エムエスツデー 2012年10月号

ごあいさつ

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

 最近私は世界の四大テニス大会の中でも、最も注目を浴びているのは全英テニス選手権大会ではないかと思います。また、この大会のことを、正式には「The Championships, Wimbledon」 と呼んでいるのは、「ウィンブルドン大会が最高なのだ」と主張しているように感じられます。
 今年も7月の前半に、ウィンブルドンのセンターコートで、フェデラーが優勝する試合を観戦できたのはラッキーでした。ロンドンの街は、オリンピックムードを盛り上げようと、各国の国旗があちこちに掲げられていましたが、道路は交通渋滞だらけで、ちょっと心配になりました。

 帰国して間もなく、テレビ番組で、ご存じの「カンブリア宮殿」を見ることがありました。題して「日本流の顧客主義を見よ! 進化するアスクルの全貌」というものでした。この番組は、後日もう一度しっかり見ようと思い、iPadを用いてYouTubeからカンブリア → アスクル → 検索で、容易に見ることができましたが、便利な世の中になったものです(注:著作権の関係かと思われますが、8月15日の時点では見られなくなっています)。

 さて、この番組では、文房具業界でマーケットシェアNo.1のコクヨ社に対して、アスクル社の母体であるプラス社が、当初売上高を3倍以上引き離されていたにもかかわらず、全ページカラーの見易いカタログ集をユーザーに広く配布し、通信販売に特化することで急成長した事実が紹介され、日本のバブル経済崩壊後の1992年にプラス社の社内事業「アスクル事業推進室」として始めた活動が、1997年に「アスクル社」として分社の形で独立し、その当時の年商は57億円程度であったそうですが、15年後の今日では、2100億円へと急成長し、文房具以外の多くの日用品にまで手を拡げている姿を分かり易く編集して見せてくれました。

 アスクル社を率いる岩田社長は、徹底して「お客様第一」を唱え、次々に具体的な方針を打ち出し、お客様の声を素早く商品に反映させて行ったことが分かります。

 ① 中小企業に「真空マーケット」があることを見抜き、中小企業のお客様が感じている不便と不満を徹底的に解消して行った様子がよく分かりました。
 ② アスクル社にとっては「カタログが生命線である」という認識から、26万点にも及ぶ商品を収録するカタログの全ページを、お客様の目線で直接点検する岩田社長の姿がありました。
 ③ 受注から発送まで20分、「当日受注、当日配達」の仕組みが見事に実現していました。
 ④ お客様の要望を集めるためのみに設けられた情報収集窓口に、実に250人もの社員が配置されていました。
 ⑤ お客様のご要望なら、「ライバルのコクヨ製品でも出荷する」としていました。
 ⑥ ユーザーへの直販部門はなく、「顧客の新規開拓と販売代金の回収は、各地域に密着した元・文房具店のエージェントが行う」というものでした。

 このように「お客様第一」を貫いている姿には、強く共感を覚えました。

 アスクル社よりも20年以上早く創業したエム・システム技研は、この40年間「お客様第一」を貫いて参りました。業界こそ異なりますが、この間、いかなる経済環境下であってもエム・システム技研が着実に成長してこられたのは、この一点に尽きると思います。

 40年前の計装業界では、計装用信号が世界的に4~20mA DCに統一されつつある中、それ以前の工業計器発展途上に大手各社がそれぞれ独自に選択して製品化した1~5mA DC、2~10mA DCあるいは10~50mA DCなどの計装信号を使用した計装機器間を中継する「信号変換器」の出現が求められ始めましたが、既存の大手各社は自社製品の拡販のため、自社の選定した信号に固執するあまり、「信号変換器」の製作には極めて消極的でした。

電波暗室とシールドルーム

 エム・システム技研では、この「既存大手の工業計器メーカーが自社の問題としては取り組まない、しかし多くのユーザーが実際に求めている、信号変換器関連の真空マーケット」があることを発見し、次項以下の施策を積極的に実施しつつ信号変換器の市場を掘り起こし、今日に至っております。

 ① 「信号変換器」を広く全国的にお客様に知っていただくため、カタログ作りに全力で取り組みました。
 ② ご注文をいただいてから部品を揃えて生産開始し、組立完成検査までをコンピュータと液晶パネルを駆使して、標準納期を4日とし、緊急要請には「当日出荷」も可能な生産体制を築きました。
 ③ お客様のご要望事項に積極的に対応するため、「特物無料サービス」を実施するとともに、社内の日常活動として、「特物標準化作業」を目標を定めて展開しております。
 ④ お客様のご要望にお応えするために、CE、UL、RoHS等の国際的な規格などへの適合認定の取得を進めています。そのための装備として社内に建設した電波暗室とシールドルームは、設置以来継続してフル稼働の状態にあります。
 ⑤ エム・システム技研の受注は、全て、オートメーション機器を主に取り扱う専門の販売店を通じて行いますし、代金の回収ももちろんその販売店にお願いしています。

 事業が本当に軌道に乗るかどうかは、「お客様第一」で活動するかどうかで決まるのではないかと強く実感しました。

 現在の経済情勢を見渡しますと、リーマンショックがあり、東日本大震災があり、そしてギリシャショックが進行中です。日本の主力産業といわれてきた、テレビ事業や半導体事業が行き詰まっています。その影響が工業計器業界にも及んでくるのは疑う余地がありません。そこへ追い打ちをかけるように一般消費税の増税が決まりました。

 こうして、先の見えない情況になればなるほど、「お客様第一」を貫いてきた企業が目立ってくるのではないかと思います。

 どうぞ、今後のエム・システム技研の活動にご期待ください。

岸和田だんじり祭=大阪府岸和田市

(2012年9月)


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