エムエスツデー 2012年7月号

計装豆知識

交流電力トランスデューサの動作原理 印刷用PDFはこちら

交流電力トランスデューサの演算手法を波形図を用いて説明します。

電力トランスデューサは、電流と電圧から電力を演算して、その値の信号を出力する変換器です。交流電力は、直流電力のように『電圧の実効値×電流の実効値』といった単純な方法で求めることはできません。私たちは、
交流電力(W) = 電圧(V)× 電流(I)× 力率
という演算式を最初に学習しますが、実際の電力トランスデューサでは、上記の式で演算するといった手法は用いません。実際には、
電圧信号と電流信号を瞬時瞬時に掛け合わせて出力される信号を平滑化する
手法を用います。この信号は、「正(プラス)」と「負(マイナス)」の符号を有していて、正は「受電」、負は「送電」を意味します。

また交流の場合には、負荷によって電圧と電流の間に位相差が生じる場合があります。実際にイメージするために、電圧と電流を掛け算した波形図を以下に示します。

力率1の場合の波形図

力率1は電圧と電流の位相が一致している場合で、純抵抗負荷がこれに相当します。掛け算された出力の波形は、すべて正側にあります。

図1 力率1の場合の波形図

力率0の場合の波形図

力率0 は電圧と電流の位相が90度ずれた場合で、純インダクタンス(コイル)あるいは純キャパシタンス(コンデンサ)負荷がこれに相当します。掛け算された出力の波形は正側が半分、負側が半分で、平滑するとゼロになります。

すなわち、純粋なコイルあるいはコンデンサに交流電流が流れたときの消費電力は、ゼロになります。

図2 力率0の場合の波形図

潮流電力の場合の波形図

電流と電圧の位相が180度ずれている場合は、出力は完全に負になり、受電ではなく送電状態にあることを意味します。受電状態と送電状態が時を隔てて発生する場合、潮の満ち引きに例えて潮流電力と呼びます。

図3 潮流電力の場合の波形図

結線方式別の計算方法

三相4線方式については、N(ニュートラル)からみたそれぞれ3つの電力を合計することで求められます。三相3線方式については、1つの相(S相)からみた他の2つの相(R相、T相)の電力を合計することで求められます。

図4 結線方式別 電力計算法

エム・システム技研の電力計測機器

エム・システム技研の電力トランスデューサは、完全アナログタイプとデジタルタイプに分かれます。

アナログタイプは、アナログ回路で掛け算回路を構成しますが、デジタルタイプは、電圧、電流をそれぞれAD変換したあと、CPUにて掛け算し、平滑しています。

エム・システム技研の電力計測機器 電力トランスデューサ(形式:LTWT) 電力マルチトランスデューサ(形式:LSMT4)

【(株)エム・システム技研 開発部】


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