エムエスツデー 2016年10月号

ごあいさつ

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

 日本一の超高層ビル「あべのハルカス」から北西の方角に拡がる天王寺公園には、天王寺動物園と隣り合わせに大阪市立美術館があります。この辺りについての私の印象は、ホームレスが住みついた薄汚い場所というものでしたが、今ではすっかり綺麗に整理されて市民の憩いの場となっています。
 その美術館で7月9日から9月25日までの間、大阪市立美術館、関西テレビ放送および産経新聞社の3者の共催で「デトロイト美術館展」が開催されていることを知り、私は散歩がてらに出かけることにしました。気温の高い7月後半の土曜日だったのですが、夏の太陽がジリジリと照りつける暑い日でした。美術館の正面玄関からは大変見晴らしが良く、西の方角には通天閣を見下ろす雄大な景観が拡がっていました。
 美術館の中に入ってみると、デトロイト美術館所蔵の数々の名画が粛然と並んでいました。とくにピカソの若い頃の作品から晩年の作品まで、画風の変遷が見てとれるように展示されているのが印象的でした。ゴッホ、ゴーギャン、マティス、ルノワール、そしてモディリアーニ等々印象に残る美しい作品が見やすく展示されていて、重量感のある絵画を楽しませてもらいました。

大阪市立美術館 「デトロイト美術館展」(2016年7月9日〜9月25日 開催)

フィンセント・ファン・ゴッホ ≪自画像≫ / クロード・モネ ≪グラジオラス≫

 ところで私は、美しい絵画が人の心に残ることに着目して、エム・システム技研が次々と世に送り出す特長のある新製品について、お客様にそれらの素晴らしさをご理解いただくために、そのPRポイントが目に飛び込んでくるような、美しくデザインされた表紙と、この新製品を採用されると必ず得られる新しい世界を「ビフォー・アフター」のマンガで表現した、親しみやすい解説マンガ集を発行することにして、このマンガ集のことを「プレゼンテーションマップ」を短縮した「プレゼンマップ」と名付けました。
 さて、この作品プレゼンマップを作成するのは初めてのことなので、悪戦苦闘の連続ですが、良い作品ができればその影響力は計り知れないものになるのではないかと考えて知恵を絞って取り組んでいます。
 第1号の作品は、「タブレットレコーダ®」です。
 この新製品タブレットレコーダ®には、一般的なペーパーレス記録計のような液晶画面がありません。タブレットレコーダ®は、本体に付属するI/Oカードや外付けのリモートI/Oから取り込んだ計測データを、大容量の内部メモリやSDカードに記録します。そして、記録したデータを基にしてWeb方式でチャート画面を作成するため、この画面をWi-Fiやインターネットを経由してタブレットやパソコンに標準装備されたWebブラウザから見ることができます。つまり、どこにでもあるiPadが記録計としても利用できる、これまでにない画期的な製品なのです。
 この構成を一目で分かるようなマンガにしようとしたのですが、果してご覧いただいたお客様にご理解いただけるものになっているかどうか心配です。もっと良い表現方法が見付かりましたら修正版を発行して、より分かり易くしたものにしてゆきます。
 次に取りかかったプレゼンマップは、920MHz帯無線を用いた「無線リモートI/O」です。名付けて「くにまる®」なのですが、この表紙にも印象的なキャッチフレーズを目立つように表現したいわけですが、それを何にしようかと頭をひねっています。
 このくにまる®は、「特定小電力無線局」と位置付けられていて、その送信電波のエネルギーは20mWと小さいのですが、障害物が無ければ1kmくらいまで離れていても安定した受信結果が得られます。それに複数の子局を設置してその子局相互間を中継局として使えるマルチホップ機能を備えているため、中間に建造物等があっても、親局、子局双方と通信ができる位置にある別の子局があれば、問題なく安定的に通信が行えます。
 920MHzの電波の波長は約32cmであり、その1/4波長に当たる8cm長のアンテナを磁石等で都合の良い場所に固定し、専用のケーブルでくにまる®のアンテナプラグに接続すれば、それだけで通信ができます。親局、子局とも、計装用信号変換器と変わらない寸法と価格でご提供しますので、今まであまり設備費をかけられなかったユーティリティの集中監視用途などに大きな可能性をもっています。
 このくにまる®プレゼンマップの表紙を飾るキャッチフレーズをどうしようかと考えているのですが、今のところ「無線だから配線工事が不要です。」が良いのではないかなあと思っています。

