エムエスツデー 2012年1月号

お客様訪問記

データ集中管理およびテレメータシステムによる遠隔監視
川之江工業水利開発(株)様の監視 操作ソフトSFDNの
リプレースに際して導入されたSCADALINXpro

(株)エム・システム技研 システム技術グループ

 今回は、愛媛県四国中央市にある川之江工業水利開発(株)を訪問し、用水施設の監視システムの更新に際して採用されたHMI統合パッケージソフトウェアSCADALINXproについて川之江工業水利開発(株)の星川 和典 様、越智 忠義 様、またシステム構築を担当された(株)エイテックスの鈴木 高志 様にお話を伺いました。

図1 工業用水供給の流れ

民間企業で工業用水施設の運営管理

 御社の概要についてお教えください。

 [星川様]川之江工業水利開発(株)は、紙の生産に不可欠な工業用水を確保するために川之江地区にある製紙会社の共同出資で1960年に設立され、国から工業用水道事業の認可を得て供給を開始しました。民間企業で工業用水の事業を営んでいたのは日本ではかなり珍しかったと思います。その後、自治体が工業用水の水利権を得て事業を行うようになったため、我々は水道事業だけを廃止して施設の運営・管理のみ行うことになりました。

 他の市内の地区では自治体が直接製紙会社へ水を供給しているのですが、この川之江地区の製紙工場だけは、このような経緯から我々の会社の施設を中継して水を給水しています。この施設は各製紙工場の所有施設であり、施設の維持管理費用を出資しています。工業用水の使用料の支払いについては、我々が納めるのではなく各工場が自治体と給水契約を行っています。

工業用水の給水

 工業用水をどのように給水しているのですか。

 [越智様]赤之井川第一取水口から導水管を通じて貯水池に一旦受け入れます。この貯水池は農業用のため池としても利用されている池で我々も共用させていただいています。そこから川之江工業水利開発(株)が管理する調整プールや各工場へ自然流下により工業用水を24時間連続で送水しています。貯水池および調整池の水位の変化に伴い配水圧力が変化するため吐出弁の開閉制御を行い、圧力と流量が一定となるように管理を行っています(図1)。

図2 事務所の監視用パソコン

MsysNetの導入で人員の省力化とセキュリティーの向上を図る

 本システムの導入経緯についてお教えください。

 [星川様]工業用水の管理は、事務所から遠隔地にある貯水池・調整池の横にある管理室で行っていましたが、2000年8月にエム・システム技研製品の監視 操作ソフト(形式:SFDN)MsysNetテレメータを導入し、事務所内のパソコンでデータ集中管理および遠隔地の画像監視をすることで管理室の無人化を図りました。その結果、今まで4名で3交代24時間勤務で行っていた人員の省力化が図れたほか、パソコンによってデータを一元管理することができました。また、重要警報発生時には、休日・祝日・夜間等の事務所に人がいない場合でも、自動警報発報システムを取り入れて設備運営上のセキュリティーを高めることができました。異常があれば携帯電話や一般電話への音声メッセージ通報で社員全員に送信され対応をとります。そして今回、SFDNの監視用パソコンが経年劣化していることもあり、予防保全の目的からWindows7を搭載したパソコンに交換、SFDNSCADALINXpro HMIパッケージ(形式:SSPRO5)に更新しました(図2)。

遠隔地のデータを専用回線で伝送して集中監視を行い、通報システムや大型ディスプレイも導入

 システムの概要や構成についてお教えください。

 [鈴木様]赤之井川取水場、国光製紙、貯水池・調整池と事務所の間はNTT専用回線によりMsysNetテレメータで通信を行っています。テレメータ経由で伝送されてきた信号は通信レベル変換器(形式:LK1)経由でパソコン(SFDN)と接続していました。SCADALINXproMsysNet機器とは、L-Bus(Ethernet)を介して接続します。既設のNestBusをL-Busへ接続するため、通信ユニット(形式:72LB2-NB)を追加しましたが、既存のMsysNet機器はそのまま使用できました。もし、パソコンだけでなく機器まで更新することになると配線をすべて入れ替えることになり、そうなると信号1点1点を確認していく必要があり試験期間も長くなります。今回は配線工事がありませんから短期間での切替えが可能になりました。また、現場からの警報信号はリモート入出力ユニット(形式:SML)から警報出力を行い、小形信号監視ロボットてれまる(形式:TLO)にその接点信号を入力し担当者の携帯電話などへ通報を行っています(図5)。また、カメラの画像は同じくNTT専用回線を介して送信され、映像信号切替器を使用し大型ディスプレイでSCADALINXproの画面と映像を切換えて表示しています。

