エムエスツデー 2021年7月号

お客様訪問記

和歌山市和歌浦南 (株)タイボー
生産管理システムに採用された
Webロガー2 (形式:DL30

(株)エム・システム技研 システム技術グループ

今回は、和歌山市和歌浦南にある(株)タイボー様を訪問し、生産管理システムに採用された現場設置形データロガーWebロガー2(形式:DL30)について、システムを構築された協力会社(株)K.HoldingsのCTO(最高技術責任者)天本様からお話を伺いました。

(株)タイボーの主要製品リサイクル成形製品とは

[天本様]タイボーでは樹脂廃材、繊維廃材といった原料をリサイクルして、成形用材料の生産、およびリサイクル成形製品の製造を行っています。生産拠点は3箇所あり、岐阜工場および子会社であるタイボープロダクツ(株)ではプラスチック成形用材料と成形製品、和歌山工場では繊維リサイクル材料を取扱っています。リサイクルのモノづくりでは、原料が廃棄物由来のため、原料の物性(*1)のばらつきが大きく、必要量を調達することが難しいという問題があります。

(*1)物質の性質のことで、密度や沸点、融点といった物質特有の性質

生産管理システムの重要性

[エム・システム技研、以下エムと略称]生産管理システム導入の経緯についてお聞かせください。

[天本様]個別に入手できる原料を薬の配合のように組合せて製品を生産するため、原料の配合と加工条件の最適化が必要になり、過去の生産データの解析が重要になります。記録する生産データとは生産工程における温度・圧力・射出速度といった加工条件や投入量、生産量などになります。システム導入以前は、3箇所の各生産拠点で記録、集計した情報をタイボー本社に集め、必要な情報を抽出して日報に転記し、受発注、納期、生産、品質、在庫などの管理に利用していました。しかし、各生産拠点において生産条件の測定箇所が非常に多く、手作業で記録と集計をおこなっているため、本社へ情報が届くまでに数日の時間を要していました。さらに、データの記録および転記ミスに対するリカバリーや防止策にも工数を費やしていました。これらの問題に起因するデータ収集の遅れは、刻々と変化する顧客ニーズに迅速に対応できない原因ともなり、受注の機会損失につながることが懸念されていました。この運用は10年以上の長い期間続いていて、なんとか改善したいという思いがありました。データの収集からデータベース化までをリアルタイム、かつ自動的に行うことを考え、生産管理システムの開発を開始しました。データ収集機器としてWebロガー2を採用することでシステムを構築することができました。本システムは2019年夏頃から運用しています。

[エム]導入していただいたシステムの構成や運用方法についてお聞かせください。

[天本様]プラスチック原料の造粒機、成形機といった稼働中の生産設備について、温度や圧力などの加工条件をWebロガー2で測定し、CSVファイルに記録しています。Webロガー2は岐阜工場に1台、和歌山工場に1台、タイボープロダクツに3台と、生産ライン毎に合計5台設置し、社内ネットワークに接続しています。タイボー本社にある生産管理システムのデータベースは拠点間VPNを経由して、生産拠点3箇所のWebロガー2へ1日1回の頻度でアクセスし、出来上がったCSVファイルを取込みます。取込んだデータは過去の生産データの記録として、生産管理システムからいつでも検索、表示(図1)できるため、過去のデータ解析も容易に行えます。また、Webロガー2の作画機能を使って、各拠点の設備が分かる監視画面(図2)を作成しているため、端末から社内ネットワークへアクセスすることで、社内、社外を問わず現在稼働している設備がひと目で見られるようになっています。管理職の職員は外出する機会が多く、稼働中の設備についてリモートで現場担当者と打合せすることがあります。これまでは、現在の稼働状況を口頭で確認しながら進めていた打合せでしたが、監視画面を見ることで生産設備の温度や圧力などの加工条件がリアルタイムで分かるようになり、打合せがスムーズになりました。

[エム]導入していただいた製品でここが良かったというポイントがあればお聞かせください。

[天本様]特に良かった点を3つ挙げます。①Webサーバ機能が充実していることです。はじめはWebサーバ用のPCを各拠点に置かなければならないと考えていましたが、ブラウザからWebロガー2にアクセスすれば監視画面が確認できるため、サーバ用PCは不要になり非常に助かりました。PC、タブレット、スマホなど様々な端末からの画面閲覧も、IPアドレスを入力するだけで良く、運用開始がスムーズでした。②CSVファイルのダウンロードが可能なことです。データベース構築の仕様上、サーバからバッチ処理でCSVファイルをダウンロードする必要がありましたが、FTPサーバの機能を使用して容易に実装することができました。③Webロガー2用作画ソフトウェア(形式:DL30 Web Designer(*2)の機能が使いやすかったことです。Webロガー2のWeb画面用プロジェクト作成については、支援機能を直感的に扱うことができ、プロジェクトをWebロガー2に反映する方法も容易であったので、監視画面の作成時間を当初の見積より大幅に短縮できました。

