エムエスツデー 2011年7月号

ごあいさつ

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

 去る3月11日に未曾有の「東日本大震災」が発生し、私たち企業も、その復旧、復興に貢献しなければならないと痛感しています。マグニチュードが9.0の地震自体も恐ろしいものですが、同時に発生した津波のエネルギーの大きさには想像を絶するものがあり、空前の大災害となりました。日常あまり気にしていない電気、水道、ガスなどのライフラインがどれほどありがたい存在であるかということを、この震災が教えているように感じます。それに加えて福島原発の事故が重なり、地元の人たちの苦況が伝わってきます。

 今、私たち工業計測器メーカーは、インターネットを通じた放射線量の遠隔監視とか、消費電力の集中監視制御を、容易かつ安価に提供できるようにせねばならないと思います。
 エム・システム技研では、遠隔監視機器や電力の集中監視機器の生産を早くから手掛けてきましたので、災害復興のお役に立てるのではないかと準備を急いでおります。

大阪城天守閣と極楽橋 = 大阪市中央区

 改めて、日本を取り巻く経済環境を考えたとき、物作り大国の日本のメーカーが、主力事業を海外に移して、国際競争力の確保に走った結果、産業の空洞化が進んでデフレ低成長を続けているように見えます。
 しかし日本の高度成長を牽引してきた電機産業、機械産業は健在で、蓄積された高度な技術と積み上げてきた生産技術で、続々と新興国に建設される加工組立産業に対し、高度にIT化された生産設備を輸出するという形で大活躍中であることは間違いありません。
 日本国内では、この数年、大形の設備投資を伴ったプラントの新設工事がめっきりと減ったことは確かで、大手のプラントゼネコンは、中国、インド、中東方面に続々と乗り出しています。
 日本は、国民総生産において、間もなく中国に世界第2位の座を明け渡すと騒がれていますが、それは、低コストの膨大な人口をかかえた中国の人たちが、豊かさを求めて猛然と働き出したからであり、科学技術の進んだ日本の大企業は、積み上げてきた基幹技術を結集させて、各種の超大形ソリューションビジネス(たとえば、大出力発電システム、超高圧送電システム、地域丸ごとスマートエネルギータウン、高速鉄道システム等々)のリーダーシップを確保するために、すでに大きく動き出していると伝えられているのは心強いことです。近未来の発展する日本の姿が見えてくるのも、そう遠くはないものと思います。

 一方、工業計器業界は、新設大形プラントの計画がほとんどないため、工業計器がプラント計装の要素部材であることから、日本国内では需要縮小に追い込まれ、大手工業計器メーカー各社は、規模縮小やこの分野からの撤退を迫られているもようです。

 このような環境の中で、エム・システム技研は逆に成長の機会をつかみつつあります。

 まず第一に挙げられるのは、大手重電機メーカーが、大形ソリューションビジネスを事業の中心に据えようとしていることです。大形ソリューションビジネスの大きな特徴の一つは、そのソリューションに使われる機器の種類が膨大なものになり、担当する企業の規模がいかに大きくても、多くの機器を専門メーカーの中から選抜して採用するということになります。計装に必要な受信計器群を漏れなく取り揃え、かつ、短納期で供給することを会社の基本方針にしているエム・システム技研の製品は、大形ソリューションビジネスにご採用いただく条件を十分に満たしているものと考えています。

 ソリューションビジネスの特徴を表すもう一つの重要なキーワードは、「オープンネットワーク」です。なぜなら、多くのメーカーの最適な機器群をネットワークで結合して統合システムにまとめ上げるには、採用される機器群が、共通のオープンネットワークを用いて相互にコミュニケーションができる機能を具備している必要があるからです。
 エム・システム技研が提供する受信計器群は、全てオープンネットワーク対応で、マルチ入出力のリモートI/Oを始め、シングルループコントローラ電力マルチメータ電動アクチュエータに及ぶまで、いずれもModbus、CC-Link、DeviceNet、LONWORKS などでつながる製品にまとめ上げてありますので、ご採用いただくための製品順位の最前列にあるのではないかと考えております。

エム・システム技研のオープンネットワーク対応製品例

 次に大きな需要として、最近クローズアップされてきた耐久消費材を生産するために必要な装置の市場が、大きく成長を続けていることです。
 たとえば、液晶パネルを生産するための真空蒸着装置、それに関連するエッチング装置、純水装置などの生産が拡大しており、そこには超高速オープンネットワークを用いたリモートI/Oが数多く採用されています。
 最近立ち上がってきたメガソーラーと呼ばれる大規模な発電設備にも、電力計測機器、アイソレータ、避雷器などのご採用が目立ってきています。

 工業計器は、半導体の高機能化、高性能化と低価格化のおかげで、小さくかつ比較的安価に生産できるようになったため、工業プラントから見れば極めて小規模な多くの生産設備や生産装置類にも、エム・システム技研の主要製品である変換器、リモートI/O、電力マルチメータ、チャートレス記録計等々が採用されるようになりました。これらの製品は、独特の技術で固められた各種の装置にひとたびご採用が決まると、長期にわたって受注が継続します。システム受注を対象とせず、受信計器群を単体供給するエム・システム技研にとって、非常にありがたい市場に成長しています。

 もう一つ大きなチャンスは、現在稼動中の既設の計装システムが、次々とリプレース時期を迎えていることです。バブル経済が頂点に達した20年前の各種の設備が、今、計装機器のリプレース時期を迎えています。これらの計装システムを納入した当時の大手工業計器メーカーは、今や工業計器の生産を縮小したりこの分野から撤退したりしていますので、用途は同じでも、デザイン、機能を充実した新製品を次々と発売し、機種の充実を進めているエム・システム技研への期待が自然に高まってきています。

 このような形で迎えることになった2011年は、エム・システム技研にとって再び成長軌道に乗る年になるものと確信しております。
 これからもこの『エムエスツデー』には、時々刻々と移り変わる計装分野の諸々の事情を、随時お伝えしてゆきたいと考えておりますので、引き続きご愛読のほど、よろしくお願い申しあげます。

おふさ観音の風鈴まつり = 奈良県橿原市小房町

(2011年6月)


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