エムエスツデー 2011年1月号

ごあいさつ

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

 明けましておめでとうございます。

 エム・システム技研にとって、旧年の2010年は画期的な記念すべき年になりました。それは、シングルループコントローラSC100およびSC200を完成し、製品ラインナップに加えたことによります。

 エム・システム技研が完成したSC100200は、計装システム用にインテリジェント化され、前面に高精彩の液晶タッチパネルを備えたPID調節器であって、今まで数多くの計装システムに採用されてきた高機能形プロセス用PID調節器の後継機種をねらって開発・設計したものです。詳しい説明はカタログその他の資料に譲りますが、私が見ても大変良い出来栄えだと思います。
 実のところ、SC100200については大手計装メーカーの一社から、前面デザインを含む多くのアドバイスをいただき、その上完成後は自社製品の後継機として標準採用のご予定との意向が示されたため、エム・システム技研は全力を挙げて完成させました。

シングルループコントローラSC100、SC200

 1972年、私が北辰電機を脱サラして変換器メーカーになろうとし、エム・システム技研を始めた頃には思いも及ばなかったことが、今次々と実現しようとしています。 当時の日本は、重化学工業が高度成長を牽引する真っ只中にあり、巨大プラントの建設が日本各地のコンビナートで進められ、大手工業計器メーカーは、そのプラントの計装システムをソリューションを含めた一括受注の形で獲得するため、DCSを中心に置いて、プロセス制御用PID調節器を始め、チャート式記録計のほか、各種設定器類を取り揃え、現場計器として差圧伝送器など2線式センサ類もラインナップに加えて、総合計装機器メーカーとして受注活動を展開していました。
 横河電機、山武ハネウエル、北辰電機を始め、富士電機、東芝、日立といった従業員数千人以上の大会社が覇を競っていたわけです。

石油化学プラントのイラスト

 時が流れてバブル経済は崩壊し、設備投資は低迷して工業計器業界は不況業種に指定される有様で、市場規模が成長しないまま20年が経過しました。その間エム・システム技研は、変換器、避雷器を始め、電力トランスデューサ、チャートレス記録計、表示計器などを製品ラインナップに加えて、「変換器の総合メーカー」から「計装機器の総合メーカー」へと成長を遂げようとしていました。

 中でも「リモートI/O」と呼んでおります8~16点の計測アナログ信号の入出力を、Modbus、CC-Link、DeviceNet、PROFIBUSなどのオープンネットワークに直接接続する機器の開発に力を入れて、ほぼ全ての通信規格に対応できるまでになりました。

 エム・システム技研が、計装システム一式を構成する各要素機器を取り揃えた総合計装機器メーカーといえるには、プロセス計装用高機能PID調節器が必要だと思います。一方、現実には、業界内の大手メーカーはいずれも、会社の顔になる主力製品としてこの調節器を位置付けていますので、エム・システム技研から見て買い手が限られてしまいます。それにこの調節器は、単体販売しても、購入したユーザーが使いこなすにはそれなりの高いソリューション技術が必要になることも、販売促進のブレーキになるのではないかと考えていました。

 エム・システム技研は、会社の方針として「ソリューションビジネスは行わない」を掲げてきましたし、今後も変えることはありません。そのため、工場の生産設備の計装システム一式をターンキーベース(一括受注契約方式)で受注することは全く考えていません。したがってコントロールバルブのサイジングや組合せによって性能が左右されるPID調節器は、基本的には商品化はしないつもりでした。しかし時代が変わって、大手の工業計器メーカーの中にこれらの主力商品までをも生産中止を打ち出す会社が現れ、エム・システム技研に開発要求を出していただけることになりました。前面のデザインや操作ボタンの形状、機能、位置に関してまでもご意見をいただき、かつ詳細にわたる度重なる打合せの末、隅々まで仕様が固まり完成することができました。もちろん同社には全面的にご採用いただけることになっています。

初期の調節計

 エム・システム技研は、これで計装システムを構成する工業計器のうちの、DCSを除く受信計器群はほとんど全て取り揃えることができました。
 失われた10年が20年になろうとしている今日、これからは20年前のバブル景気が最高調に達していた頃に大量に建設されたプロセスプラントの計装機器のリプレース時期が到来してきます。その折りも折、エム・システム技研が高度な計装設備のリプレースに必要な機器を全て取り揃えてご提供できる環境を整えることができましたことは、大変な僥倖に恵まれたことだったと思っております。

 幸運だったのはこれだけではありません。前面のフルカラーの高精彩液晶タッチパネルは、日本の得意業のゲーム機用に開発されたものであり、高品質であるにもかかわらず、低価格で容易に入手可能になっていたことと、そのサイズが従来形の調節器前面のサイズとぴったりと一致したことが挙げられます。
  その上、回路構成が画面コントロール用CPU、入出力コントロール用CPU、PIDを含む各種演算用CPU、上位通信用CPUなどのマルチCPU構成になっているため、開発作業が組織的に行われたことも開発スピードを上げることと、高信頼性の確保につながったと思います。

 「継続は力なり」と申しますが、変換器ビジネスを始めて39年、休むことなく、ひたすら電子式工業計器の開発と生産を続けて参りました。そして今年はその成果が実績となる年になると思うと感慨深いものがあります。どうぞ皆様、これからも変わることなく前進するエム・システム技研にご期待ください。

獅子舞のイラスト

(2010年12月)


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