プレゼンマップ

 次に企画に加えたいのは、くにまる®タブレットレコーダ®とを組合せたアプリケーションの解説マンガ集です(このようなマンガ集を「アプリマップ」と名付けました)。
 エム・システム技研は、「汎用の工業計器メーカー」を目指しており、お客様にとって「便利で使い易く、システム構築に手間のかからない商品を供給すること」にこだわって成長してきました。ここにご紹介するくにまる®のアプリケーションでは、1km四方に分散している多数の計測点の信号を、上記のくにまる®の子局を用いて、無線でタブレットレコーダ®に収集します。その結果、日常使っている記録計と同様なチャート画面がタブレットレコーダ®内に生成されるので、それを手許のタブレット(iPadなど)に表示することによって親しみ易い遠隔監視システムとしてご利用いただけるものと考えました。特別なシステム技術を使用しなくても、すぐに使えるところがポイントです。
 タブレットレコーダ®本体のスロットに大容量のSDカードを挿入しておけば、10年以上の計測データを収録することもできますので、蓄積された計測データをクラウドに上げたり、大形サーバに取り込んだりすれば、ビッグデータの解析にも一役買えるのではないかと考えています。きっとお客様のIoT化に貢献できることでしょう。
 現在、このマンガ集のキャッチフレーズを何にしようかと悩んでいるところです。たとえば、「ワイヤレスで、工場内の全設備の見える化が実現できます!」はどうでしょうか。

 マンガのテーマとして、
 ① 機械の稼働状況の見える化
 ② ユーティリティ環境の見える化
 ③ 構内に分散配置された排水管理用pH計の集中監視
 ④ クレーンに代表される移動体上にある計測点のワイヤレス記録計
 ⑤ 公道を跨いだ工場設備の集中監視
 等々を取り上げたら良いのではないかと考えています。

 また、電動アクチュエータプレゼンマップも企画中です。
 「サーボトップ®」の商標で実績を重ねて参りました電動アクチュエータが、今では大きく発展を遂げて、駆動モータに小形、強力、高分解能をもったステッピングモータを使用し、オールデジタル方式の回路で制御するシリーズとして完成しました。もちろん4〜20mA DC入力で、「滑らかに動いてピタリと止まる」を実現しました。信号伝送などにDeviceNetやCC-Linkなどのオープンネットワークを用いた機種もあります。
 「押す、引く、廻すはお任せください!」をこの電動アクチュエータプレゼンマップのキャッチフレーズとして最初に考えましたが、これでは分解能1/1000が出せるアクチュエータとして物足りないのではないかと思い、空気圧式コントロールバルブに対抗する意味からも、「空気源装置が要らない高性能電動バルブはいかがですか!」が良いのではないかと考え直しています。
 1980年代になって、PAの世界はDCSを中心とした全電子式の計装機器が主流になっていました。しかし操作端としてのコントロールバルブはいつまでたっても空気圧式のままである姿を見て、空気圧式バルブに匹敵するようにスムーズに動く電動アクチュエータを開発することを思い立ち、1985年頃に初代のサーボトップ®を完成させました。
 モータには起動トルクの大きなブラシレスDCモーターを採用し、ポジションフィードバック機構として差動トランスを用いました。もちろんモータの制御はアナログ式のPID制御方式でスムーズな動作を確保しました。それから30年の月日が経ってステッピングモータを用いたデジタル制御方式のサーボトップ®に姿を変えています。
 この素晴らしい1/1000の分解能を誇るサーボトップ®を世界の市場で使っていただくためには、一目でご理解いただけるプレゼンマップの存在は不可欠だと考えて、その製作に取り組んでいます。
 読者の皆様には、ぜひご一覧の上、ご講評をいただきたいと存じます。

[ 解説 ] 
「特定小電力無線局」とは、日本の電波法に規定された「小電力無線局」の一種で、その設置、運用に免許を要しない無線局の一つです。特定小電力無線局は、用途や周波数帯別に幾つかのグループに分けられており、920MHz帯は「テレメータ用、テレコントロール用及びデータ伝送用」の無線局に含まれます。また、所定の技術基準に適合した製品であれば、その使用に申請も必要でなく、かつ国内のどこでも自由に使用することができます。

大阪市立美術館とあべのハルカス

(2016年10月)


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