エムエスツデー 2012年4月号

ごあいさつ

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

 『エムエスツデー』読者の皆様、こんにちは。
 エム・システム技研は、読者の皆様に便利で適切な計装を実現していただくことを目的として、イノベーションを重ねる電子技術や通信技術を導入して開発した新製品群のご紹介を中心に、『エムエスツデー』の編集に当たって参りました。
 時の経つのは早いもので、この5月で創刊20周年を迎えます。これからも変わらぬご愛読のほど、よろしくお願い申しあげます。

『エムエスツデー』創刊号(A4サイズ、左)と タブロイドサイズ1号の2010年1月号(右)

 アイスランド、アイルランド、ギリシャと、ユーロ圏の国々が経済破綻の危機に瀕しています。このあたりの事情を、同志社大学大学院の浜矩子教授が解説書の形で出版されているのを見つけ、新幹線の中で興味深く読みました。経済的な国境が低くなり、グローバル化が進む中で、アメリカはサブプライム問題という形でバブル経済の崩壊に見舞われ、遂にはリーマン・ショックへと拡がりました。日本はすでに20年前にバブル経済の崩壊を経験していたため、大きな被害はなかったようですが、ヨーロッパ各国の金融筋には破綻するところが多く出て、政治問題化しています。その余波が残る中でギリシャショックが発生しました。浜教授はそのあたりの事情を著書「ソブリンリスクの正体」に解説しておられますが、そのサブタイトルはなんと「リーマン・ショックより100倍恐い!ソブリン・ショック」となっています。

 一方、日本はといえば、円の為替レートは独歩高で、デフレ経済が懸念されています。そこへ野田政権は「社会保障と一般消費税の一体改革」を提唱していますが、どうも納得しづらいものがあります。
 国単位で見ますと、日本は世界最大の債権国であり、福島原発事故以来日本中の原子力発電所が停止の方向へ向かっているため、火力発電所をフル運転する必要があり、そのために、値上がりした石油や天然ガスを大量に輸入したことで、貿易収支が多少赤字になったといわれています。しかし、それに比べて海外への貸付や投資から生み出される利息や配当収入がはるかに多く、全体的には黒字大国です。世界の金融筋はそのあたりの事情を知り尽くした上で日本円の買いに入っているため、日本単独でいくら為替介入をしても円高は止められないのではないかと思います。

 野村證券のチーフエコノミストであるリチャード・クー氏によれば、世界各国は「自国をギリシャのようにしたくない症候群」にかかっていて、財政健全化(増税と歳出削減で国の借金を減らすこと)に走っており、「世界的な規模の不景気がやってくる」と、同氏が提唱を始めた"バランスシート不況"の原理で説明した上で、「デフレ時の増税は必ず失敗する(税率を上げることで税収全体が大幅に減少する)」としています。日本には前例がいくつもあり、なるほどごもっともです。
 ではどうするかについては、同氏を含む専門家の人たちによく考えて政策を立案、実行してもらいたいところです。

 円高が止まらないとなると、海外にライバル企業がたくさんある商品群の輸出は難しくなります。エム・システム技研では、競争相手が少ないかまたはまじめに取り組まない商品に絞って輸出努力をしています。国内的には、PA(プロセスオートメーション)の対象になる素材産業は海外に出ていってしまい、新規の投資はほとんど姿を消しています。しかし巨大なGDPを生み続けているプラント設備のリプレース(長年使用してきて性能劣化が認められるようになった計装機器を新品に置き換える作業)の需要が大幅に増加しているので、この需要を漏れなく受注できるように全力を上げています。

2011年中 国際収支状況(速報)の概要(出典:財務省)

 日本の高度に自動化された超精密加工機械をはじめ、ハイテク素材や超小形電子部品などが、円高にもかかわらず輸出競争力が高いのは心強い限りです。新素材を生産する設備用に、高速に計測情報を変換伝送するリモートI/O(アイオー)が大幅に売り上げを伸ばしていることがそのあたりの事情を雄弁に物語っています。

 次に見えてきたのは、電力管理システムの需要です。エム・システム技研は早くから電力計測関連の商品を手がけてきましたが、電力計測に投資しても見返りが少ない環境が続き、目に見える成果は得られませんでした。しかし、昨年からの電力事情により、各企業が運営する事業所の省電力が強く望まれるに至って、"使用電力の見える化"のための需要が顕著になってきました。エム・システム技研では、中小規模の事業所から適用可能な、省電力効果が見える電力監視システムの提供を始め、優れた成果を上げています。
 まず第一に、電力監視システムを適切な価格で実現すること。第二には、事業所の設備に合わせたシステムをパターン化して、Aセット、Bセット、Cセットと一目で分かるシステム構成にすること。第三にクランプ形CTを使うことで、動力線を加工することなく、容易に短時間で稼動までもってゆけるようにすることを目標にしてシステム構成をしたのが、成果に繋がったのではないかと思っています。
 これは、従来の、単に"電力を監視する"から、事業所内の電力が"どの設備でどのようにどれだけ使用されているか"を、時間軸を通して解析し、"省電力政策に反映できるデータを得る方式"になっているのが受け入れられたのではないかと感じています。

 エム・システム技研は、この40年間、計装システムを構築するのに欠かせない電子式工業計器の製造販売事業を展開して参りました。ユーザーの設備へのアプリケーションエンジニアリングの仕事は全てお客様にお願いし、それに必要な変換器を含む各種計装機能を整理し体系化して、ハードエレメントとして供給することに専念して参りました。この事業を可能にしたのは、計装信号が「DC4〜20mAの電流信号」に世界的に標準化されたことでした。
 そして今、計装システムはフィールドバスの時代を経験し、今では用途に応じたオープンネットワークが多数提案され、実用化しています。

 エム・システム技研では、お客様のご要望に従って、今後とも、どの通信システムをも使いこなした計装信号の情報化機器総合メーカーを目指して、企業活動を展開して参ります。
 どのような社会環境になっても、継続して成長を続けるエム・システム技研にどうぞご期待ください。

造幣局(本局) 「桜の通り抜け」

(2012年3月)


ページトップへ戻る