していればコンデンサ(C)の電圧が更新されることになります。
なお、応答を速くするには各スイッチ自体に応答の速いものが必要なのは当然ですが、それ以外に原理的にON/OFFの切換えを速くすることとコンデンサ(C)の容量を少なくすることが求められます。

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