エムエスツデー 2019年1月号

ごあいさつ

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

 新しい年の2019年を迎えるに当って、私が起業した「エム・システム技研」が今年も「工業計器の汎用化」に挑戦して行けるのは、誠に幸せなことだと存じます。このご挨拶を書いております2018年の11月には、多くの同窓会やOB会が開催されました。私はこの種の会合には幹事役を引き受けてくれている人々に感謝しつつ、可能な限り参加するようにしています。
 昭和9年生まれの私にとって、戦前、戦中、戦後を経験し、そして経済の高度成長とエレクトロニクス技術の革命的な発展の真只中で「エム・システム技研」を起業し、今日も未だ現役で仕事に夢中になっている自分は幸運に恵まれたラッキーな存在だと思います。
 84歳になった今も何とかテニスを続けて居られるのは、社会人になった60年前に「生涯続けられるスポーツ」としてテニスを選んだからに違いありません。
 60年前(1958年)というのは、私が東京に本社がある「北辰電機製作所」に入社した年であり、入社した年にテニス部員にしていただいたことに始まります。ところが、会社の敷地内にあったテニスコートはその後1~2年で新しい8階建ての新工場の用地となって消滅しました。コートが無くなったテニス部は、その後公共のテニスコートを借りて細々と活動することになりました。しばらくして世田谷区の用賀にクレーコート4面をもって運営する「桜町テニスクラブ」が誕生するというニュースがあり、クラブの全員がこの桜町テニスクラブに加盟することにしたため、私のテニス人生は繋がりました。その後私は1968年に北辰電機製作所の大阪支店に転勤したのを機に、隣接の堺市にあり伝統を誇る「中モズローンテニスクラブ」に入会を許され、週末になると家族揃って南海高野線の中百舌鳥なかもず駅の近くにあるテニスコートに出かけて、親はテニスに興じ子供は勝手に遊んでいるような時期がありました。
 それはちょうど、心機一転「エム・システム技研」を起こし、企業活動を開始した1972年のことです。テニスコートを所有していた南海電鉄が、そのテニスコートを含む周辺の運動施設を住宅公団に売り払ってしまったのです。そしてコートのないテニスクラブは運営ができなくなってしまいました。「いつか来た道」と思った私は、クラブに残された資金と、クラブに残る前向きの意志のある人達から臨時会費を徴収して最低限の予算を確保し、知合いの人が所有する土地の上に辛うじてテニスコート3面を建設し、クラブを存続させることができました。それからまだまだ物語は続くのですが、伝統ある「中モズローンテニスクラブ」は昨年創立80周年の記念パーティを開催しました。今では槙尾川の河川敷に建設した4面の人工芝のコートで安定したクラブ活動が続けられています。この伝統あるテニスクラブでは、私が入会する以前から毎年行われていた「岡山ローンテニスクラブ対抗戦」や「徳島ローンテニスクラブ対抗戦」が今でも続いています。50年にわたり両対抗戦共殆ど欠席していないのはどうやら私一人になってしまいました。

 さて、私が起業したエム・システム技研は創立47年目に入っています。工業計器のコモディティ化を旗印に「信号変換器」を一つのマーケットとしてセグメント化して、そこでガリバー型寡占を現実のものとしました。引き続いて多重伝送装置からテレメータまでをセグメント化して、多くの大手電機メーカーや通信機メーカーがテレメータ事業から撤退して行くのを横目に見ながら徐々に市場を手に入れて行きました。今ではオープンネットワークによる多くの計測信号を上位機器や上位バスに接続する「リモートI/O」と呼ばれている機器を発売し、用途に応じた品揃えをすることで、現在も急成長を続けています。

図1 額縁デジタルパネルメータ
図1 額縁デジタルパネルメータ
 今一つここでご紹介したいのは、デジタルパネルメータタブレットレコーダ®の物語です。多くの表示計器の中でも、デジタルパネルメータは一つの小さな市場を形成しています。エム・システム技研でも、見易さと使い易さに工夫を加えたデジタルパネルメータを製造販売しているのですが、今一つ差別化の効果を発揮できないでいました。そこで思いついたのが本体部分を圧縮して胴体のない顔だけのパネルメータを作ることでした。すでに電子部品は小さくなっていて、表面実装技術が発展をとげていましたので、それら超小形部品を用いて、普通のデジタルパネルメータと同じ機能をもった胴体のない顔だけのパネルメータを作ることに成功しました。その顔だけのパネルメータの裏面に磁石を取付けて、鉄製のパネルの表面にくっつくようにし、これを名付けて「額縁デジタルパネルメータ」(図1)としました。いかがでしょうか。計装パネルはもちろんのこと、各種の装置の運転をする人にとって便利と思われる場所に張付けるようにデジタルパネルメータを取付けることができます。

 同じような発想で「胴体のない超薄形の液晶記録計」を作ることを思い付き、iPadにチャート画面を出すことにしました。DINレール取付形の黒いプラスチックの箱の中に電子回路を組込み、その中にソフトウェアで記録計画面を生成させて、その画面をWi-Fi電波を用いてiPadに映し出す方式をとりました。結果として「チャートレス記録計」の顔の部分(タブレット)と胴体部分の本体とが切り離された記録計ができ上がりました。この顔なしの本体部分を「タブレットレコーダ® 」と名付けて売出しています。タブレットが本来持っている指先でタッチして操作する機能は全て利用できます。こうしてお客様の現場の方々がすでにお手持ちのタブレットに記録計画面がいつでも呼び出せるという便利さをお届けできています。
 そして今、そのタブレットレコーダ®に計測信号を取込む方法として、①直接I/Oカードにアナログ信号を繋ぎ込む ②リモートI/Oを用いてアナログ信号を繋ぎ込む ③920MHz帯無線I/O「くにまる®」を用いて無線で繋ぎ込む(図2) ④各種PLCのネットワーク接続口に直接プチッ!で、PLCの中で動き回っているアナログ信号を入力信号として繋ぎ込むなどのほか、①~④のうちのいくつかを使って同時接続することもできます。

図2 920MHz帯無線I/O「くにまる®」を用いて無線で繋ぎ込む
図2 920MHz帯無線I/O「くにまる®」を用いて無線で繋ぎ込む

 エム・システム技研では、このように現在ある計装機器に一工夫を加えて、常に「お客様目線」で新しい可能性をご提案申しあげております。
 つきましては、今後ともエム・システム技研の取組みにご注目いただきますよう心よりお願い申しあげます。

ウィンブルドンテニス航空写真

(2019年1月)


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