エムエスツデー 2016年4月号

ごあいさつ

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

 昨年の秋、久し振りに京都の清水寺へ出かけました。日本人ならば誰でもが知っている清水の舞台に立って周りを眺めていると、振袖姿のお嬢さんたちがあちらこちらを散策していて、お寺周辺の景色を背景にしてiPadで自分たちの姿を写しているところを多く見受けました。日本の娘さんが観光目的で、自宅から京都へ振袖姿でやって来るとはとても考えられないので、「不思議な風景だな」と思いました。近くを通りかかった時に気が付いたのは、彼女たちが日本語を喋っていないことでした。一体どうなっているのかと思っていたら、みやげ物屋のご主人が、「近くに何件かの貸衣裳屋があって、海外から来た観光客がそこで着付けをしてもらって来るのだ」と教えてくれました。「なるほどそういうことなのか!」とやっと納得しました。
 昨今の日本では、海外からの観光客の「爆買い」を狙った免税店が繁盛していると聞きます。いつまで続くか分かりませんが、とにかく日本のGDPに貢献してくれている姿がそこにあるようです。

 最近、お隣の中国では、日本が25年ほど前に経験した時のように、高騰した不動産価格が下落に転じて、日本長期信用銀行や北海道拓殖銀行などが倒産するといった「バブル経済の崩壊」に酷似した情況になっていると伝えられています。その影響ではないかと思われますが、世界中の株価が大きく値を下げているという解説はもっともらしく聞こえます。
 日本の経済は、この25年間、プロセス産業では新しい設備の建設が次々と姿を消し、多くの企業が海外へ移転してゆきました。でもプロセスプラントの寿命は60年とも70年ともいわれており、高度成長時代に建設されたプラントのほとんどは今でも健在であり、景気に応じて操業度を調節しながら運転しているように見えます。その証左ではないかと思われますが、エム・システム技研では、かつて20〜25年前に納品したものと全く同じ形式、同じ仕様の変換器のご注文を、最近も次々といただいています。

 エム・システム技研が、創業以来ずっと守ってきたことの一つに「ひとたび出荷を始めた製品は、需要がある限り廃形することなく作り続ける」があります。電子式工業計器メーカーとして「廃形をしない」ということは、操業を継続しておられるお客様に必ず喜んでいただける時が来ると信じて守ってきたことですが、結果がその通りになっているのは嬉しい限りです。でもこの一言は重く、言うのは易いのですが実際にこれを続けるのは容易なことではありません。
 エム・システム技研は創業以来44年になりますが、この間の電子技術の進歩はご存じの通り目覚ましいものがありました。多分これからもこの勢いは続くものと思われます。トランジスタがICになり、抵抗、コンデンサの類はリード部品から表面実装のチップ部品に変わり、それも性能を向上しつつどんどん小さくなったので、コンピュータから家電まで大きく様変わりしました。
 当然、エム・システム技研の製品もこれら部品の変遷に従って、設計変更を繰り返しながら、同じ形式、同じ仕様、同じ形状の製品を作り続け、その上にお客様のご要望に従って次々と新製品を追加発売してきましたので、今では積み上がった標準製品の数は、代表形式だけでも4000機種にも上ります。それでもなお、ネットワーク時代を反映した新製品群を急ピッチで開発していますので、まだまだ機種が増えてゆくことになります。もちろんほとんどの機種は受注生産で、どの機種のどの形式の製品をご用命いただいても短納期(主要な製品は4日以内)で生産から始めて出荷までできているのは、日頃から練りあげられた生産技術の結果だと確信しています。
 この辺りの事情をデータを使いながら解説した「エム ポリシー」と名付けた小冊子を発行しています。ご連絡くださればいつでもお届けいたします。

エム ポリシー カタログ

 時代はPA主体の市場からFA主体の市場へと拡大し、電力計測の業界にも多くの新製品を投入して、それなりの成果を挙げることができました。そして今、BA(ビルオートメーション)の世界にも実績を挙げることができるようになってきたのは、本当に幸運だったと思います。
 エム・システム技研が守ってきた原則に、「どのメーカーの機器とも組合せ使用できる計装用機器を、単品供給するメーカーに特化する」というものがあります。その結果として、エム・システム技研はDCSを除く電子式工業計器のほとんどを取り揃え、出荷できるメーカーとして成長して参りました。お客様の中には、エム・システム技研の製品のことを「汎用工業計器」と呼んでくださる方々がおられますが、このことは創業当初から守って来た方針を如実に表した名称であり、大変光栄なことだと思っています。
 PLCの信号伝送に使われてきたデジタル通信技術に始まった通信プロトコルが、それを提案した各社の活動によって標準化が進み、今ではオープンネットワークとしてModbus、DeviceNet、CC-Link、LONWORKS、PROFIBUS、EtherCAT、MECHATROLINK等々が、目的に応じて共存しています。
リモートI/O  エム・システム技研では、これらオープンネットワークにアナログ信号、パルス信号、ON/OFF信号をまとめて乗せて伝送する「リモートI/O」を発売し、ご好評をいただいております。これはお客様が必要とされるオープンネットワークならどれにでも対応できるリモートI/Oを供給できるメーカーになろうと考えて進めて来た結果であり、遂にロボット装置に使うモーションコントローラの高速通信ネットワークに直接接続する、高速リモートI/Oも主力製品に加わってきました。
 PA、FA、BA、電力のどの業界でも、今では多くのお客様が「廃形をしないエム・システム技研」ということで、その製品を安心してご採用に踏み切ってくださっています。大変ありがたいことです。
 製造業の世界では、フローの時代からストックの時代へと進行しているといわれています。要するに生産設備を新・増設する設備投資主体の経済から、既設の設備の維持管理が主体の経済へと移行しつつあるということのようです。
 元々工業計器は単体では用をなさず、多くの機器が相互に接続され、システムを構成することで初めて機能を発揮するものなので、大手の工業計器メーカーは、DCSを中心に据えた「計装システム一式」で引き受けて活動してきたわけですが、今では過去に納入した計装システムを、新しいテクノロジーを動員してリニューアルをすることで、システムのメンテナンス性能を大きく向上させたり、そのメンテナンス事業そのものを事業主体とする方向に動いてゆくのではないかと観察しています。その時に重要になるのが製品供給の長期にわたる継続性ではないかと思います。

 エム・システム技研は、益々生産技術に磨きをかけて、時が経っても同じ機能、同じ形状の製品を作り続けることでユーザー各位にご安心をお届けして参ります。
 今後ともご声援のほど、よろしくお願い申しあげます。

桜

(2016年4月)


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