(*2)Webロガー2専用 作画ソフトウェア(形式:DL30 Web Designer)は、エム・システム技研のホームページ
    から無料でダウンロードできます。

[エム]導入して改善されたポイントがあれば、お聞かせください。

[天本様]1つは、顧客の要望に合わせた製品を作製するために必要な生産条件の情報がデータベースから抽出可能になったことです。これまでは顧客から新製品の要求があった場合、生産条件の適正化に時間を要するため、受注機会の損失が生じていました。システムにより素早い計画立案が可能になったことで、受注損失を軽減できました。次に、データの手書きによる記録、およびExcelデータへ転記する工数が削減できたことです。転記は手作業による記録のダブルチェックも兼ねているため、作業が専門の技術者に集中していました。そのため、担当技術者の不在(緊急事態の対応や出張など)で業務が停滞することもありましたが、転記作業そのものがなくなったため、技術者は高い技術が求められる開発業務に専念することが可能になりました。

[エム]今後どのようなことをご検討されていますか?

[天本様]現在は、5つのライン設備の生産データを自動収集していますが、直近の予定ではタイボープロダクツと岐阜工場で1ラインずつ、Webロガー2を追加して同じ仕組みを増築する予定です。
なお、高い技術が求められる原料の配合には、加工条件の情報と試験情報が必要になります。
生産管理システムでは、将来的に生産データだけでなく、試験情報も自動的に取込むことを想定していますが、Webロガー2は単体で機能がある程度完結しているため、増設も容易です。配合に必要な情報のデータベース化が整うことで、現在高度な技術者が行っている配合の適正化にAIを導入できるようになります。AI導入により、高度な技術者が開発などの創造性の高い業務に専念できるため、新規顧客の開拓と新たな市場拡大が期待できます。同時に次世代を担う技術者への技術伝承も容易になると考えています。
また、今回で生産管理システムのデータベース構築方法が確立できたため、もし同じ仕組みを実現したいというお声がかかれば、ぜひそのお手伝いもさせていただきたいと考えています。
(※類似のシステムをご検討されている方は、本記事の照会先である、(株)K.Holdingsの天本様へ、ぜひご連絡をお願いいたします。)

現場設置形データロガーWebロガー2 (形式:DL30)を生産管理システムのデータ収集機器に採用!
現場設置形データロガーWebロガー2 (形式:DL30)を生産管理システムのデータ収集機器に採用!
拡大図

[エム]本日はお忙しい中ありがとうございました。今後とも、エム·システム技研をよろしくお願いします。

採用された製品のご紹介

  • 現場設置形データロガー Webロガー2

    形 式  DL30形 式  DL30 形式:DL30

    Web画面による遠隔監視機能、データロギング機能、イベント通報機能に加え帳票の作成機能などを備えた現場設置形のデータロガーです。

(株)タイボーのご紹介

タイボーの概要
1967年大阪の紡績会社として創業、ドルショックを機に1972年リサイクル事業に転身、創業51年(リサイクル事業を始めて46年)目を迎え、現在では年間3万トンもの廃プラスチックや繊維をマテリアルリサイクルしています。資源循環型社会の形成に貢献する「ものづくりのメーカー」です。現在は、和歌山工場や岐阜工場など複数の拠点で製造しています。
タイボーの実績
2000年「容器包装リサイクル法」に基づく「使用済み家庭用プラスチック製容器包装」のリサイクル材を用いた「プラスチック成形用の成形用材料」「プラスチック成形品」の量産、実用化を日本で初めて実現しました。
タイボーの強み
一般的にリサイクルの原材料、成形製品は、品質がばらつく、外観が良くないなどの評価がありますが、タイボー社では独自の加工技術とノウハウで安定した製品造りを行っています。保有する試験設備などによる独自の厳しい品質確認とその膨大なバックデータに基づき、リサイクル材では難しいとされる品質保証をおこなっています。2007年の「JIS」取得はその証です。近年は、リサイクル製品でありながらCAE(Computer Aided Engineering)を活用した設計、解析などを実現しています。
(株)タイボー

本システムについての照会先:
(株)K.Holdings CTO 天本 勝規 様
TEL:073-448-1114


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