エムエスツデー 2021年1月号

ごあいさつ

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

 明けましておめでとうございます。
 今頃になって自分の人生を振り返ってみて気になったのは、心理学者「アルフレッド・アドラー」の考え方を解説した著書を手に取って、以下の言葉に再会したからです。「過去と他人は変えることはできない。しかし未来と自分は変えることができる」。
 思えば86年にわたる私の長い人生で、この言葉には幾度か助けられました。
 私がはじめて社会に出たのは、今から60年も昔のことです。「株式会社北辰電機製作所」に入社させてもらい、営業、製造、設計、SEの実務を経験しました。その頃は「定年55歳」が当然だと思われていました。その間ずっと私の心から離れなかったのは、「生涯現役でやって行きたい」という思いでした。日本が戦後の混乱から立ち直ろうとする時代だったのでしょう。今では信じられないほど労働運動が盛んでした。「総評」とか「全労連」といった文字が新聞に現れなかった日はないほどでした。
 私が入社した北辰電機も同様で、「春闘」や「年末闘争」は年中行事で、労働組合はその度に団体交渉やストライキをやっていました。私としては、非組合員も組合員の活動のお陰で昇給やボーナスにあずかるのは卑怯ではないか?と思い、不本意ながら組合活動に参加していました。
 自分でベンチャービジネスを始め、それが安定成長に辿り着けば、「生涯現役」という目標に辿り着けるはずだという理由で、14年間仕事をさせてもらった北辰電機に退職願を出し、一念発起して「株式会社エム·システム技研」を立ち上げることにしました。そして「給与に代って世間からお代をいただくこと」が1つと、もう1つは、「仕入れた部品の支払いから売った商品のお代をいただくまでの繋ぎのお金をどう都合をつけるか?」という2つの大問題にすぐに直面しましたが、「中小企業金融公庫」とか「産業信用組合」という金融機関のお世話になって、何とか切り抜けることができました。こうなったら初志貫徹とばかり、「一切労使交渉のない会社にしよう」と考え、従業員に対して同業他社より高い?賃金を支払い、年間6か月の賞与を保証し、かつ「週休2日制」にするとともに、私が前職で14年間悩まされた「タイムカード制度」は設けない会社を狙うことにしました。
 良い労働条件を整えるには、しっかりと利益を上げる必要があります。そのために、可能な限りお代をいただけない業務は避けて、確実に大きな付加価値が得られる「物作りオンリーの会社」にしようと考えました。
 業界として選んだのは、多少は勝手の分かる「工業計器業界」で、零細企業にも進出できる商品は何かと考えた結果、すぐに「変換器」という答えに辿り着きました。それから48年の年月が経過し、今では「すぐ手に入る工業計器・何でも揃うエム·システム技研」というキャッチフレーズで、かつ「例外のない代理店販売方式」を守った結果、販売先は日本全国をカバーするまでになりました。「避雷器」(写真1)、「変換器」(写真2)、「リモートI/O」(写真3)、「PIDコントローラ」(写真4)、「表示器」(写真5)、「記録計」(写真6)、「設定器」(写真7)などの工業計器を取揃え、「リモートI/O」、「テレメータ」(写真8)のほか、「くにまる®」(写真9)という商品名で代表される無線伝送器やインターネットを活用するIoT機器のほか、ステッピングモータで駆動する電動弁用のアクチュエータを製造するメーカーになりました。
 さて私は、ここで残りの人生を、このステッピングモータを駆動源とした電動弁用アクチュエータ、商品名「ステップトップ®」(写真10)の普及にかけたいと考え、現在は「ステップトップ®」のデモキットやPR用の動画の製作に没頭しています。
写真1 電子機器専用避雷器エム・レスタ®
写真1 電子機器専用避雷器
エム・レスタ®
写真2 計装用プラグイン形<br />変換器エム・ユニット
写真2 計装用プラグイン形
変換器エム・ユニット
写真3 多チャネル組合せ自由形リモートI/O
写真3 多チャネル組合せ自由形
リモートI/O
写真4 PID制御コンポーネントシングルループコントローラ
写真4 PID制御コンポーネント
シングルループコントローラ
写真5 表示器デジタルパネルメータ
写真5 表示器
デジタルパネルメータ
写真6 ワイヤレス記録計タブレットレコーダ®
写真6 ワイヤレス記録計
タブレットレコーダ®
写真7 警報設定器 デジアラーム®
写真7 警報設定器 デジアラーム®
写真8 多目的テレメータ
写真8 多目的テレメータ
写真9 920MHz帯
マルチホップ無線機器くにまる®
写真9 920MHz帯マルチホップ無線機器
くにまる®
写真10 電動アクチュエータ ステップトップ®
写真10 電動アクチュエータ
ステップトップ®
 世界の工業計器のマーケットを見渡しますと、調節弁は空気圧式が当たり前で、私の知るこの60年間、「調節弁」といえば空気圧式が広く使われており、電動式は一部の限られた用途にしか使われていませんでしたが、空気圧式制御弁を動かすには電気消費量の大きなコンプレッサをはじめ、除湿機や空気圧配管とか減圧弁など多くの付帯設備を必要とするのに対し、電動調節弁を動かすには電源を供給するだけで済むので、高価な付帯設備が一切不要になります。その上大幅な省電力にもなります。これだけ大きなメリットがある電動調節弁が今まで使用されてこなかったのは、❶動きが遅い ❷制御性能が悪い ❸電源喪失時のフェールセーフの問題などがあると思われていたからではないでしょうか。でも高性能な電動調節弁を実現するのに最適なステッピングモータ(ネオジムと呼ばれる強力な永久磁石を使用している)が開発され、それを用いた電動弁の電動式バルブトップをエム·システム技研がいち早く商品化して、出荷実績を伸ばしています。
ステップトップ®」は
❶高分解能1/1000
❷制御性の良さ
❸取扱いの容易さ
❹低消費電力
❺省スペース などを実現しています。
 エム·システム技研は、すでに1/1000分解能を証明するデモキットと、その実証実験のすべてを公開した動画を完成し、「電動調節弁に革命を起こす1/1000キット」(写真11)というタイトルで「YouTube」にアップしております。また、エム·システム技研が総力を挙げて完成させた「シングルループコントローラSCシリーズ」の出力回路に、「ステップトップ®」で制御する電動調節弁を用いて流量制御を行った際の一部始終を動画にして完成し、これもYouTubeに「電動調節弁革命」(写真12)と題してアップしておりますが、空気圧式と比べてもまったく遜色のない制御結果になっています。この2つの動画を世界中のPAやFAのユーザ様に見ていただくことで、計装の世界では「ステップトップ®を用いた電動調節弁を使ってPIDコントロールをするのが常識だ」と言ってもらえるようになるのではないかと期待しております。
 本誌の読者の皆様にも、ぜひこの動画をご覧いただき、ご意見をお聞かせいただけないものかと考えておりますので、よろしくお願い申しあげます。


大阪市住吉区の住吉大社 第一本宮。全国の住吉神社の総本社です。


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