図5 システム構成図

図5 システム構成図[拡大図

特別セミナーを1日受講

 構築で苦労された点などがありましたらお教えください。

 [鈴木様]SFDNからSCADALINXproへ更新するにあたり、MsysNetシステムの概念を理解する必要がありました。SCADALINXproのセミナーとは別に本システム構成に沿ったセミナーを1日設けていただきました。

 画面の作成に関しては基本的な作画用の部品が揃っていたため容易に作成できました。エンジニアリング作業中の不明点は電話やメールでの問合せによって解決できました。

 [星川様]パソコンのOSは今後主流となるWindows7を希望していました。しかし、打合せ時にSCADALINXproのL-Bus用通信ドライバがWindows7に未対応で開発中であったため、工期に間に合わせるのは難しいとのことでした。

 そこで、先に仮設という形でWindowsXPのパソコンを用意して納入し、L-Bus用通信ドライバがWindows7に対応できたときに、正式にWindows7のパソコンを納入し交換する案を提案していただきました。

 SCADALINXproの納入後いきなり本稼動では心配だったため、約1か月間はSFDNと並列運転を行いながら動作確認しました。また、SCADALINXproの機能アップによるバージョンアップは無償だったので助かりました。

グラフィック画面はもちろんトレンドグラフ画面、警報画面、帳票画面などを作成

 SCADALINXproでは、どのような画面を作成し使用されていますか。

 [鈴木様]工業用水の流量や調整池の水位など状況が一目で分かる全体のグラフィック画面(図3)、そのほかトレンドグラフ画面、警報画面、帳票画面などを作成しました。また、MsysNet機器の稼動状態が分かるシステムモニタ画面が既設のSFDNに標準で用意されていたため、同様な画面を作成しました(図4)。

図3 グラフィック画面

図4 システムモニタ画面

さらなる機能の向上

 本システムを導入されてのご感想をお聞かせください。

 [星川様]SCADALINXproのトレンドグラフ画面には赤いカーソル間の平均値や最大値、最小値が自動的に表示される機能があり大変便利です。4月からの運用でとくにトラブルは発生していません。

*  *  *

 既設のNTT専用回線を使用したカメラの映像をWebカメラなどに更新していただければSCADALINXproの画面に取込むことも可能です。また、サーバ/クライアント方式であるため、別の事務所からのインターネット経由での監視も可能になります。

 本日はお忙しい中をありがとうございました。

MsysNetスーパーテレメータ

【四国中央市のご紹介】
四国中央市は愛媛県の東端部に位置し、東は香川県に面し、南東は徳島県、さらに南は四国山地を境に高知県と4県が接する地域となります。2004年4月1日に川之江市・伊予三島市・宇摩郡土居町・宇摩郡新宮村が合併し四国中央市になりました。高速道路が交差する交通の要衝であり、川之江ジャンクションと川之江東ジャンクションを持ち、四国の「エックスハイウェイ」が交差する中心地となっています。南には急峻な法皇山脈から四国山地へと続く山間部を擁し、この豊かな自然により水という恵みを与えられ清流金生川と、山間部に育成するこうぞやみつまたを原料に昔から良質の紙を生産する町として栄えました。現在は製紙、紙加工業において日本屈指の生産量を誇り、大中数多くの製紙メーカーが本社や本部を置いています。地場産業の「紙」への感謝と「ふれあい」をテーマにした「四国中央紙まつり」が毎年開催され、また、映画「書道ガールズ!!わたしたちの甲子園」の舞台で書道パフォーマンスで知られる県立三島高校書道部は四国中央市にあります。

愛媛県四国中央市

本稿についての照会先:
(株)エム・システム技研 カスタマセンター
システム技術グループ
TEL:06-6659-8200

SCADALINXproMsysNetてれまるは(株)エム・システム技研の登録商標です。


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